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円安加速、コスト増に懸念=業績上振れも、変動抑制訴え―民間企業

円安 イメージ
(i-stock/Ca-ssis)

 外国為替市場で円安が再加速している。輸出企業を中心に業績押し上げ効果を生む一方、原材料を輸入に頼るケースも多く、調達コスト増への警戒感が強まっている。広範な業種の企業から「円安は行き過ぎだ」などとして、急激な変動抑制を政府に求める声が相次いだ。

 「ちょっとタイミングを逸した感がある。今となって(1ドル=)150円でせめぎ合うのは、トゥー・レート(遅過ぎ)だ」。日本商工会議所の小林健会頭は4日の記者会見で、政府・日銀はもっと早く為替介入を行うべきだったとの見解を示した。ホンダの三部敏宏社長も同日、取材に対して「(政府に)できるだけ安定した為替の維持をお願いしたい」と話した。

 足元の為替相場は、海外展開する企業の想定レートを円安方向に大きく上回って推移している。今年度の想定を1ドル=125円と置くトヨタ自動車では、1円円安が進めば営業利益が約450億円増え、大幅な業績上振れが見込める状況だ。

 ただ、円安では同時に原材料費も上昇。「以前ほど業績にプラスにならない」(自動車大手)という企業も少なくない。1ドル=150円水準には「さすがに行き過ぎている」(三木谷浩史楽天グループ会長兼社長)との指摘も上がる。

 東芝は、急激に円安が進むと、部品や素材などの仕入れ元からの値上げ要請が想定されるとし、「タイムリーに製品価格に転嫁できるよう検討している」という。

 各社は、国際的な生産拠点の分散や為替予約などで相場変動の影響緩和を図っているが、「乱高下が続くとリスクヘッジも難しくなる」(電機大手)と相場安定を望む企業が大半だ。

 物価上昇に拍車が掛かる不安も大きい。小売業界からは「消費低迷につながる。為替介入などを政府に強く望む」(衣料品大手)と訴える声が出ている。円安効果でインバウンド(訪日客)消費拡大の恩恵を受ける大手百貨店も、「地方では生活費に直接影響が出てくる」と懸念する。