春を迎えた紀伊半島沿岸の熊野灘で、天然ブリの水揚げが活発化している。全国各地の魚市場に入荷しており、寒ブリに匹敵する脂乗りの良さなどが注目され、量販店などが特売品として売り込んでいる。
ブリと言えば真冬の日本海で取れる寒ブリが有名だが、熊野灘では毎年、桜の開花時期になると定置網でブリが多く漁獲されている。地元では「桜ブリ」などとも呼ばれ、古くから親しまれている。
主産地の三重県では今年、3月下旬から本格的な水揚げがスタート。三重県漁業協同組合連合会によると、3月20日以降の県内主要港の水揚げは25日現在、8キロ前後の大型魚を中心に6万匹以上。豊漁だった前年をやや上回っている。
この時期の三重産ブリは、品質の良さも特徴で「脂が程よく乗って食べやすい」と東京都杉並区の鮮魚専門店。ブリを「市の魚」に制定している三重県尾鷲市の調査では、脂肪含有率が冬の魚に劣らない15%以上で、中にはクロマグロのトロに並ぶ30%近い上質魚もあったという。
東京・豊洲市場(江東区)の3月下旬の卸値は1キロ当たり600円前後でほぼ前年並み。首都圏の百貨店では、3~4人分の刺し身用のさく1個が1000円前後。1月半ばごろに流通していた日本海産寒ブリのほぼ半値以下で売られている。
なお、尾鷲市では、市のホームページで漁獲現場の動画のほか、レシピや郷土料理なども紹介して春のブリをアピールしている。