農林水産省は9日、政府が買い付けて国内の製粉業者に売り渡す輸入小麦の価格を4月1日から17.3%引き上げると発表した。1トン当たり7万2530円で、現在の算定方式となった2007年以降では、08年10月の7万6030円に次ぐ過去2番目の高値水準。ただ、深刻化するウクライナ情勢や対ロシア制裁の影響は一部しか織り込んでおらず、次の価格改定が行われる10月以降はさらに高騰する可能性が強まっている。
売り渡し価格の大幅上昇は、干ばつによる北米産の不作などを背景とした穀物相場の高止まりが主因。既に値上げが相次いでいるパンや麺類の小売価格を、夏ごろから一段と押し上げる要因となる。
半年ごとに見直される輸入小麦価格の引き上げは3半期連続。農水省は今回の改定により、食パンが1斤当たり2.6円(1.5%)、家庭用薄力粉は1キロ当たり12.1円(4.4%)それぞれ値上がりすると試算している。
一方、ロシアによるウクライナ侵攻は小麦価格にも深刻な影響を及ぼしている。両国は合わせて世界の小麦輸出量の3割弱を占めており、戦闘の激化や制裁の強化で世界的に需給が逼迫(ひっぱく)しかねない。国際商品市場では小麦の先物価格が急騰し、8日には一時最高値を更新した。
こうした足元の価格上昇は10月の輸入小麦価格に反映される見通しで、今後も緊迫した情勢が続けば大幅な上昇は避けられない。農水省は「(輸入小麦を)値決めする際に先物価格高騰の影響を受ける」とみており、「小麦を輸入している米国やオーストラリア政府への働き掛けと情報収集を徹底し、安定供給に努める」としている。
日本は小麦の約9割を輸入に頼っており、政府が外国産小麦を一元的に買い付けて製粉会社などに売却している。売り渡し価格の見直しは毎年4月と10月。農水省によると、製粉会社が売り渡し価格を小麦粉価格に反映させるのは約3カ月後で、パンなどの製品にはその後、転嫁が進むという。