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ネットスーパーさらなる飛躍の課題が「リアルに劣る情報量」の打開にある理由

店舗出荷型のネットスーパーは、店舗と在庫を共有しています。とはいえ、店内商品の全てをオンラインに載せられるわけではなく、店舗なら確認できる商品の諸情報(成分表示や消費期限など)もアップし切れてはいません。店舗と比べて情報量に劣っていること、これはオンラインにとって由々しき問題かもしれません。どんな情報が足りていないか、不足していることでオンラインの販売にどのような不都合が生じるかを考えます。

リアル店舗の買い物で、除菌シートを探しに乳酸菌の売場に行くことはない(画像はイメージ)

お客は「商品名」で探しているわけではない?

 ネットスーパーであった、かつての体験です。除菌シートと検索したところ、候補として乳酸菌のヨーグルトも複数、ピックアップされました。「菌」の字を拾ってきたのは分かるけど、並べて表示されても困惑です。

 こんなことが起きないよう、オンラインでは各商品に情報タグを付けるそうです。カテゴリーや関連ワードを、まるでインスタの投稿画像に貼られるハッシュタグのごとく貼り付けていき、「菌」の一字が共通するだけで利用者が困惑するような商品が選び出されることのないよう、検索の精度を高めます。

 対照的な検索体験をアマゾンでしたことがあります。環境配慮型の食器用洗剤に、カエルのマークをデザインした「フロッシュ」というブランドがあります。それを探して、私は「ケロッシュ」と打ち込んで検索しました。日本人ならあり得る間違いではないでしょうか・・・・。

 言語データは厳密ですから、「フ」と「ケ」の違いは大違いのはずですが、トップヒットから「フロッシュ」の各商品が並びました。情報タグによるものなのか何なのか正確には分かりませんが、検索者が「ケロッシュ」と間違えることを想定して準備がされていたわけです。

 リアル店舗で探す場合なら、除菌シートを求めて乳酸菌ヨーグルトの売場を探すことなどありえませんし、商品名を覚えていようといまいと、パッケージデザインのだいたいの記憶で棚から目当ての商品を探せます。人の記憶は曖昧ですし、検索ワードのチョイスもさまざまです。オンライン販売の商品情報には、検索一つを取ってもさまざまな情報を付与する必要があるということです。

リアルは、実物と陳列で多くの情報を提供

店舗は、商品の実物と陳列によって買い物に必要な多くの情報を提供している(画像はイメージ)

 オンラインで商品を販売する際には、前述のタグ情報以外にも多くのデータを掲載する必要があります。商品画像やセールスポイントはもちろん、食品ですから成分表示も欲しいところです。しかしネットスーパーでこれをしようとする場合、入力しなければならないアイテム数とその情報量は膨大になります。これらのデータをAIが自動作成してくれるサービスが存在しますが、作業の大変さを思えばニーズもあるだろうとうなずけます。

 現状、ネットスーパーの個別商品のページは成分表示が省かれていたり、チェックがままならないのか商品画像が荒かったりと、物足りないことがしばしばです。また、どれだけ頑張っても、消費期限まで確認するのは難しいでしょうし、生鮮と総菜はイメージ画像にしかなりません。

 一方、リアルの売場に商品を陳列する際、店側が付与する情報は商品名と価格くらいです。POPだって全品に付けるわけではありません。それで済むのは、陳列する場と商品パッケージが、提供すべき情報の大部分を補ってくれるからです。成分表示はパッケージの記載情報が提供してくれますし、生鮮・総菜は見た目に加え、重量感や質感、香りなどのシズル感で顧客に訴えかけてくれます。

 また、商品パッケージにはカテゴリーごとに共通するドレスコードのようなものがあります。ヨーグルト、スナック菓子、味噌でもパスタでも、同一カテゴリーのパッケージは自然と形状が似てきます。ですからカテゴリーのサインを見ていなくても、棚を眺めているうちに求めているカテゴリーにたどり着けます。

 リアルで提供できる情報量には「場の限界」が伴うものですが、実物と場が提供している情報量は、実は豊富と言えます。場の制約がないはずのオンラインの方が、リアルの情報量に追いつくことを課題としています。このギャップを埋めていけば、オンラインの利便性は一段と高まるはずです。