ウォルマートなど米国小売「DXの本質」とそれを正しく理解する方法 マック大島氏が解説!

パナソニック コネクト:大島誠
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2023年1月15日から3日間、全米小売業協会(NRF)の年次総会、Retail’s Big Show (以下、NRF2023)が米ニューヨーク市で開催された。本稿では、NRF2023を訪れた日本からの視察者の様子やウォルマート(Walmart)の事例などから、米国小売におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の本質を知るために必要な「定点観測」の重要性について考えてみたい。

バズワード化しすぎた「DX」

 コロナ禍のNRF2021年は完全オンライン、同2022はオンサイトで開催されたものの、オミクロン株の猛威により、直前で参加者や出展企業が大量キャンセルしたことから閑散としていた。今回のNRF2023は各国の規制などがほぼ解除されたこと、さらには3年間視察ができなかったことなどから、日本からもパンデミック直前の20年に匹敵する規模で参加者が訪れた。

 さて、NRF2023の展示会場を歩き回ると、これまでとは異なる違和感を覚えた。NRF2020までの数年間は、ロボットやドローンなど最新技術の「はやりもの」が多く展示されていたが、今回はそれが激減していた。その一方、データを活用した「最適化」が再注目されている。単にデータをAIで分析・活用するだけではなく、それらを「人」に生かしているように感じられた。とくに、顧客だけでなく「従業員」にフォーカスした事例が多かったのではないだろうか。

 また、NRF2023の展示企業やセッションタイトルを調べると、「DX」という言葉はあまり使用されていないことがわかる。TVニュースや国会答弁でも「DX」が日常茶飯事で使用されている日本とは対照的だ。デジタルはあくまで道具であり、その目的は変革だが、日本ではその本質への理解が中途半端で、DXという言葉だけが独り歩きしているように思える。

 22年夏以降の規制緩和に合わせて、今回のNRF2023も含め、日本から多くの小売業・流通業関係者が米国小売業の視察を再開している。筆者が帯同した視察で顕著に聞かれる感想としては、「えっ、これがDXなの? 」「スマホを利用している人をあまり見かけない」「欠品だらけ!」など、参加者が思い描いていた「アメリカ小売業のDXの活用の姿」とは違っているとの意見が多く聞かれた。3年以上ぶりの参加者からは「何が変わったのかわからない」という発言もある一方、今回初めて店舗視察をした方からは「なんだ、そんなにDXは進んでいないのか」という声も聞かれた。

 もちろん、ロボットやドローンなどは導入店舗が限られている、あるいはバックヤードや倉庫など、一般顧客の見えない場所で稼動しているため、店舗を訪れても見つけられないケースが大半である。しかし、前述のような感想が出る大きな要因は、コロナ禍の3年間の過程を継続して見てきたわけではないからだ。「なんのためにDXに取り組むのか」という本質への理解が不足しているほか、いったん導入はたものの中止したものもあるため、傍目には進化していないように見えてしまうのである。

ウォルマート・スーパーセンター1号店にある、使用中止されたピックアップタワー
ウォルマート・スーパーセンター1号店にある、使用中止されたピックアップタワー。使用中止後、撤去までの間、有料会員(Walmart +)の宣伝広告塔になっていた。2021年に撤去済み
棚監視ロボット「ボサノバ」の稼働中の様子
棚監視ロボット「ボサノバ」の稼働中の様子

 たとえばウォルマート(Walmart)は、ネット注文した商品を受け取ることができる「ピックアップタワー」も棚監視ロボット「ボサノバ」も20年に中止している。今回初めて渡米した人は、それらを見ることも、体感することもできなかった。中止した詳しい理由をウォルマートが発表することもなければ、基本的にメディアも報じないため、知る由がない。

1回の視察では「過程」がわからない

 コロナ禍でしばらくは難しかったかもしれないが、やはりこういった背景を窺い知るには、1回の視察ではなく、状況を定点観測することが重要だ。現在ウォルマートは、商品画像を

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