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サプライチェーン改革まったなし、DXでビジネス構造を変える

2022年は、物価高や円安、エネルギー費の急騰など、国内流通業にとって逆風が吹く一年となった。その中、経済産業省では国内流通企業が抱える課題を把握し、施策に生かすため、「物価高における流通業のあり方検討会」を設置した。経済産業省は国内流通業をどのように捉えているか、商務・サービスグループ消費・流通政策課長の中野剛志氏に話を聞いた。

物流は協調領域
各社をつなぐ糊になる

――コロナ禍になる以前から現在までの日本の流通業における課題をどう捉えていますか。

中野剛志(なかの・たけし)
1971年生まれ、神奈川県出身。1996年東京大学教養学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学。01年に同大学院より優等修士号、05年に博士号を取得。12年春まで京都大学大学院工学研究科に出向し、准教授を務めた。経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ 消費・流通政策課長、同局大規模小売店舗立地法相談室長、同局物流企画室長

中野:日本の小売業においては、利益率・生産性が低いことが積年の課題といわれてきました。また、構造的な問題である人手不足も大きな課題です。

 日本の小売業は寡占化が進んでいないから生産性が低いという意見がありますが、一概にそうはいえないと思います。多種多様な小売事業者が存在するのは、日本国民の消費スタイルに合わせて商売をしてきた結果です。標準化し効率化すればコストは削減できますが、それでは生活におもしろみがなくなります。日本の小売文化の多様性はむしろ好ましいものと考えたほうがいいでしょう。

 それならば、日本の小売文化のよさを生かしつつ、利益率を向上し、人手不足を緩和する方法を求めねばなりません。その解がデジタル化です。

 多様性を生かす一方で、企業の枠組みを超えて協調したほうがいい領域もあります。物流領域がそうです。サプライチェーンの整流化は以前からの重要な課題であり、物価高によってその重要性はさらに増しています。

 国は、コスト上昇分の価格転嫁を発注側に促す政策です。小売事業者は価格転嫁された分を消費者に転嫁したいけれど、実質賃金が下がっている今、消費者に転嫁すれば買い控えを起こすだけということは自明です。ですから、

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