セブン‐イレブンの真のデータ民主化生成AI基盤「AIライブラリー」とは?
ハルシネーションを気にしない
セブン‐イレブンの生成AI活用は、2022年度から始まった。この時期、生成AIのハルシネーション(AIが誤った情報を生成すること)に懸念を示し、慎重な姿勢をとる企業も多いなか、同社は「ハルシネーションを気にせず、使いこなすべし」の方針をとった。もちろん、データ保護のためのセキュアな環境構築には万全を期したという。
23年11月には、役職者やシステム本部が活用を開始。社内での広がりを見据えて試行錯誤し、使いやすいユーザーインターフェースや設定にこだわったという。24年9月には、他本部でも利用が広がった。
最大の価値はプロンプト蓄積
西村氏によれば、セブン‐イレブンが生成AIに寄せる期待は明確だ。
1つは業務プロセスの劇的な効率化。もう1つはコンビニ事業の売上向上に直結する戦略的活用である。この2つを高いレベルで実現するため、同社は独自の生成AI基盤「セブン‐イレブン AIライブラリー」を構築した。
「セブン‐イレブン AIライブラリー」は、さまざまなデータと生成AIを結び付ける統合プラットフォームだ。「セブンセントラル」を含む基幹システムや外部データソースを安全に活用できるよう、厳格なセキュリティ対策のもとで運用されている。
最大の価値は「プロンプトの蓄積・活用」にある。西村氏は「プロンプトは非常に重要であり、これが知財になる」と強調し、業務に最適化されたプロンプトを組織的に管理・使い回すことで、全社的な効果を高めている。
技術面では、GoogleCloudの生成AIモデル「Gemini」を中核としながらも、複数のAIを目的に応じて使い分けられる柔軟な設計を採用している。一般ユーザーが都度最適なAIを選ぶのは難しい。同じ質問に対する各AIの回答を横並びで表示・比較できる機能により、各AIの得意・不得意を見極めながら最適な選択が可能になった。
マルチモーダル機能により画像認識や音声分析にも対応しているほか、SNS上の声や地理情報システム(GIS)データなど多様な情報源を統合的に分析できる機能を備えている。これにより、販売実績とSNS評価の相関分析や地域特性に応じた商品展開の検証など、これまで時間がかかっていた複合的な分析が効率的に実行可能になった。










