コロナ禍で絶好調の生協宅配 DXの推進でさらに成長する理由とは?
ネット注文比率はいまだ2割以下
では、デジタルの力によって、生協宅配はどのような革新を遂げていくのだろうか。
変化が予想される領域としてまず、物流網が挙げられる。たとえば、コープさっぽろ(北海道)は18年8月、アマゾン(Amazon.com)に負けない物流網の構築を掲げて、基幹物流センターにノルウェー発の自動倉庫型ピッキングシステム「オートストア(AutoStore)」を導入した。これにより集荷・仕分け作業の処理能力を飛躍的に高めて、大型食品スーパーと大型ドラッグストアの品揃えを網羅する2万品目以上の商品を配送可能にして利用者を大きく増やしている。そしてこの強固な物流網を生かし、19年12月に包括的業務提携契約を締結したサツドラホールディングス(北海道)の物流業務を受託するなど、生協の常識にとらわれず事業を広げている。
生協が長年の課題としている若年層の開拓も、改革が予想される領域の1つだ。本特集で地域生協向けに実施したアンケート調査の結果では、多くの生協がコロナ禍で新規利用者を獲得できてはいるものの中高年世代が中心で、組合員の高齢化は依然として改善されていないことがわかった。
さらに調査結果では、生協宅配は従来の専用用紙による注文が主で、Webサイトやスマホアプリ経由のネット注文比率はいまだ2割以下であることがわかった。これは、生協側のデジタル対応、さらには組合員が生協宅配を利用するうえでのデジタル移行が進んでいないということであり、これらはネットでの買物が当たり前になっている若年層の利用を獲得するうえでの大きな障壁になっていると考えられる。
こうした課題を解消しようと、コープデリ連合会(埼玉県)やパルシステム連合会(東京都)などの一部の生協では、以前は事前訪問が必要だった組合員への加入手続きをネットで完了できる仕組みを構築しているほか、宅配注文アプリの機能向上やSNSの活用などによってネット経由の利用を促す動きも広がっている。このようなデジタル施策がさらに進めば、生協宅配は若年層にとってより利用しやすく、身近なサービスになっていきそうだ。