コロナ禍で絶好調の生協宅配 DXの推進でさらに成長する理由とは?
全国のDXを進めるプロジェクトが本格始動
こうした環境下で今、生協が一気に加速させているのがデジタルの活用だ。生協宅配はこれまでデジタル化があまり進んでいないといわれてきた。しかし、コロナ禍で旧態依然とした組織・事業からの脱却を図る動きを見せている。
その代表的な施策が20年3月に日本生協連の主導により始動した「DX-CO・OPプロジェクト(以下、DXコーププロジェクト」だ。コープ東北サンネット事業連合(宮城県)、コープデリ連合会(埼玉県)、東海コープ事業連合(愛知県)との4者共同で、全国の地域生協のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進することを目的としたプロジェクトで、デジタルを活用した実証実験を重ねて、成功例を生協全体に広げていく試みを開始している。
すでに実験を終えて水平展開を始めた事例もある。21年5月にみやぎ生協(宮城県)で運用開始したWebサービス「コープシェフ(CO・OP chef)」は、好みのレシピを選択すると、必要な食材が自動でカートに入りまとめて宅配で注文できるという仕組みで、献立を考える負担や注文作業時間の軽減につながると好評だった。そこで5月末にはコープ東北サンネット事業連合に加盟する東北6県の地域生協へとサービスエリアを拡大し、さらに現在はそのほかの事業連合への導入に向けても検討を進めている。
このように同プロジェクトがスピーディーに進んでいる大きな理由に、生協の従来のシステム開発手法を抜本的に見直していることが挙げられる。スタートアップ企業とも連携しながら、短期間でまずは成果物を一部エリアに導入し、試行錯誤を重ねながらシステムを進化させていく「アジャイル型」の開発手法に舵を切っている。
同プロジェクトのプロジェクトリーダーを務めるコープ東北サンネット事業連合常務理事の河野敏彦氏は「アフターデジタルの世界では、世の中の変化に迅速かつ柔軟に対応し、サービスを適応させていくことが求められる」と述べ、今後は事業推進や組織風土そのものの変革も生協全体で進めていきたいとしている。