ファミリーマート(東京都/細見研介社長)と西武鉄道(埼玉県/喜多村樹美男社長)が共同展開しているコンビニエンスストア「トモニー」は、TOUCH TO GO(東京都/阿久津智紀社長)が提供する無人決済システムを導入した実用化店舗として、「トモニー中井駅店」(東京都新宿区)を8月13日リニューアルオープンした。
無人決済システムで人件費を削減
トモニー中井駅店(以下、中井駅店)は西武新宿線「中井駅」南口、地下にある改札を抜けてエスカレーターで地上に上がった先にある。駅を利用する通勤・通学客の利用がほとんどだが、中井駅店に限らずテレワークなどで駅の利用客が減少したことによって売上が減少。加えてかねてからの人手不足も重なり、状況を打破する解決策を模索していたところだった。今回の導入は、人件費を削減し健全な店舗運営を可能にするという目的で、ファミリーマートと西武鉄道が協力して行ったもので、ファミリーマートのフランチャイズ店としては初の試みとなる。
基本的に“駅ナカ”コンビニであるトモニーは、改札脇にブース型の店舗として出店している場合がほとんどだ。中井駅店のように駅の外に完全に独立した店舗がある例は珍しく、これが無人決済導入のキーポイントにもなった。ブース型の店舗では店の外から商品へのアプローチが可能で、無人での運営は不可能なためだ。
進化するTOUCH TO GOの無人決済
一方で、TOUCH TO GOの無人決済システムは、すでに数多くの導入実績を持つ。2020年3月には、JR山手線「高輪ゲートウェイ駅」(東京都港区)構内で無人決済店舗をオープン。ファミリーマートとも提携し、21年3月にはファミリーマートの無人決済実用化店舗第一号「ファミマ!!サピアタワー/S店(以下、サピアタワー/S店)」(東京都千代田区)にもシステムを提供した。
ウォークスルー型の無人決済システムで、お客はゲートを通って売場へ入り、通常通り陳列された商品を手に取る。店舗の天井に設置された数十台のカメラが手に取ったアイテムが何であるかを判別し、そのままレジに立つと商品一覧と金額が表示される仕組みだ。商品認識率(お客が手に取った商品を正しく判定できる率)は、サピアタワー/S店のオープン時で約95%。抱っこされた子供が商品を手に取る、などのイレギュラーなケースを除いて、ほとんどすべての商品を正しく判別できる優れたシステムだ。
今回中井駅店で導入されたシステムは基本的な仕組みは上記と同様だが、いくつかアップデートされた点もある。一つは、導入までの期間を大幅に短縮したことだ。カメラ設置・調整のロジックが確立してきたことを受け、1ヶ月を切る工期での導入が可能になった。中井駅店では57台のカメラを設置。建物自体の改装は行っていないため、天井にエアコンや配管などの障害物が多くカメラの設置にはコツが必要だったが、これまでのノウハウで乗り切った。
商品認識の面では今回新たにビニール傘の認識が可能になるなど、対象アイテム拡大に注力しているところだ。これまでクレジットカード、交通系電子マネーもしくは現金のみだった決済方法も、冬をめどにQRコード決済の導入が可能になるという。
無人化で売上が一時減少する?その理由は?
中井駅店の改装前の日商は30万円弱。無人決済システムの導入で西武鉄道側は、「無人決済化でコスト削減効果は期待しているが、当面は売上がやや減少するのではないか」と堅実な見方を示す。理由の1つは、以前の店舗が約1100〜1200SKUを取り扱っていたのに対し、リニューアル後は約750SKUまで品揃えを減らしたためだ。これはカメラが商品を正確に認識するために、やや余裕のある陳列が必要であることが影響している。ただし、SKUを絞り込んだ分売れ筋商品だけが残ったかたちにもなっており、必要なものだけをサッと購入する短時間での買物ニーズには答えやすくなったともいえる。
ただし、リニューアル前には人気商品だった「ファミチキ」などのホットスナックの取り扱いが無くなったことでの売上・客足減少や、まだまだ馴染みの薄い無人決済によって高齢客の利用ハードルが上がってしまわないか、などの懸念も残る。
多くのコンビニエンスストアが抱える人手不足問題への有効な一打となり得る無人決済システム。さまざまな懸念を乗り越え、その有効性を示すことができるか注目だ。