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オーダースーツをリモート採寸、2週間で納品! コナカの「ディファレンス」ブランドはなぜ業界の常識を覆せたのか?

コナカ(神奈川県/湖中謙介CEO)が展開するオーダーメードブランド「ディファレンス」は、リーズナブルな価格と納品まで2週間のスピードという利点のほか、店頭でもオンラインでも注文できる利便性を武器に、過熱するオーダースーツ市場に一石投じている。さらに、201811月には、AIを活用してオンラインで採寸できるアプリをリリース。店頭でしか採寸できないというオーダースーツの常識を覆し、コロナ禍でも存在感を高めている。

カウンセリング、生地選びから採寸終了まで1時間

ボタンや裏地などオプションも充実

 コナカは201610月、オーダーメードブランド「ディファレンス」の第1号店をオープンした。ディファレンスを立ち上げたのは、縮小するスーツ市場の中で、オーダースーツが数少ない成長分野だったからだ。同社執行役員ディファレンス事業本部副本部長の中嶋傑氏は、「スーツに占めるオーダースーツの割合は、67年前には約3%だったのですが、現在では約20%にまで拡大しようとしています」と説明する。

 ディファレンスは現在、旗艦店である青山店(東京都)をはじめ、全国に54店舗を展開。著名なクリエイティブディレクターである佐藤可士和氏がディレクションを務めた。最近では、オーダーシステムを取り入れるスーツブランドが増えているが、中嶋氏は「競合ブランドに比べて、品質にこだわった上で価格が安く、しかも、注文から仕上がりまでに時間が短いのが、ディファレンスの特徴でしょう」と胸を張る。

 パターンオーダーとイージーオーダーの中間タイプで、スーツの価格帯は3万500020万円、中心価格帯は3万5000~7万円くらいだという。そのほか、オーダーシャツ(8000円~)やオーダーネクタイ(8000円~)もラインアップ。生地は常時スーツ用が300種類、シャツ用が200種類ほど揃っている。

 スーツのオーダーメードでは、カウンセリングから生地・スタイル・ディテール(ボタンや裏地など)選定、採寸を終えるまで、23時間かかるケースも珍しくないが、「ディファレンスでは、来店予約サービスがあるため1時間ほどで終わります。主客層は2540歳の多忙なビジネスパーソンなので、ご好評をいただいています」(中嶋氏)。また、注文から1週間ほどで納品されるというスピードについても、縫製の約半分は日本で行うなど品質面でもこだわっている。

 現在、顧客の約90%は男性だが、女性客比率30%をめざす。女性服は、女性誌Marisol(マリソル)などを手がけるスタイリストの徳原文子氏が監修。オリジナルの型紙を用意しており、顧客の要望に応じて、トレンドを取り入れたりカジュアルなデザインに仕上げることも可能だという。ぐるなびが運営する秘書向け情報サイト「こちら秘書室」とも提携、全国の現役秘書の方々にオーダーを体験してもらい、女性でも気軽にスーツをオーダーできることを発信中だ。

バーチャルで服を仕立てるシステムを開発

シャツはオンラインで、スーツはフィッターと相談しながら店頭で注文というような使い分けができる

 ディファレンスのもう一つの特徴が利便性の追求。ブランド立ち上げ時から、リアル店舗だけでなく、オンラインも活用することが決まっていた。店頭に足を運ぶ時間と手間が省けるからだ。

 顧客ニーズに応じて、店頭でもインターネットでも発注できるし、商品を店頭で受け取るか、宅配で受け取るかも選択できる。例えば、店頭で採寸してから、自宅に帰ってネットで生地を選んで注文、スーツを届けてもらうことも可能だ。

 「お客さま一人ひとりのニーズに合わせた、パーソナライズの一環です。佐藤氏に、『スーツのオーダーは敷居が高くわかりづらいというイメージなので、なるべくわかりやすく、簡単で楽しく体験できるようにしよう』と、アドバイスしていただいたことが大きかったですね」(同)。

 15年から取り組んだ自社ITシステムの開発では、リモートで生地をチェックする際の、リアリティも追求した。「画像の精度や立体感を高め、生地の縫い目や陰影などもきめ細かくCGで表現することで、イメージしやすくしました。いわばバーチャルでスーツを仕立てて、イメージしやすくしたわけです」(同)。

 専用アプリでは、採寸などで待ち時間なしの来店優先予約を取ることもできるし、過去に注文した履歴や自分のサイズなどの情報も検索できる。

寸法測り直しは3%未満の精度

AI採寸アプリでは、左側・背面2枚の画像を送信すると60秒ほどでサイズが分かる

 とはいえ、オーダーメードである以上、従来はリアル店舗での採寸が必要だった。ところが、ディファレンスは1811月、東京大学発のITベンチャー企業アリスマーと共同開発した採寸アプリ「D MEASURE」をリリース、リモートでの採寸を実現した。これがコロナ禍で威力を発揮している。

 D MEASUREは、必要5項目(身長・体重・性別・生年・好みのシルエット)を入力し、2枚の画像を撮影するだけで、顧客の体型にフィットしたサイズを提案してくれる。「当社が蓄積した採寸データやフィッターの知見を、AIに学習させました。精度は極めて高く、これまで受注しただけでも、数千件以上採寸していますが、測り直したのは数件程度です」(同)。

 コロナ禍の影響でオンラインのウエートが高まっている。店頭でも接客している約10人のトップフィッターに、ビデオ通話で質問したり、要望したりできる「オンライン接客ご案内サービス」も205月に導入した。

 既存客の割合は約半分で、「1着仕立ててみてからと試されて、リピーターになった方が多いですね」(同)。最近ではリモートで完結し、注文から商品配送まで店頭に来ない顧客も増加する傾向にあるという。

 ディファレンスは今後、取扱う服の種類を増やし、販路も広げる方針。2011月にはそごう千葉とそごう横浜、21年春には、大丸梅田店(大阪市)などに相次いで出店した。百貨店のチャネルに力を入れているのは、ミドルの客層を開拓するためだ。「百貨店以外の業態や空白エリアにも、チャンスがあれば積極的に進出し、幅広いお客さまへサービスのご提供をさせていただきます。同時にECの拡大にも注力し、リアルとデジタルの融合したサービスを目指します」と、中嶋氏は力説する。

ディファレンス事業本部 中嶋傑副本部長