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不良在庫のはずが、高く売れる?在庫価値を“見える化”する新サービスとは?

オークファン(東京都/武永修一社長)は、在庫管理を支援する新サービス「zaicoban」(ざいこばん)の提供を開始した。企業が抱える過剰、廃棄在庫に適切なソリューションを提供するシステムで、小売業からの注目度も高そうだ。

Hispanolistic / istock

年間22兆円に上る廃棄商品

オークファン執行役員ソリューション第一事業部部長田島宜幸氏

 オークファンは、「眠っている価値を必要な場所へ」をコンセプトに掲げ、各種事業を展開する企業である。設立は2007年6月で、ショッピング・オークションにおける各種商品の売買相場を比較するサイト「a u c f a n .com」を運営。そのほかグループ企業では滞留品の処分・販売、卸売商品をマッチングするサービスなども手掛けている。

 グループが持つノウハウ、機能を活用、また他企業とも連携し、新サービスとして今年4月にzaicobanをリリースした。

 国内の企業から出る廃棄商品は年間22兆円(オークファン調べ)にも上る。

 仕入れた商品の動きが鈍く、価値が低減した在庫を持ち続けることは企業にとり大きなリスクだ。そこにスポットを当て、ソリューションを提供する従来にないサービスがzaicobanである。

 同社ソリューション第一事業部部長で、zaicobanを統括する田島宜幸氏(執行役員)は「多くの企業では、(店別・アイテム別の)在庫数量管理を担当する『在庫コントローラー』という職位を設けている。だが商品の価値を評価する頻度は1年や半期に1度というケースが大半で、そこに大きな問題がある」と指摘する。

 在庫を放置することにより、商品価値が大きく目減りし、そこで処分にいたるケースも少なくないという。これに対し、zaicobanは、高い頻度で商品価値を評価し、適切に対処することで、在庫リスクの軽減をめざす。

 一般に、売上と粗利益に着目し在庫を管理する企業は多い。それに対し、在庫回転や商品評価損といった、貸借対照表の要素を考慮しているのが新サービスの特徴といえる。つまり従来は意識されなかった、もしくは表面からは見えなかった商品の価値を正しく把握することで、より機動的な経営判断を実現できるような機能を志向する。

 zaicobanでは、企業の在庫を評価、その状態によって「診断」「治療」「予防」という3つのアプローチを用意している。

在庫回転率を20~40%改善

企業の棚卸や販売実績のデータをもとに在庫の「健康診断」を行う。商品は1SKU単位で査定、リアルタイムで管理、価値を可視化する

 zaicobanの具体的な運用手順、利用法を次に説明する。

 まず企業から提供された棚卸や販売実績のデータをもとに「健康診断」を行う。検査項目は、在庫の健全性では「想定粗利率」「商品廃棄率」、効率性では「在庫回転数」「交叉比率」、正確性では「棚卸差異発生率」といった指標のもと、それぞれの状態によりA~Dの判定のほか、コメントや対処法がわかる。オークファンはヤフオクやアマゾンなど、ネットとリアル双方の商品の実売データベースを保有、それをもとに在庫の価値を可視化できる点が特徴だ。

 判定をもとに自社店舗で値引き販売する、ネットで処分したほうがよいなど、在庫への適切な対処法もわかる。いずれも商品をSKU単位で査定、リアルタイムで管理、価値を可視化しているのが強みだ。

 ユニークなのは「販売活動」にある「値付け適正度」や「販路適正度」といった項目。前述の項目と同様に「値下げすべき商品数割合」「値上げすべき商品数割合」を表示、さらに評価判定が出る。

 つまり商品の市場で売買されている相場と比べ、さらに値下げ、もしくは値上げしたほうがよいかを判断する材料としても使えるわけだ。

 「導入企業の例では、ある店舗で売られていた商品はアマゾンよりも安い価格がつけられていた。立地は比較的競争が緩やかな郊外で、本来なら、もっと高い値段をつけても売れる。このようにzaicobanを使えば、適正な価格を設定することができる」(田島氏)

 これらを通じ、在庫回転率と粗利益率の両方を上げることが可能になるという。在庫の規模や状態にもよるが、滞留傾向商品の値下げや、専門業者への処分販売により、在庫回転率は20~40%、価格弾力性の低い商品の値上げや品揃えの見直しで、粗利益率は0.5~3ptの改善が期待できるという。

 競争が激化するなか、他社とは異なる商品で差別化を図ろうとする企業は多い。その中、今回、オークファンがリリースしたzaicobanを効果的に使用すれば、リスクを最低限に抑えながら、思い切った品揃えにもチャレンジできるようになるかも知れない。