好調の無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」 アフターコロナの小売業成長株に?

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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「他人と接触したくない」という新たなニーズを取り込む

TOUCH TO GOはアフターコロナの小売市場における成長株になるか
TOUCH TO GOはアフターコロナの小売市場における成長株になるか

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大という大きな試練に直面しているのは、TOUCH TO GOとて例外ではない。開業間もない32829日・445日には東京都からの外出自粛要請に応え臨時休業、その後5月末まで土曜日曜の休業を決定している。

  そのため売上面では一定の影響を受けているものの、コロナウイルスが「追い風になる」と阿久津社長が見る背景には、TOUCH TO GOの「非対面・無人決済」というコンセプトがある。お客と従業員、買物客同士の接触が通常の小売店舗と比べて少ないため、ウイルスの感染拡大を抑止できるというわけだ。

  TOUCH TO GOのようなレジレス・スキャンレス型店舗は、日本では人手不足の問題を根底とする「省人化」「店舗効率化」といった小売側の利点が注目される傾向にある。反面、一般消費者にとってはそのメリットがわかりにくく、そもそもそうした店舗の開発が進んでいるという認識すら広がっていない感が否めない。しかしコロナ禍で「他人とできるだけ接触したくない」という新たなニーズが世界中で生まれた今日、ウォークスルー型店舗、あるいはレジレス・スキャンレス店舗は一躍スポットライトを浴びる存在になる可能性が高い。

 そうしたなかTTGは、月額約80万円~という具体的な金額とともにサブスクリプション型でのシステムの外販に乗り出す考えを示している。阿久津社長は「すでにいくつかの話が進んでおり、今年度中に数カ所で(TTGの仕組みを取り入れた店舗を)展開する計画がある」と明かす。同時に運営コストの低減も図り、提携先を増やしたい考えだ。

  一方、国内では、大手コンビニエンスストアもレジレス店舗の開発に意欲的だ。今回のコロナショックを踏まえ、開発・展開スピードを加速させていくと予測される。新型コロナウイルスによって、日本でもレジレス店舗というこれまでの店の在り方を大きく変えるようなフォーマットでの出店競争が激しくなりそうだ。

 

 

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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