小売向けネットスーパー支援の10X、AI・DX領域に進出の深謀

上林 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)
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小売ECプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」を提供する10X(東京都/矢本真丈社長)はStailerの新戦略として、AIを活用した小売現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)全般を支える、5つの新たな製品を提供することを発表した。これまで小売のネットスーパー事業立ち上げ・運営に特化していた同社だが、今後はAI・DXというより広い領域へビジネスを拡大する。そのねらいとは。

10X代表取締役社長・矢本真丈氏(右)と、デリシア代表取締役社長・森真也氏
10Xの矢本真丈社長(右)と、デリシアの森真也社長(左)

小売業の重要課題「粗利創出」「業務改善」「データ運用」の支援網を拡大へ

 10Xは、2020年からネットスーパープラットフォーム「Stailer」を提供しており、現在全国の食品スーパーやドラッグストアの計13社が導入している。

 今回発表した新製品は、Stailer提供開始からの約4年で蓄積されたノウハウや知見を生かし、Stailerを「小売DXをまるごと支えるプラットフォーム」に進化させるという方針のもとで開発された。

 今後は、従来の「Stailer」を「Stailer ネットスーパー」の名称に変更、それに5つの新製品を加えた計6製品のマルチプロダクトで事業展開する。これら6製品はいずれも、10Xが現在の小売業の課題と定めた「粗利創出」「業務改善」「データ運用」のそれぞれに対応した製品となっている。

 このうち「粗利創出」を解決するプロダクトが、既存のネットスーパープラットフォーム「Stailer ネットスーパー」、既存の店舗IDやポイントシステムとネットスーパーのシステムを統合するOMO(オンラインとオフラインの融合)アプリ「Stailer OMNI(オムニ)」、AIによる価格最適化が可能になる「Stailer AIプライシング」の3つだ。

 「業務改善」では、MD(商品政策)関連のデータを統一し、小売・卸・メーカーの間で標準化・効率化をする基盤となる「Stailer MD」のほか、AIを活用した発注システム「Stailer AI発注」を提供する。

 「データ運用」の面では、各プロダクトの共通の基盤として「Stailer データストア」を活用することで、円滑なデータの利活用を実現するとしている。

 10Xの矢本真丈社長は「小売企業の課題となっている労働生産性の向上を実現したい」と意気込んだ。

10X代表取締役社長・矢本真丈氏
10X代表取締役社長・矢本真丈氏

 これらの新製品のうち、第1弾として、「Stailer Ai発注」を5月20日より販売開始し、7月よりサービスの提供をスタートする。また、導入パートナーとして、長野県内で食品スーパーを展開するデリシア(森真也社長)での導入が決定した。

 そのほかの製品については、25年冬以降、順次提供を開始していく予定だ。

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記事執筆者

上林 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

2000年生まれ。埼玉県出身。法政大学文学部英文学科卒業後、地方新聞社の営業職を経て株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。

流通小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部で執筆・編集を行う。

趣味はお笑い鑑賞、音楽鑑賞。一番好きなアーティストは椎名林檎。

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