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楽天とRoktが語る NRF2025から見えたAI時代のEC・小売の未来図

ニューヨークで開催された「NRF 2025: Retail’s Big Show」(以下NRF2025)は、世界最大級の小売業界展示会として、4万人以上の参加者、5,000以上の展示ブース、175のセッションを集めて盛況のうちに幕を閉じた。NRF2025のテーマは「ゲームチェンジャー」で、AIが小売業界にもたらす変革に焦点が当てられた。本記事では、楽天グループ マーケットプレイス事業 アカウントイノベーションオフィス ヴァイスジェネラルマネージャーの秦俊輔氏Rokt ビジネス開発 ディレクターの大野皓平氏による視察レポートをお届けする(本稿は特集「生成AIとエージェンティックAIが小売を変える!NRF2025」のオンライン有料読者限定特別コンテンツです)。

NRF2025基調講演の様子
NRF2025基調講演の様子

AIがEC・小売業界の
ゲームチェンジャーとなる

 全体を通して感じたのが「AI一色」のカンファレンスだったということだ。

 オープニングセッションでは、世界最大の小売チェーン、ウォルマート(Walmart)とAI領域におけるリーダーでもあるNVIDIAが登壇し、EC・小売におけるAIの活用について議論が交わされた。AI活用の幅は、需要予測の精度向上やパーソナライズされたショッピング体験、サプライチェーンの最適化など、幅広い。例えば、ロレアルは自社製品のデジタルツイン(現実空間にあるものを仮想空間に再現すること)を作成し広告代理店にも提供することで広告・マーケティングの効率をあげ、クリエイティビティの向上にも繋げている。AI活用が、間接的にも顧客エンゲージメントに寄与している事例と言える。またウォルマートはAIを活用した需要予測で精度向上を実現している。ウォルマートほどの規模になると、“1%”の精度向上がみられるだけでも経済的な効果は計り知れない。

 このように、NRF2025全体を通して具体的な成果が強調されており、AIを使って「何かをやってみた」というフェーズから「こういったベネフィットを得た」というフェーズに移行してきていることがわかる。

リテールメディアの重要性
「付帯収益」をどう活かすか

 1月12日から3日間にわたって開催されたNRF2025だが、その開催前日に「What’s in Store for Retail Media Networks」というリテールメディアに特化した分科会が行われた。そこでは、コストコ(Costco)やメイシーズ(Macy’s)などの主要小売業者とメーカー、広告代理店、コンサル、ベンダーなどリテールメディアを取り巻く多様なプレイヤーが登壇し、1日を通して18にわたるセッションが行われた。

 印象的だったのはコストコのリテールメディア責任者であるマーク・ウィリアムソン氏の講演で、「付帯収益」の重要性を強調していた。コストコは年会費からの収益が大きいビジネスモデルで、「年会費は、全体売上の2%ですが、純利益では75%を占める」とコメント。コストコの安さとワクワクするショッピング体験を提供できているのは、年会費という付帯収益をうまく競争力に繋げているからなのだ。

 コストコは、リテールメディアに関しても同様にこのビジオネスモデルを加速させるための取り組みと位置付ける。リテールメディアを“燃料”としてメンバーシップを強化して、顧客を増やし、売上をさらにのばしていく循環をつくっている。「リテールメディアでいかに収益を作るか」だけではなく、「ビジネス全体の中でリテールメディアを

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