手軽にハウスマネーを実現できる「ポケペイ」~大黒天物産が4月から運用開始

2020/03/02 09:27
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poke pay

ポイント還元などキャッシュレス決済支援施策も功を奏して、クレジットカードや電子マネー、各種ペイなどを使用する人が増えてきた。これまでポイントカードなどICカードにチャージ機能を付与して、顧客エンゲージメント向上やデータ利用を進めてきた流通小売業でもさまざまなキャッシュレス決済手段への対応が必要になっている。従来、空港などに設置し、余った外貨を電子マネーに交換する「ポケットチェンジ」を展開してきた、株式会社ポケットチェンジが、スマホを活用したハウスマネーを実現する「ポケペイ」事業をスタートした。 流通小売業では岡山県・倉敷市に本拠地を置く大黒天物産がいち早く採用し4月から運用を開始する。

外貨を電子マネーに交換する仕組みをハウスマネーに応用

株式会社ポケットチェンジ 代表取締役 青山新氏
株式会社ポケットチェンジ 代表取締役 青山新氏

海外旅行から帰国した時など、外貨コインや紙幣が使いきれずに残ることが多い。
それをSuicaなどの電子マネーに交換するキオスク端末を開発し、成田空港や羽田空港のロビー、東京駅など交通の要所、ゲームセンターやドン・キホーテ店内など観光客の集まる場所に設置してきたのがポケットチェンジだ。電子マネーはタッチ式ICカードやスマホにチャージできるので便利である。

しかし青山新・代表取締役は「旅行関連のビジネスについては主要な空港や駅などにキオスク端末を設置し、一定の成功が見えた」と語り、新たな事業開拓を検討していた。そうした中で、ポケットチェンジを運営するにあたって、サービスを利用する人の2割程度が、円を入れて電子マネーにチャージしていることがわかり、キャッシュレス化の可能性に注目したという。

しかし、キャッシュレス化が進んで、利用客が便利になっても、導入店舗にとってはシステムが自社の手の内にはないため、余計なコストがかかるばかりでメリットが薄い。そこで、もし自社で使えるキャッシュレス手段を自由にデザインし、簡単に作ることができれば、これからのキャッシュレス時代において顧客との関係性をより強化できる新しい武器になりえるのではないかと考えた。

スマホアプリを使い低コストで実現可能な「ポケペイ」を開発

以前からCRMの一環として、ポイントカードを導入している流通小売業は多い。
ICカード化して現金のチャージ機能を持たせたサービスも少なくない。これならば顧客との関係性を深められる。しかしカード発行に関わる手数料やシステム運用経費がどうしても膨らんでしまうだけでなく、媒体が単なるカードのため、アプリを使った販促など、自由度を持ったサービスを提供することができない。そこに目をつけて、 “ 誰でも簡単に独自のハウスマネーを持てる”ことを狙ったのが「pokepay(ポケペイ)」である。
「既存のポイントカードに代わる用途にも使うことができるし、他にもたとえばイベントなどで期間限定でマネーを発行したりなど多彩な使い方ができる」と青山代表。「ポケペイ」を使って、宮城県塩竈市や、新潟県の佐渡ヶ島など、観光地で使える地域通貨を発行している例もある。

青山代表は、「重要な点は、独自のハウスマネーを簡単に作れ、顧客との関係性をより深めることができること」と話す。しかもハウスマネーを導入する費用や手間は他の方法に比べて圧倒的にミニマムである。
「独自にアプリ開発に費用をかけなくても、ポケペイアプリを使えば導入費用は無料で済む」という。独自のハウスマネーならば利用する顧客との関係性を密にすることができるため、顧客にとってもいつもの店に行くというモチベーションアップの効果も期待できる。

サービスの流れ
ポケペイサービスの流れ

大手スーパーマーケット運営の大黒天物産が4月から運用開始

大黒天物産でのポケペイの導入検討
大黒天物産でのポケペイの導入検討

そうしたメリットを生かして、いち早く導入を決めたのが岡山・倉敷市に本社を置き北は新潟や長野から、中部・東海、近畿、中国四国、九州・福岡まで「ラ・ムー」「ディオ」「ディオマート」をはじめとしたブランドでスーパーマーケットを展開する大黒天物産だ。同社ではこれまでポイントカードや各種のキャッシュレスサービスを導入していなかった。

しかしキャッシュレス化が進む中で、クレジットカード利用や各種ペイが使えないのかといった顧客からの問い合わせもあり、現金以外の決済手段の検討を開始。 ただ、決済手段の多様化が、顧客にとって本当の意味で節約や利益につながるのか疑問に感じていたという。一方、店舗側からはレジスタッフによるつり銭の間違いがないことや現金を扱わずに済むキャッシュレス手段を導入してほしいという要望もあり、独自のハウスマネー運用の検討を開始した。

大黒天物産では、ハウスマネー導入にあたり複数社によるコンペを実施。ウェブサイトを見て参加を打診したポケットチェンジは、ICカードなしでスマホ決済に絞って提案したが、カード発行のコストが不要なこと、スマホアプリ利用なので登録などの手間が不要となることなどが決め手になったようだ。

顔認証やAIと連携した独自のサービス展開にも期待

しかもポケットチェンジがソフトだけでなくハードも自社開発し、キャッシュレス推進に対して、導入する企業のメリットだけでなく、利便性や快適さなど顧客目線での満足も追求する姿勢に共感したという。

実際の導入に向けた準備を進める中で、導入コストの安さだけでなくシステムを部分的にオープンソースとして公開し、ツールを豊富に備えていることで、連携の自由度が高く求められる仕様を実現しやすいことなど、ハウスマネー導入に向けたハードルの低さを感じている。

青山代表によれば、「現状ではハウスマネー導入には3カ月程度かかる。ただ、ツールも揃ってきており、今後は、基本機能だけでリリースするなら、申し込んだ翌日には即利用開始できるようにしたい」とスピード感を持った対応ができるようになるとの自信を示している。

大黒天物産では、単なる決済ツールとしての「ポケペイ」にとどまらず、将来的には顔認証やAIを利用した独自の店舗サービスにも発展させ、顧客の幸福を追求していきたいとしている。ポケットチェンジはこれまでも各種電マネーとの連携や、既存のPOSシステムとの連携を実現しており、今後もポケペイのサービスを起点に、キャッシュレスに関わるさまざまな仕組みとつながっていくことが期待できる。

ポケペイ公式サイト

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