ID-POSデータ分析・活用の進化と実践アプローチ 顧客の購買行動の可視化・データ活用の最前線

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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過去からの慣習をID-POS分析で検証

 最終的な施策は、売場に手を入れること。お取引先との研究会でも長年取り組んできたが、成果が出始めたのはここ1~2年のことだ。原因は、取引先は単品を売りたくて、店舗は客数を増やしたいという目的のギャップがあったから。我々の売場づくりにも課題があった。商品の並び順など業界慣習や過去事例を踏襲する場合が多かった。ロイヤル顧客が愛用しているものをカットしてはダメと言われるが、ノウハウがなかった。年齢別の数字は品揃えには反映することも難しく、SKUを減らせとも本には書いてあるが、怖くて減らせない実態もあった。

 これらはID-POSを使うことで、顧客の購買動向から検証できる。商品のクラスター分析でデンドログラム(樹形図)を作成した。基本ロジックは「期間併売・同時非併売」。これを積上げて「同じ人は買うけど、一緒には買わない」「どっちにしようか、迷う商品ではないか」と想定してゾーニング改革に着手し始めた。

 売れ筋商品の置き場を増やすのはいいが、必要な商品がなければ客数は減る。「不要サブカテゴリー」か、それとも「必要サブカテゴリーなのに欠落した」かを見極める。ロイヤル顧客愛用品を抽出するツールを作ってみたが、1万以上のSKUを抱えるスーパーでは、大きな差は出にくいこともわかった。

数字遊びのレポートは絶対に作成しない

 SKU削減については、棚割分析のロジックを改造して、欠落サブカテを出さずに“問答無用でSKUをカットできる仕組み”を開発した。取引先にもこのシステムを公開しており、バイヤーを悪者にせずに品揃えの改革を実現するインフラができた。

 ただ実感として、データ一辺倒にはならないように注意しなければならない。ID-POSは所詮昨日までの売上分析であって、未来予測ではない。新製品を見極め、流行を感じる力はアナログの商売勘が有効だと信じている。

 損益に本気で貢献するためには、ID-POSで小難しい分析を行って、役に立たない数字遊びのレポートを作ることは絶対にしてはいけない。データからどこかに利益の糸口がないか熟慮して泥臭い実験と総括を繰り返して「金の鉱脈」を探すことを続けている。

 資金は限られているため、コープデリのID-POSではシンプルな機能に特化して、ピンポイントで開発し余計な機能は省いた。システム費用は取引先へのデータ販売で賄っている。
そのため取引先に要求されれば、最優先で開発し改良を加えてきた。

顧客データ分析結果のマス化が“天井までキャベツ”という商売の基本をアシストすると考えている。軸をぶらしてはいけない。

各プログラムの詳細

下記画像リンクから、各プログラムの詳細をご覧いただけます。

株式会社 ローソン 理事執行役員 経営戦略本部 副本部長 (兼) 次世代CVS統括部長 秦野 芳宏 氏 SAS Institute Japan株式会社 ソリューション統括本部 製造・コンシューマーインダストリーソリューション統括部 コンシューマーインダストリーソリューショングループ マネージャー 井上 義成 氏
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