米国のリテールメディアの市場規模は、日本円にして7兆円に迫る勢いとなっている。日本と異なるのはオフライン(店舗)ではなくオンライン(EC)が主な舞台となっている点で、GAFAMだけでなくウォルマートをはじめとする大手リアル小売も参戦し、熾烈なシェア争いが続いているのだ。世界最大のリテールメディア市場の現在地を解説する。
リテールメディアはオンラインが主戦場
アマゾンは決算報告書上で事業別の収益を2種類掲載している。1つめは北米、海外、AWSという大きなくくりによる分類で、2つめは類似の事業をグルーピングし7つに分類したものである(図表❶)。
トップがオンラインストアなのは当然として、2番めの稼ぎ頭はフルフィルメントといったECに付帯するサービスを提供する事業で、3番めがAWS、そして4番めに広告サービスである。このアマゾンが“広告サービス”と呼称しているセグメントの一般的呼称がリテールメディアとなる。
売上高は昨年度末で377億ドルだが、すでに400億ドルを突破しているはずだ。1ドル150円換算で6兆円、日本最大の広告代理店の年商を軽々と上回ってしまっている。
同社が広告サービスをほかから切り離し独立セグメントとして記載を始めたのが2019年で、ウォルマートのダグ・マクミロンCEOが広告について公的に言及したのは前年の18年である。ウォルマートはこの年から広告に本腰を入れ始め、後を追うように大手のリアル小売企業に広がっていった経緯がある。
つまりアマゾンが契機となり、アマゾンがやっていることをコピーすることに競合各社ともに全力を注いできたわけだ。
ここで気づいてほしいのは、アマゾンの広告とはデジタル広告なのだという点である。米小売業界で話題になっているリテールメディアとは、EC上の広告を自社でマネタイズすることを意味していて、リアル店舗は今のところ含まれていない。
日本は店頭に映像端末を置いたり、ロイヤルティプログラムのデータを使って広告をつくったりといった販促プログラムをリテールメディアと称していることがほとんどなのだが、アメリカとは異なっているということをまずは前提として理解いただきたい。
アマゾンの猛追でシェアを落とすグーグル
デジタル広告の主軸は検索に対する推奨商品表示、いわゆるスポンサー広告だが、これだけならなんら目新しいものではない。では革新性がどこにあるのかというと、
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