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【小売業特別レポート】NTT東日本「AIガードマン」買物客の行動をAIで検知し声がけにつなげる
~店舗の「万引き防止」や「接客向上」に効果~

 店舗にとって「万引き」による被害の減少や積極的な「接客品質の向上」は、売上に与えるプラスの効果が大きいテーマだ。その課題に対応できるのが、NTT東日本が開発しサービス提供している「AIガードマン」である。買物客の行動を店内のカメラで観察し、不審な行動を感知すれば店員の持つアプリに知らせる仕組み。その通知を受けた店員は、買物客に声をかけることにより万引きを未然に防ぐことが可能という。そして積極的な声がけは、商品を探している買物客をサポートすることにもつながり、買物客の購買促進につながる。

店内での不審行動を検知し声がけすることで万引きを未然に防止

万引きの約65%は声がけで防止可能

 万引き被害を減少させることは、店舗にとって大きな経営課題のひとつ。万引き犯罪の被害額は年間4615億円(2010年・万引防止官民合同会議)にも達するという。1日あたり全国で12億円超の被害が発生していることになる。この被害額は、そのまま店舗のロスにカウントされる。被害額の大きさに加えて、万引き犯の確保や警察への連絡、損害賠償請求など手間やコストの発生も避けられない。

 こうした中で、小売業の多くで万引き防止のために取り入れられているのが、防犯カメラの設置や店員の積極的な声がけという調査結果(全国万引犯罪防止機構/全国小売業万引被害実態調査)が出ている。警視庁のHPでは万引きをあきらめる要因として、店舗スタッフの「声がけ」が最も効果的で、65.6%を占めるとしている。

アースアイズが開発したAIカメラ。AIを搭載し不審行動を瞬時に検知する

 NTT東日本がサービス提供する「AIガードマン」は、AIカメラや防犯システム開発のアースアイズと提携し導入するAIカメラ、スマホアプリへの通知やAIの更新を行うAIクラウド、検知映像を保存するストレージでシステムを構成する。
 万引きが多発しがちな棚の通路を撮影するポジションに設置したAIカメラで買物客の不審な行動を検知し、その情報を店舗スタッフのスマホアプリに通知する。通知を確認した店員が売り場に向かい、その買物客に声をかけるというプロセスで万引きを未然に防ぐ。

万引きによる商品ロスが半減したケースも

 不審行動には、売場を行ったり来たり、キョロキョロしたりウロウロする行動や、通路にしゃがみ込む行為などが挙げられる。もちろん万引き目的ではなく、単に商品を探している場合もあるだろう。その時に店員が声がけして買物客の困りごと、例えば商品が見つからない場合やどの商品がいいか迷うというケースなどに店舗の店員が適切に対応することも可能だ。万引き防止とともに、買物客への親切な声がけで店舗イメージアップ、売上促進という効果も大いに期待できる。

 AIカメラには不審行動のパターンが登録され随時アップされる。広角レンズを搭載し10m程度の範囲で通路を監視し不審行動を検知すると画像を送信するとともに通知を行う。アプリに通知された情報を店員がタップし、声がけに向かい、声がけを終えれば完了ボタンをクリック。その一連のプロセスを記録しレポートして提供される。これにより適切な声がけを行ったかどうかを把握でき、効果測定にも生かせる。

 NTT東日本の担当者によれば「AIガードマン」の万引き防止効果について、「商品ロスが年間1%の場合、1年後のロス率を0.6%で提案する。実際には半減したケースも出ている」と効果は非常に高いと胸を張る。

 

買物客の行動検知がCS向上にも貢献

 商品ロス対策としての「AIガードマン」だが、それだけが導入効果ではない。キーワードは「声かけ」だ。買物客の不審な行動をAIで検知する機能は、反対に買物客が戸惑っているサインという可能性もある。すでに「AIガードマン」を導入した店舗では、積極的な声がけにより顧客満足度(CS)向上とそれによる売上アップを実現しているケースも出ている。

積極的な声がけで買物客の困り事を解決しCS向上につなげる

店舗スタッフの「売場への意識」が高まる

 食品スーパー「ライフ」を展開するライフコーポレーションも「AIガードマン」を導入した一社。「AIガードマン」により不審な行動を検知することで、店長が店内を巡回する動機づけができ、巡回頻度が増したほか、通知された画像をチェックすることで適切なタイミングでの声かけが可能になったとしている。
 また、「AIガードマン」の導入から、店舗の管理職に通知が届くように設定し、担当を決めずに通知を受けた全員が現場に向かうというルールを設定した。こうしたルールを決めて、管理職全員の意識を統一が図れ、互いの業務をカバーし合う体制ができたという点でも店舗活性化の効果は上がっているという。
 また、バックヤードでの管理業務に時間を割きがちな店長でも、「AIガードマン」導入により、従来以上に売場への意識を高める効果も出ているようだ。売場に出ている時間が増えれば、売場の状況を把握することは容易だ。それに加えて、売場を頻繁に店長や管理職が巡回していれば、他の店舗スタッフの注意も売場に向くようになる。買物客の行動や店舗レイアウトの改善ポイントなど新たな気づきにもつながることになるだろう。

AIカメラにより目の届きにくかったエリアも解消

 店舗を頻繁に巡回し、積極的に声がけを実施してCS向上を実現するにも人手はかかる。すでに慢性的な「人手不足」は流通業にとっては大きな課題となっている。店舗スタッフを効率的に活用するにも、「AIガードマン」が抽出した画像データは活用できる。売場での不審行動だけでなく迷っている買物客を特定できる「AIガードマン」ならば、必要に応じて適切な声がけができる。

 ドラッグストアの「ウエルシア」は、人手不足の中でのCS向上を狙いに「AIガードマン」を導入した。防犯効果を高めるため、顔認証を搭載した監視カメラも実用化されている。「AIガードマン」は、個人を特定する顔認証ではなく、行動パターンを検知して通知する仕組みなのでプライバシーへの配慮という点で負荷が低い。それも店舗スタッフの積極的な声がけを促すことにつながる。

 「AIガードマン」を設置すれば、店舗スタッフが少ないために、これまで目が届きにくかったエリアにも目が届くようになる、と店舗では導入効果に期待を寄せている。ドラッグストアの店頭では、比較する商品が多いことで買物の際に迷うことも珍しくない。店舗スタッフの積極的な声がけがきっかけとなり、買物客とコミュニケーションすることで困っていることを聞き出して解決。それにより確実にCS向上につながっているというわけだ。

NTT東日本が提供する「AIガードマン」の仕組み

声がけが必要な買物客を「見える化」

 比較する商品が多いことや、趣味・嗜好性で選択する商品も変わる、という点でファッションや小物を扱う店舗では、買物客とのコミュニケーションが売上アップのカギを握る

 某ファッション雑貨店では、「AIガードマン」の導入でCS向上を実現するとともに、クレーム件数も大幅に減少したという。

 店内で店舗スタッフに聞いてみたくて、ウロウロ・キョロキョロする買物客は少なくない。そうした行動をAIで検知しリアルタイムで通知する「AIガードマン」ならば、声がけが必要な買物客を「見える化」することで、積極的に買物を手助けできる。しかも、バックヤードにいても、通知を受けることでスピーディーに売場で駆け付けることが可能だ。

店頭では、「AIガードマン」の通知がトリガーになることで、声がけに対するストレスがなくなり、店舗スタッフが自発的に声がけする機会が増え、店舗の活性化につながっているという。

食品スーパー「ライフ」とドラッグストアの「ウエルシア」での導入事例に関する詳細は特別レポートで紹介している。

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