キャッシュレスで変わる流通
認証から決済までワンアクションで実現
インフキュリオン・グループ

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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各種ペイの登場など「キャッシュレス」サービスの普及が加速してきた。現金を持たないこと、あるいは扱わないことでの安心感や、支払いの利便性向上が最大のアピールポイントになっている。しかしデジタルテクノロジーをベースとすることで、単に支払いの利便性向上といったシンプルな目的だけではない、新たな活用が広がりそうだし、現にマーケティングや市場活性化といった、支払いだけにとらわれない利用シーンが具体化しつつある。金融・決済関連の事業開発や(一社)フィンテック協会の活動などを通じてインフキュリオン・グループ(以下、インフキュリオンG)は「キャッシュレス」の普及・推進を図っている。

デジタル技術の活用で買物の利便性向上や店舗など運営側の負担も軽減

(一社)Fintech協会 代表理事 株式会社インフキュリオン・グループ 代表取締役社長 丸山 弘毅 氏
(一社)Fintech協会 代表理事
株式会社インフキュリオン・グループ
代表取締役社長 丸山 弘毅 氏

 キャッシュレス化が加速している。普及しているインターネットショッピングでもクレジットカードで決済を行う場合が多い。電車やバスなど公共交通機関の利用も電子マネーが一般的である。現金を用いないことで支払いの手間や負荷を軽減するのが、キャッシュレスの大きな目的である。キャッシュレスによってスーパーやコンビニのレジ通過時間を短縮でき、買物客の不満のひとつであるレジ待ちの解消も期待できる。

 高速道路ではETCの普及により、料金所で現金もしくはクレジットカードで利用料金を払う時間をなくすことで渋滞を抑制したり、深夜割引などのサービスの追加や変更したりすることが可能になった。料金所の係員の手間も減るし、係員の人数を削減することも可能だ。「デジタル技術により利用者の利便性を向上し、同時に運営側のコスト削減も可能にしている」とキャッシュレスサービスのソリューション開発を手がけるインフキュリオンGの丸山弘毅社長は話す。

個人認証を起点に多様な支払い方法やサービス提供が可能に

 「キャッシュレスは単に支払いの利便性を高めるだけのツールではない」と丸山社長は強調する。従来は専用のカードや端末、専用のネットワークを必要としたオンラインの仕組みが、デジタルや共通のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を用いてインターネット上にも展開できるようになったことで、Eコマースの普及が加速し、支払い手段として各種のペイサービスが登場した。

 「クラウドやAPIの活用で、単に購買行動だけでなく消費者の行動が見えてくる。キャッシュレスは、レジでお金を払うときだけ。しかしデータで消費者の購買行動のすべてを時間軸でつなげていくことができる」のだという。丸山社長は、「クレジットカードで支払うとき、カード保有者の認証と支払いが一体化している。しかしデジタルで連携することで、先に認証しておき支払いは後で、というようなことも可能となる。

 レストランを事前に予約して、利用して支払うというシーンを考えればよくわかるはず」と、認証することで個人を特定し支払いの確実性も担保でき、消費者にとっては認証されることで確実にサービスを受けることが可能になるという。この「認証とサービスを連携する基盤」を提供するのがインフキュリオンGのミッションというわけだ。

クラウド「Azure」をベースにサービスを柔軟に拡張

 インフキュリオンGが手がける金融と流通を連携させるサービスとして、鹿児島銀行(以下、鹿銀)が6月27日にオープンした完全キャッシュレス商業施設「よかど鹿児島」に対する立ち上げ支援と鹿銀が開発したスマホ決済アプリ「Payどん」へ同社ウォレット決済ソリューション「ウォレットステーション」を提供した。「よかど鹿児島」は鹿銀の本店別館ビルに設けた商業施設。そこでは基本的に完全キャッシュレス化をめざし、QRコードを読み取って行う認証という金融サービスと、支払いなどの店舗サービスを直結する。

 「店舗が独自に会員カードを発行する場合、通常は支払いが別の機能。しかしデータ連携することで、会員は10%オフというようなサービスを決済と同時に受けられる」。銀行アプリとストアアプリを連携することで、さまざまなサービスを提供できるようになるわけだ。すでに同社のキャッシュレス基盤を活用したサービスでは、りそな銀行グループが提供する、チェーン店などとの支払いと連携したサービスにも活用されている。

 インフキュリオンGが提供するサービス基盤は、マイクロソフトのクラウド「Azure」上で構築されている。「Azureで構築していることで拡張が容易。継続して金融と店舗が連携できるさまざまなサービスを検討しており、必要なタイミングですぐにスタートできる」のが「Azure」を活用するメリットだという。

 「Azure」を提供するマイクロソフトは日本政府が掲げる超スマート社会”Society 5.0”の実現に向け、さまざまな業種・業界におけるインダストリーイノベーションを推進しているが、急速な環境変化に直面する流通業においてはデジタルトランスフォーメーションを支援する施策「Smart Store」を展開している。

 「Smart Store」推進のために、共通機能にあたるリファレンスアーキテクチャーの提供や人材育成などを掲げているが、インフキュリオンGがキャッシュレスでめざす方向性と、「Smart Store」がねらう流通業のデジタル改革は共通する点が多い。そこも「Azure」上で発展拡大を意図する要因に挙げられるだろう。

キャッシュレスはマーケティングにも有効なツール

 キャッシュレスの普及とともに各種のペイサービス事業者の乱立や銀行もペイサービスに参入するなど、店舗から見ればどのペイに対応すべきか判断が難しい。すべてのペイに対応するとなると、それだけ専用端末が増えるのではないか?という心配もある。基本的に決済を完了するためには、QRコードをはじめとした二次元コードやバーコード、ICに記載されたカード番号などを読み取って電文を金融機関に送らなければならない。すべてのキャッシュレスに1台の端末で対応することは、今後のキャッシュレス普及には不可欠だ。

 インフキュリオンGでは、「どんなデータでも読み込んでしまえば、どこのサーバーに送信するからわれわれで処理する仕組みを提供する」という仕組みを具体化することで、流通側が各種のキャッシュレスに対応する手間を省く一括接続サービスを提供していくとしている。インフキュリオンGでは、すでに子会社を通じてドラッグストアをはじめとしたチェーン店に対しこの基盤を提供している。

 支払いの段階でさまざまなペイなどに対応するなら、マーケティングでもさまざまな支払い手段を活用する消費者にアクセスしたい。「今は支払いの利便性向上や人手不足対策、政策面でのアピールとしてのキャッシュレスだが、流通にとってはそれだけでなく店舗の集客やリピーターの拡大といった手段につながっていく」と話し、そこを実現する基盤を提供することで、日本でもキャッシュレス化が加速するだろうと予想している。


「Smart Store」構築のためのリファレンスアーキテクチャー・技術者支援プログラムを無償で提供

流通小売業のデジタルトランスフォーメーションの課題を解決
日本マイクロソフト

日本マイクロソフト

 日本マイクロソフトは、1月に流通小売業向けに「Smart Store」の施策を発表。流通小売業の店舗運営や在庫・商品マスター管理、スマホ決済などシステム共通部分は、日本マイクロソフトが標準仕様ともいうべきリファレンスアーキテクチャーをGitHub上にて無償で提供する。「Smart Store」のリファレンスアーキテクチャーを活用することによって、流通小売業は、①新しい顧客体験を提供②効率的な店舗運営を実現 ③顧客・店舗データの利活用により差別化したサービスの開発が可能、などのメリットを受けられ、デジタルトランスフォーメーションの課題を解決できる。

Smart Store技術者プログラム
https://ms-smartstore.connpass.com/

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