さらば赤字部門⁉︎パンの画像を読み取って即会計できるAIベーカリーレジ

2019/04/17 05:00
取材・文/稲垣有紀
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パンの画像を読み取ることで瞬時にお会計ができるAIレジ「ベーカリースキャン」が話題だ。導入店舗は全国300店、500台に達した。レジ打ち店員の省人化が図れるなど、さまざまなメリットがある「ベーカリースキャン」。以下リポートする。

識別率100%をめざすのではなく、2%の部分を人が補助することで、レジ作業をスピーディかつ少人数でこなせる仕組みを開発した
識別率100%をめざすのではなく、2%の部分を人が補助することで、レジ作業をスピーディかつ少人数でこなせる仕組みを開発した

 

特許取得の機械学習のロジックで、4方向・たった3分で登録完了!

 採用している技術は画像のディープラーニングによるものではない。ディープラーニングには多量の画像データが必要になるが、「ベーカリースキャン」の場合、パン1個に付き4方向から数回撮影すれば、特許を取得した機械学習のロジックによってパンの特徴を認識する。

ブレイン・神戸壽代表取締役社長
ブレイン・神戸壽代表取締役社長

 「パンは異なる商品でも茶色く、形は丸いものが多いという共通点があります。また、同じ商品でも焼き色に個体差があります。この相反する特性を識別する技術を開発したのです」(ブレイン・神戸壽代表取締役社長)。

  識別技術自体は10年前に開発したが、さまざまな問題があった。①実験室では明るさのレベル等が一定のため識別できていたが、レジ周りの明るさや色温度は天候、時間により変化するため識別が難しかった、②パンはトレーの上ではくっついているが、非定形的なものが接触したのを識別するのが難しかった、③画像識別技術は100%にはならない――などだ。

  2009年、実験室で98%識別できるようになった。だが、精算は100%の精度でないと困る。そこで、ビジネスチャンスの契機だと考えた神戸社長は、残る2%を人間が補助することにしてシステム開発を行った。

  レジ上の識別認識において、「ベーカリースキャン」が自信のあるパンの画像は緑色で囲み、ちょっと自信のないパンの画像は黄色で囲み、不明なパンの画像は赤色で囲むことにした。

  黄色で囲まれたパンの画像をタッチすると類似商品が表示される。そこで店員さんが商品を選択すれば良い。また、パンの画像が重なっていた場合はハサミのマークを押すとパンの画像が分離されて認識する。従来は店員さんがパンをトングで移動させていたが、パンをいじくりまわすのはお客様の印象が良くなかったからだ。

AIレジがパンの種類を識別する際、自信のあるパンの画像は緑色で囲む。パン同士がくっついている場合は、左上のハサミマークを押せば別々に認識される
AIレジがパンの種類を識別する際、自信のあるパンの画像は緑色で囲む。パン同士がくっついている場合は、左上のハサミマークを押せば別々に認識される

導入コストは180万円~ 省人化、雇用機会創出などメリット大!

 導入コストは180万円~300万円。東芝テックを通じて販売している。導入にかかる時間は短く、導入前日の晩に工事して、導入日の朝に焼きあがってくるパンを次々登録し、昼から稼働できる。

 精度は最初数個を撮影するだけで、識別率は90%になるが、さらに20個程度学習させると98%に達する。

 現在、全国から引き合いが殺到しているほか、中国、韓国などからもオファーが来ているが、先ずは「食品に触れる人はお金に触れてはいけない」という法律ができたドイツに進出する。この秋にはドイツの展示会に出展する予定だ。

 「ベーカリースキャン」を導入するメリットは何なのか。全店で採用している「アンデルセン」の例に挙げると、上野店では従来5台のレジを10人のスタッフで回していたが、導入によって3台のレジを5人で回せば良いようになりレジ待ちも解消された。このような省人化が図れるのが第一のメリットだと言えるだろう。

 また、従来は店員がパンの名前を憶えてレジ打ちするのに1ヵ月かかっていたが、その日入社したアルバイトもレジ打ちすることが可能になった。さらに計算が不得意である知的障がい者やパンの名前を覚えるのが不得意な高齢者の雇用が可能になり、雇用機会を創出した。

 同社では、「ベーカリースキャン」の技術を応用して、1年半前に料理識別レジ「フードスキャン」を開発しているが、5月から外食チェーン店への導入が、6月には大学の食堂への導入がスタートする。

 このほかにお守り、お札を識別する「授与品識別装置」が2年前から靖国神社に、昨年末から明治神宮に導入されている。

 医療現場への利用も進み、今後の展開に目が離せないブレインだ

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