2016年12月に米国でレジレスコンビニ「アマゾン・ゴー」が登場して以来、日本国内においても、「無人店舗」「省力化店舗」をはじめとした、小売の現場で未来のテクノロジーを活用する機運が高まっている。しかし、人手不足問題は深刻さを増すばかりで、小売業界では投資を必要とする未来の店舗の在り方よりも、まず目の前にある人手不足を軽減するための現実的な技術が注目を集めているようだ。(本稿は2019年3月5~8日に開催された、第35回流通情報システム総合展「リテールテックJAPAN 2019」の展示をレポートしたものです)
新しい小売業としての“レジのない店舗”
今回紹介するのは日本電気(NEC)だ。NECが大々的に打ち出していたのは、先端テクノロジーを活用した「無人販売」店舗である。
NECでは、台湾(18年1月オープン)および東京・三田(18年12月オープン)で、省人型あるいは無人のコンビニエンスストアの実験店舗をセブン–イレブンと共同で運営しているが、今回の展示はその先を行くもの。同社の営業先のみ体験可能ということで、「無人販売」店舗を直接、体験することはできなかったが、開発に関わったスタッフに話を聞くことができた。
NECがめざすところは、聞こえのいい「無人店舗」「無人販売」ではなく、小売業の人手不足に対するソリューションであり、社会環境の変化に対応する新しい小売業の提案である。「人がやらなくてもいい作業はITやシステムで置き換え、人がすべきところ(たとえば品出しや、消費期限のチェックなど)は人が行なう」ことを主軸にしているという。
そんなNECが今回提案していたのは「レジのない店」だ。
「お客さまが商品を選んでいるときに、購入しようとしている商品がわかり、カートに商品を入れて店舗を出たときには決済が完了する」(担当者)という。
ただ、第三者的には「商品を手に取っているだけ」にしか見えないので、「何が、どうすごいのか」はまったくわからない。しかし、逆の見方をすると、そのくらい普通の動きのなかで、買物が完了できるということでもある。ちなみに、入店および出店の際には、何らかのかたちで、本人認証のプロセスが行なわれている。
買物カートによるスキャンも同社では開発を進めているが、今回はメーンにはしなかったという。
「テクノロジーに走るのか、現実的なソリューションに向かうのかは各社各様の考え方がある。いずれでも、顧客のニーズやコストバランスを考えたうえで、現実的なものにしなければ、ショールームで終わってしまう。技術を磨きながら、ビジネスマッチングするところを追求していきたい」(担当者)
「巨大自動販売機」に可能性あり?
ところで、NECの展示スペースのはずれに、地味だが意外と現実的な新しい店舗の可能性を発見した。
パネルには「次世代型ロボット店舗」と表示されている。ロボット店舗といっても、日本人の多くが想起するヒト型ロボットが活躍する店ではない。ECと自動倉庫を組み合わせたようなものといえば、イメージが近いだろうか。もっとくだけた言い方をすれば、巨大な自動販売機だ。
大きなモニター画面(注文端末)からPCやスマートフォンでECを楽しむ感覚で商品を選び決済すると、倉庫内をロボットアームが移動、購入商品をピックアップして受取り口まで持ってくる。
展示用の店舗スペース(ほぼ商品倉庫)は、奥行き4.5m×幅1.65m×高さ2mで、たばこサイズなら1万2000個ほどの商品在庫を収納可能。現時点で、奥行きは8mくらいまで伸ばすことができる。ロボットアームは同時に2本稼働可能だ。
展示用のため、商品の入庫口と、購入商品の取り出し口が隣り合わせに設けられていたが、本来、入庫口はバックヤード側、取り出し口は注文端末の下にくる。
この次世代型ロボット店舗は人が入れないようなスペースでも、店舗としての働きを期待できる。現時点での課題は、決済を終えてから商品を取り出すまでに時間がかかること、同時に複数の人が操作をすると、不具合が出る可能性を否定できないこと、などがある。しかし、現状のスタイルであれば、実現可能なところまできているという。
「カスタマーセグメントを間違えなければ、次世代店舗としての可能性は高い」と前出の担当者は話す。