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顧客の潜在需要を開拓するID-POSデータ分析・活用の進化 小売業のメディア化と新たな役割分担

顧客の潜在需要を開拓するID-POSデータ分析・活用の進化  小売業のメディア化と新たな役割分担

株式会社サンキュードラッグ
代表取締役社長兼CEO
平野 健二 氏

 

2007年から潜在需要発掘研究会をスタート

「顧客の潜在需要開拓」、我々がこれをテーマとするようになった背景は、地盤である北九州が日本で最も人口減少が激しいエリアであり高齢化も非常に進んでいる地域であることが挙げられる。コモディティの市場は縮小し、往々にして小売業は販促によって縮小する市場を奪い合う勝者のいない競争に陥り、コスト削減や低価格販売ではもはや生き残れない時代を迎えている。

お客様が自分自身ですら気づいていない需要、「こんなものがある」「これを使えばもっと幸せになる」「楽しくなる」、そういう商品を紹介して、いわゆる欲しいものに気づかないお客様と、作っている商品をお客様にどう伝えて行けばわからないメーカーを結びつける役割を小売業として果たしていく。双方をウインウイン(win-win)にしながらお客様の支持を得ていく。そのような売上には当然利益がともなうので、私たちはビジネスを継続できる。これを目指したいというのが原点にある。

そのために2007年4月に潜在需要発掘研究会を立ち上げた。毎月1回サンキュードラッグからマーケティング部、商品部、店舗運営部、店長などが参加、現在ではメーカーや卸84社が参加して総勢約200人で毎月会議を行い、これまでに170回以上開催してきた。 さらにID-POSのデータを加盟社が開示し活用できるSegment of One &Only(SOO)も立ち上げた。

リアル店舗のメディアとしての特性を検証

潜在需要発掘研究会では、「お客様を知る」ことからスタートし、その主たる手段として ID-POSを活用している。その上で、「お客様にとっての商品の価値は何か」を考える。同じ商品であってもお客様によって、置かれた状況によって求める価値は違う。そしてメーカーは、製品、機能の価値を訴求するが、それを私たちがお客様にとっての価値に翻訳する作業を行っている。どのように価値を伝達するのかターゲット、メディア、タイミング、メッセージ、これを特定し施策を定め、実際にアクションを起こしてデータを基に検証する。 デジタルを活用してまず最初は、リアル店舗のメディアとしての特性を踏まえて検証を繰り返し行った。

アレルギー用ベビーフードの展開結果

例えばアレルギー用のベビーフードのケース。まったく同じ棚割りを40店舗展開したが、AとBのPOPを作り20店舗ずつ分けて掲示した。ところがAのPOPは全く売れなかった。それに対してBのPOPでは販売数量が6割増えた。実はAはメーカーが作ったPOPで、アレルゲンの入っていないことをアピールするコピー。毎日飽きないために様々なレシピを作ったことを訴求するいかにもメーカーの作り手の思いが込められたPOP。

それに対して当社の栄養士が作ったのがBのPOP。おそらくこの中で一番強烈なメッセージは「お子様の喜ぶ笑顔をみたいから…」だろう。アトピーやアレルギーの症状を持った子供のお母さんは、美味しいものをたくさん食べてほしいけど、この子は食べることができない。なんとかしてあげたいというお母さんの気持ちを代弁しているのが、「お子様の喜ぶ笑顔がみたいから~」に込められている。POPはお客様に起こしてほしい行動変容を促すべきで、デジタルで伝えるツールはたくさんあるが、コンテンツ開発が重要になると実感した。

カテゴリー買上率を高めるアプリのドラポンを開発

デジタルマーケティングの体系的アプローチ

売上は来店頻度の関数である。来店頻度が何で決まるかというと来店目的の数が多いかどうかで決まる。買い上げカテゴリー数が来店目的の数を表すので、横軸に買い上げカテゴリー数、縦軸に年間の購入金額をとってみたところ、見事な二次曲線になった。つまりLTV(顧客生涯価値)は来店頻度の二乗となる。来店頻度は来店目的で増える。来店目的は買い上げカテゴリー数で決まる。買い上げカテゴリー数とカテゴリー買上率は表裏一体の関係にある。カテゴリー買上率を上げれば、買い上げカテゴリー数は増える。ということでメーカー、卸、小売りの共通言語を必要としたときにカテゴリー買上率に注目すればいい。そして、買上率を高める仕組みとしてアプリのドラポン!を開発した。

動画配信による価値の伝達、例えばテーピング用テープを買った人にテーピングの仕方を教えると、非常に喜ばれる。当然リピートも増える。でもそれだけではなくて、例えば糖尿病の患者さんを見つけたいと思えば、糖尿病の最新治療といったコンテンツを流せばいい。それを見た方は糖尿病である可能性が高い、あるいは関心が高い、と推定できる。 アプリを活用することで、ID-POSデータ分析とは別のアプローチで潜在的な顧客の需要を発見できることが分かってきた。

デジタルメディアの開発

マーケティングオートメーションも導入し、MA配信による効果検証の取り組みも行い、成果を上げている。今後は、医療機関との連携で調剤データと顧客IDを共通化する取り組みも進めている。さらにお客様からのアンケート(問診)を事前にとって、それを基に電子薬歴、処方箋送信につなげる活動も行っていく。さらにAdsという機能もつけた。位置情報や気候に基づく配信を行っている。さらに2022年度には店舗にAIビーコンを設置し、購買履歴に基づく配信とその効果検証も計画するなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速していく考えだ。

 

各プログラムの詳細

下記画像リンクから、各プログラムの詳細をご覧いただけます。