意外にも台北初出店!ロピア台湾6店舗目「ららぽーと南港店」の売場をレポート
※この記事は、約3か月前にDCSオンライン+会員向けに公開した記事を、フリー記事として再公開しています。
ロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)が台湾での出店攻勢を強めている。2025年3月20日、台北市南港区にグランドオープンした「三井ショッピングパーク ららぽーと台北南港」の地下1階に「LOPIA LaLaport南港店」(以下、LaLaport南港店)を開業した。台北市内初出店、台湾では6店舗目となる。
同店オープンの1カ月半後の5月9日には台中市に2号店を開業しており、23年の台湾進出からわずか2年半で7店舗体制となった。台湾でも急速に存在感を増す同社の台湾6店舗目をレポートする。
成長著しい台北の再開発エリアに出店!
ロピアの台湾1 号店となる「LOPIA LaLaport台中店」(以下、LaLaport台中店)は、23年1月、「三井ショッピングパーク ららぽーと台中」(台中市)の核テナントとして開業した。以降、同年12月に「桃園春日店」(桃園市)、24年2月に「新北中和店」(新北市)、同年6月に「新莊宏匯店」(新北市)、同年10月に「高雄漢神巨蛋店」(高雄市)と矢継ぎ早に出店していった。

ロピアは31年に売上高2兆円を目標に掲げており、その達成に向けて台湾でも出店ペースを加速させている。25年度(26年2月期)は、LaLaport南港店を皮切りに台北に2店舗、台中に2店舗、台南・高雄に3店舗の合計7店舗を開業する計画だ。台北市内のもう1店舗は、市内の中心部に出店する予定だという。
現地メディアによれば、台湾1号店のLaLaport台中店では、開業1年以内に1日の最高売上高400万元(日本円で約1900万円)を叩き出したといい、今や台湾の食品スーパー(SM)業界でも注目の存在だ。
そんな中、満を持して開業した台湾6店舗目のLaLaport南港店は、台北市内初出店ということもあり、立地から品揃え、売場づくりまで、これまでの経験とノウハウを凝縮した都市型モデル店舗となっている。
同店が入居するのは、三井不動産(東京都/植田俊社長)が手掛ける台北初の都市型商業施設「ららぽーと台北南港」。LaLaport台中店に次いで、台湾の「ららぽーと」への出店は2店舗目となる。
「LaLaport南港店はもともと、台湾1号店として開業する予定だったが、コロナ禍と建設工事の大幅な遅れにより、結果的に6号店となった。そのぶん、南港店には特別な思いがある」と、現地法人の台湾ロピアを統括する水元仁志氏は振り返る。
ららぽーと台北南港が位置する台北市南港区は、台湾政府が近年積極的に開発を進めるエリアで、オフィス、商業施設、住宅、コンベンションセンターなど、台北市の新都心としての複合的な街づくりが進んでいる。
店舗までは、「台北」駅から車で約20分、台北地下鉄(MRT)の「南港ソフトウェアパーク」駅から徒歩1分、「南港展覧館駅」から徒歩3分という市内各所からアクセスしやすい立地だ。また、南港区の北部に隣接する内湖区はIT産業が集積するハイテクパークであり、周辺には新興住宅地や大型ショッピングモール、高級ホテルが建ち並ぶ。
店舗から半径5㎞圏内の商圏人口は約70万人、就業人口は約1万5000人を想定。新築マンションの供給も相次ぎ、ファミリー層の流入が進んでいることから、平日・週末ともに多くの集客が期待されている。
ロピアはこの成長著しい立地に目をつけ、地元住民と就業者の双方をターゲットに据えた。平日の日中はオフィスワーカーのランチ、夕方から夜には帰宅途中の買物、週末には家族連れのまとめ買いと、南港区の消費ニーズに幅広い商品群とメリハリのある価格政策で対応していく。
競合には、フランスのSMカルフール(Carrefour)、台湾のSM大手PXマート(全聯福利中心)が迎え打つ。しかし、「おそらく台北のSMでトップスリーに入る売上は出せる」と水元氏は強気の姿勢を見せる。激戦区で勝つためには、“ロピアらしさ”の発信で差別化を進め、いかに地元客の支持を得られるかがカギになりそうだ。
台湾での「2年間の経験」を生かした売場づくり
台湾ロピアは売場面積300坪~500坪を標準とした出店を基本としているが、LaLaport南港店の売場面積は約150坪と、LaLaport台中店の約3分の1しかない。限られた面積の中で競合店との差別化を図るには、ロピアの強みを発揮しつつ、現地の消費ニーズに対応した品揃えが重要になってくる。
台湾ロピアは当初、現地の食の嗜好をなかなかつかめなかったが、24年6月に出店した4店舗目の新莊宏匯店からお客の支持を得られるようになったという。そのきっかけとなった取り組みが、日本の店舗より生鮮食品の比率を高めたことだ。
「日本の食品は現地のローカルSMでも品揃えしているので、最初は買ってもらえてもリピート率が非常に低い。一方で、生鮮食品はリピート率が高い」と、水元氏は話す。
日本のロピアでは通常、入口から青果、精肉、鮮魚、総菜の順で動線設計をしているが、LaLaport南港店では売場トップに日本産のフルーツやロピアで人気のオリジナルスイーツ、サラダなどのチルド総菜を陳列している。開業時は、青森産のりんごや、栃木産のいちご「とちあいか」が並び、大勢のお客でにぎわっていた。

精肉では、A5ランクの黒毛和牛やサーロインステーキ、黒毛和牛リブロースステーキといった日本産の最高級和牛を中心に、店内で調理した和牛の鉄板焼き肉など他店にない品揃えでクオリティを訴求しつつ、コストパフォーマンスの高さもアピールする。

また、昨年秋、新北市に開設した食品加工工場で製造するウインナー、ハム、ベーコンの売場を大きく展開したほか、自家製のローストビーフを台湾で初めて投入した。同工場では、北海道から直接取り寄せた牛乳を使った本格的なチーズケーキも製造する。
そのほか、冷凍食品や菓子を中心にロピアのプライベートブランド(PB)約150アイテムを展開する。

外食率の高い台湾で、新たな食生活を提案!
さらに、総菜をはじめとした即食商品のラインアップの強化にも取り組んでいる。
水元氏は「小さな店舗だが、台北初出店ということで非常に多くの試みを行っている。たとえば、オフィス街ということもあり、台湾ロピアとしては最大級の総菜売場を設けた。台湾のSMの中でも最大規模の品揃えをめざしている」と話す。
入口近くにはロピアの看板商品である特製ピザや、揚げ物や焼きものなどの温総菜、対面販売の寿司バイキング「日本橋魚萬」を並べ、即食需要に対応。近隣で働くワーカー向けに食べ切りサイズのミニピザや、台湾初となる鮮魚の揚げ物、人気の蒲焼きうな重などの丼物も揃えた。



また、にぎり寿司ではマグロ、ほたて、エビ、あなごなど10種類以上を提供する。サーモンの握り寿司は、オープン記念として1貫20元(日本円で約96円)で販売していた。

そのほか、精肉でも簡便商品を充実させている。売場では味付け済みの台湾産の豚バラや鶏もも肉、イベリコ豚のほか、日本でも人気の黒毛和牛の薄切り肉や牛肉の各部位などの焼くだけですぐ食べられる商品がずらりと並んでいた。日本で人気の調味料や焼き肉のたれも同時に展開し、セット購買を促す工夫も目立つ。

このような中食や内食の強化は、外食文化が強い台湾の地で、自宅で食事を楽しむという新たな食習慣を浸透させる挑戦でもある。台湾の外食率は日本の約3倍で、家庭で調理する文化が日本ほど根づいていない。
ロピアは売場を通して、自宅で調理したり、家族で食事をしたりすることが楽しい時間につながり、暮らしを豊かにすることを地道に提案していくという。
水元氏は「台湾に進出したからには、台湾人の食生活の向上がわれわれの使命だと思う。ロピアが出店したことで台湾の人たちの食が豊かになったと実感してもらえるような存在になりたい」と意気込みを語った。
日本を体験できる“食のテーマパーク”
さらに、LaLaport南港店は、SMとしての機能にとどまらず、多様なエンターテインメント要素を融合した「食のテーマパーク」として、買物体験の価値最大化をめざしている。「まるで日本」を体験できるショッピング空間の創造を目標としており、取り扱う商品やサービスは日本品質の追求を掲げている。
たとえば、菓子コーナーの天井近くには日本の店舗と同様に、子供が喜びそうな鉄道模型が走る。店頭には大きなデジタルサイネージが並び、日本に関連した映像のほか、ロピアのオリジナル商品やシーズンごとのおすすめ料理の紹介を流している。そのほか、柱まわり全面には青森の「ねぶた」の絵が描かれている。

5月9日には台湾7店舗目となる「LOPIA台中IKEA店」(台中市)も開業しているロピア。引き続き、百貨店もしくはショッピングモールに300~500坪の店舗を出店し、台湾全土で多店舗化を進め、さらにブランド認知を高めていく計画だ。
将来的には路面店の展開も視野に入れているという。水元氏も「ようやくロピアの名前が浸透してきており、SNSだけでも集客できるようになってきた」と話している。
今後の都市型モデルの試金石とも位置づけられるLaLaport南港店は、台湾の食卓にどんなインパクトをもたらすか。
DCS Report の新着記事
-
2025/12/04
平均日販69万円! 沖縄ファミリーマート、強さの源泉は「地域密着」 -
2025/12/02
“コンビニ一本”で企業価値向上へ セブン&アイの新経営戦略の成否 -
2025/12/01
新PB、出来立て商品……駅ナカコンビニ「ニューデイズ」が新機軸の商品続々投入の理由 -
2025/11/17
利益面に明暗……ライフ、U.S.M.H、アークスの中間決算を解説 -
2025/11/06
トライアルが西友の買収を完了 徹底解説!結局、何がどう変わるのか? -
2025/11/04
年商18億円→35億円に!? コモディイイダ町屋店はなぜ“奇跡”を起こしたか
この連載の一覧はこちら [309記事]
ロピアの記事ランキング
- 2025-11-12ロピア進出機に阪神エリア随一の激戦地に 兵庫・尼崎エリア視察案内!
- 2025-11-11意外にも”共存共栄”? 関西随一の激戦区・西宮の2エリアを徹底視察!
- 2025-11-12地域密着が加速!「ロピア茨木目垣店」の売場を徹底解説!(後編)
- 2025-11-10大型ショッピングセンターに出店! 「ロピア茨木目垣店」の売場を徹底解説!(前編)
- 2025-11-05ロピアが高崎、伊勢崎にほぼ同時出店で群馬上陸!1・2号店の総菜・精肉売場を解説
- 2025-10-31バロー・ロピア・アルビス・大阪屋……名古屋市内の激戦2エリアの見どころを解説!
- 2025-10-29ロピア、ヤオコー、マミーマート……首都圏の新激戦地、千葉・松戸エリアを案内!
- 2024-10-18関西初の「ロピアモール」として出店! 「ロピア北加賀屋店」の売場を解説
- 2025-11-14ロピア進出で市場激変!札幌で今見るべき店=第4回流通クロストークPart1
- 2025-08-28閑散としたSCに活気呼び戻せるか ロピア京都2号店「宇治店」の売場を解説!
関連記事ランキング
- 2025-11-17利益面に明暗……ライフ、U.S.M.H、アークスの中間決算を解説
- 2025-11-12ロピア進出機に阪神エリア随一の激戦地に 兵庫・尼崎エリア視察案内!
- 2025-11-11意外にも”共存共栄”? 関西随一の激戦区・西宮の2エリアを徹底視察!
- 2025-11-12地域密着が加速!「ロピア茨木目垣店」の売場を徹底解説!(後編)
- 2025-11-10大型ショッピングセンターに出店! 「ロピア茨木目垣店」の売場を徹底解説!(前編)
- 2025-11-06トライアルが西友の買収を完了 徹底解説!結局、何がどう変わるのか?
- 2025-11-05ロピアが高崎、伊勢崎にほぼ同時出店で群馬上陸!1・2号店の総菜・精肉売場を解説
- 2025-10-31バロー・ロピア・アルビス・大阪屋……名古屋市内の激戦2エリアの見どころを解説!
- 2025-12-02“コンビニ一本”で企業価値向上へ セブン&アイの新経営戦略の成否
- 2025-10-29ロピア、ヤオコー、マミーマート……首都圏の新激戦地、千葉・松戸エリアを案内!
関連キーワードの記事を探す
新PB、出来立て商品……駅ナカコンビニ「ニューデイズ」が新機軸の商品続々投入の理由
利益面に明暗……ライフ、U.S.M.H、アークスの中間決算を解説
セブン&アイとイオン 国内2大流通グループの中間決算を徹底分析!
意外にも”共存共栄”? 関西随一の激戦区・西宮の2エリアを徹底視察!
【動画】ここでもロピア旋風!「第2次新潟戦争」の行方は=第4回流通クロストークPart2
ロピア進出機に阪神エリア随一の激戦地に 兵庫・尼崎エリア視察案内!
地域密着が加速!「ロピア茨木目垣店」の売場を徹底解説!(後編)




前の記事




早くも3店舗体制に! ロピアの“青森戦略”の成否を現地で考察してみた