開業から1年超のセブン-イレブン「SIPストア」を調査! 新コンセプト店の現状と課題とは

丹羽俊雅
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セブン&アイ・ホールディングス(東京都/スティーブン・デイカス社長:以下、セブン&アイ)が新コンセプト店舗「SIPストア」の1号店「セブン-イレブン松戸常盤平駅前店」(以下、常盤平駅前店)を2024年2月にオープンしてから約1年3カ月が経過した。セブン&アイグループの新たなシナジー創出を図るべく開発された戦略的店舗である開業した同店。1年超が経ち、売場づくりや商品政策(MD)はどのように変化したのか。SIPストアの現状や今後の課題について考察する。※文中の価格は税抜

隣にオーケーが開業、生鮮売場の進化と課題

 まず、「SIPストア」について改めて説明しておこう。「SIP」とは、セブン-イレブン・ジャパン(東京都/阿久津知洋社長)と、イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)が、両社のシナジー創出を図るべく22年に立ち上げた「SEJ・IY・パートナーシップ(SIP)」という枠組みを指す。そのもとでSIPストアは開発され、既存の直営店を増床・リニューアルするかたちで常盤平駅前店を1号店としてオープンした。

セブン-イレブン松戸常盤平駅前店
2024年2月29日に開業したSIPストア1号店の「セブン-イレブン松戸常盤平駅前店」。1階が売場、2階がイートインスペースとキッズルームとなっている

店舗概要
●所在地: 千葉県松戸市常盤平1-20-1
●開店日: 2024年2月29日
●アクセス: 京成松戸線「常盤平」駅から徒歩1分
●売場面積: 約88坪

 売場には、「セブン-イレブン」のMDに「イトーヨーカドー」の生鮮をはじめとする食品や、「ロフト」「アカチャンホンポ」といったセブン&アイグループ各社の商品も投入している。

 もっとも、開業後、セブン&アイをめぐる状況は大きく変化した。イトーヨーカ堂などのスーパーストア事業は中間持株会社のヨーク・ホールディングス(東京都/石橋誠一郎社長:以下、ヨークHD)傘下に入り、25年3月には米投資ファンドのベインキャピタルへのヨークHD売却が決定。

 ただ、セブン&アイはヨークHDの全株式を売却後に株式の40%分を再出資することもあり、SIPストアの取り組みは継続する方針を示している。将来のセブン-イレブン、ひいてはコンビニエンスストア(CVS)のあり方を考えるチャレンジ店舗であることは間違いない。

 常盤平駅前店の開業後に大きく変わった経営環境を踏まえつつ、今回は開業直後に調査を行った1年前との比較を重視した。

 売場を見ていくと、生鮮品はイトーヨーカ堂傘下の食品製造・加工企業PeaceDeli( 東京都/伊藤弘雅社長)からの供給を継続していた。ただ、24年5月に店の隣に「オーケー松戸常盤平店」が開店しており、商品の選びやすさや価格ではオーケーに劣る部分も見られた。

Peace Deliから提供を受けている「刺身用蒸しだこブツ切り(冷凍)」
Peace Deliから提供を受けている「刺身用蒸しだこブツ切り(冷凍)」

 たとえば、青果でりんご1袋4個入り、玉ねぎ大袋といったCVSでは買いづらい量目の品揃えになっているのに対し、オーケーではばら売りで購入できる。精肉、鮮魚売場では簡便・少量商品も展開していたが、ラインアップとしては弱く、全体的に非常に品薄感が目立った。ただ、新たなチャレンジもあり、カットサラダとドレッシングや、炒め物の素などは関連陳列されていた。

 進化が見られたのは、従来のセブン&アイグループの品揃えだけでなく、コンセプトが明確な商品が大幅に増えた点だ。たとえば冷凍食品コーナーではたこ、帆立などの鮮魚の冷凍品のほか、イトーヨーカ堂が開発した冷凍のミールキット「Chef’sRECIPE(シェフズレシピ)」、ロック・フィールド(兵庫県/古塚孝志社長)が展開する冷凍食品ブランド「RFFF(ルフフフ)」など、外食チェーンの中食の冷凍総菜が充実し、選ぶ楽しさが増えている。

ロック・フィールドが展開する冷凍食品ブランド「RFFF(ルフフフ)」の「具だくさんクリームチャウダー」
ロック・フィールドが展開する冷凍食品ブランド「RFFF(ルフフフ)」の「具だくさんクリームチャウダー」

 また、千葉県白子町産の新玉ねぎを使った「わかめとおかかの白子町新玉ねぎサラダ」(238円)など、アイテム数は限られるものの地元を意識した商品開発もみられた。

若年層向けの品揃え拡充も売場づくりに課題

 次に注目したいのが加工食品だ。Z世代をターゲットにした品揃えが拡大し、酒類売場では米国発の人気カクテルブランド「BuzzBallz(バズボールズ)」を数種類扱っていた。また、東京・渋谷のギャルと酒蔵が共同で開発したという日本酒「YUICHU(ゆいちゅ)」は、セブン&アイのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」のフルーツミックスと並べて販売し、「ユイチュポンチ」という食べ方を提案していた。

日本酒「YUICHU(ゆいちゅ)と「セブンプレミアム」のフルーツミックス
日本酒「YUICHU(ゆいちゅ)」は、「セブンプレミアム」のフルーツミックスと並べて販売していた

 ほかにも、レトルトカレーのコーナーでは、旅行情報誌「るるぶ」とカレースパイスメーカー「ハチ食品」のコラボシリーズ「るるぶ×HACHI」で展開するご当地カレーを本棚のように陳列。トレンド商品やコスメ雑貨も拡大していた。

 こうしたコンセプトショップさながらの品揃えは、ターゲット層の若返りを図るという点で効果を発揮するほか、500円以上の価格帯の商品もあることから平均単価アップにもつながりそうだ。

 一方で、従来の主力カテゴリーである総菜類はかなり品揃えが絞り込まれていた。これは徒歩5分圏内に

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