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「肉のハナマサPLUS 押上店」に見る消費者向けの店づくりとは?

花正(東京都/富澤夏樹社長)は「肉のハナマサPLUS 押上店」を東京都墨田区の押上駅前に5月29日にオープンした。同社が2018年から展開している一般客も強く意識した「PLUS」(プラス)業態だ。前編では青果売場と主力の精肉売場などを見た。後編では鮮魚売場をレポートするとともに、同社の売場づくりの方向性について考えてみよう。
視察日=2024年6月29日 ※本文中の価格はすべて本体価格

「肉のハナマサPLUS押上店」は2018年から展開を始めた、一般客にターゲットを広げた「PLUS」業態の最新店だ

鮮魚はファミリー層を意識した容量で

 鮮魚は冷ケース21尺を使用している。刺し身は盛り合わせが3SKU、3点盛りが699円、マグロ入りの3点盛りが899円、6点盛りが1388円の価格設定となっていた。下段のボリューム陳列ではなく、中段のゴールデンゾーンでの展開となっている。そのほかは柵で展開となっており、精肉とは異なり大ぶりなものは少なく、ファミリー層を意識した容量がメインとなっていた。

 また、全体的に縦割りを意識していない棚割りで、丸魚や魚卵、鮭鱒、塩干、加工品などがその日の入荷量に応じて臨機応変に陳列されている。価格訴求アイテムは下段で展開がされているものの、精肉のようなインパクトのある展開はなく、生鮮の中では補完的な位置づけにとどめているようだ。

 丸魚については加工サービスを行う旨のPOPが掲示。冷凍アイテムについては精肉同様、鮮魚売場から離れた加工食品のコーナーでも展開されている。切り身の厚いメカジキなど、要冷の鮮魚とは異なる品揃えを展開し、バリエーションを充実させている。

インド洋産冷凍メカジキの切り身(100g当たり249円)。冷凍品は鮮魚売場から離れた加工食品のコーナーでも展開

多彩なPBが売場の磁石に

 今回の調査でとくに注目されたのがプライベートブランド(PB)の展開である。ハナマサと言えばプロ向けの商品として開発された「プロ仕様」ブランドが中心であったが、種類が拡大している。「肉のハナマサ」「HANAMASA」、他メーカーとのダブルブランド商品に加え、同じ親会社のJMホールディングス(茨城県/境正博社長)傘下のジャパンミート(茨城県/坂本智幸社長)のPBも取り扱っている。

PB「HANAMASA」のあんバター。バター風味のパン生地にこしあんを入れた

 「肉のハナマサ」ブランドではメニュー調味料やチルドレンジアップ商品に加え、かわいいイラストデザインがパッケージとなった菓子なども展開。「プロ仕様」は日配やグロサリーなどの定番商品が多い。そのほかのPBについてはエンドを活用し、大々的に訴求しており、インパクトのある売場となっている。PBは統一感のあるパッケージで、お客を引き寄せる売場のマグネット(磁石)として機能している。調理用途から即食系まで用途の幅が広く、どのように需要を開拓していくのか、注目したいアイテム群である。

PB「肉のハナマサ」のチルドレンジアップ商品「お肉屋さんが作った黒ビーフシチュー」

「簡便・即食」とは異なる強みを出せるか

 スーパーマーケット業界全体で見ると、近年は冷凍食品を充実させ、生鮮食品に対する補完的な役割だけでなく、専門性を高め競争力の源泉とする店舗が増えてきている。また、PBの充実と差別化も競争力を左右する要因の一つとなっている。そして、デザイン性を意識した店内装飾も売場の魅力づくりとして取り組む企業が増えている。

 これらのトレンド要素をハナマサが従来から持つ強みと掛け合わせて、一般消費者も購入しやすい売場づくりがこの肉のハナマサPLUSでは進められている。他店と比較して、容量・サイズは小分けにされているものが少なく、利用する顧客によってニーズに対する満足度が変わる印象を受けた。

 肉のハナマサPLUSの売場づくりは、無理にダウンサイジングするのではなく、ハナマサが持つ強みを生かした方向性をより追求している印象だ。保存の手間をいとわない顧客であれば、使い勝手のよい店になるだろう。品揃えも定番品に絞り込まれており、選びやすい。競合他店が志向するライフスタイルの変化に対応した簡便・即食へのシフトとは異なる展開をハナマサではめざしている。PBの展開を含め、どのように顧客の支持を高めていくのか注目していきたい。

(店舗概要)
所在地 墨田区押上1-12-8 押上一丁目ビル1階
契約面積 約175坪
開店日 2024年5月29日
営業時間 24時間営業
駐車場 なし