ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は2024年5月15日、埼玉県さいたま市に「ヤオコー武蔵浦和店」(以下、武蔵浦和店)をオープンした。自社ショッピングセンター「the market Place」としての出店。売場面積は約2120㎡で初年度年商26億円を見込む。同店では、総菜を中心にヤオコーの新たな商品政策(MD)が多数見られた。ヤオコーの商品開発の最前線をレポートする。
「魚屋の鮨」を展開
導入店では日販14万円
まず、鮮魚売場の対面コーナー導入部で展開していたのが、「魚屋の鮨」コーナーだ。新たな旗艦店の1つとするべく、今年3月に改装した「伊奈店」(埼玉県北足立郡伊奈町)からの取り組みで、店頭で扱う鮮魚の大ぶりのネタと、赤酢を混ぜたシャリを使った寿司を販売する。伊那店では日販で14万円ほどを売り上げるほど好評を得ているという。
24時間店頭で
漬け込む「幸ノ恵」
もう1つ鮮魚売場で実験的に展開していたのが、自家製漬け魚「魚漬屋 幸ノ恵(さちのめぐみ)」コーナーだ。漬け魚は、調味液を表面に塗っただけの商品が多いなか、店舗で24時間漬け込み、味にこだわる商品だ。
西京漬けと粕漬の2種を販売。粕漬では、ヤオコー発祥の地である埼玉県小川町にある酒造の酒粕を使用し、独自性を出している。
玄米を使った
新シリーズ「幸玄米」
総菜売場では、武蔵浦和店からの新たな取り組みとして、「幸玄米(ルビ:さちげんべい)」シリーズを投入していた。白米の代わりに玄米を使用し、健康志向へ対応をするとともに、おいしさも追求したシリーズだ。
「塩糀焼さば玄米弁当」(598円:税抜、以下同)や「玄米の塩糀焼さば味噌重」(550円)といった弁当や、店内手作りのおにぎりで商品を投入している。
店内手作りのおにぎりは、手軽さやコストパフォーマンスから大きく売上が伸長中のカテゴリーだ。武蔵浦和店は売場を倍にして、その増加ぶんのスペースで「幸玄米」のおにぎりを5SKU販売する。好調カテゴリーに健康志向に対応した商品を追加投入し、さらに売上を高める考えだ。
ヤオコー流の
健康MDとは?
健康志向に対応した商品は、ニーズは高まっているものの、大きな売上に結びつくような商品開発が難しいと言われる。そうしたなかヤオコーはどのようなことを意識し、健康志向に対応した商品開発を行っているのか。
デリカ事業部長の奈雲春樹氏は「たとえば、焼さばを塩麹で味付けするなど、既存の原料を生かしつつ健康志向を組み込んでいる。また、健康志向の原料はどうしても価格が上がるが、商品自体の価格は値ごろをしっかり押さえられるように意識している」と述べている。
ボリュームを求める層や
季節感、トレンドにも対応
総菜売場やインストアベーカリーではほかにも新商品を多く投入している。
おにぎりでは、「幸玄米」シリーズのように健康志向の商品を投入した一方で、ボリュームを訴求する「ローストビーフ焼きおむすび」を新たに販売。特製タレに付け込んだ自社製ローストビーフを使用している。
自社工場で製造する総菜「eat!YAOKO」シリーズでは、季節に応じた商品として、これからの暑い時期に支持されそうな「冷やし中華」(398円)や「なすの和マリネさらだ」(298円)を新たに発売していた。
また、人気が高まるアジアン総菜を提供する「味庵」シリーズからは、「割りパン」と呼ばれる中華風蒸しパンに、ボリューム満点の具材を挟んだ「味庵バーガー」を販売。焼き豚や、ヤンニョムチキン、甘酢メンチかつの3種類を展開している(各1パック 298円)。
インストアベーカリーでは、ランチ需要に対応する商品として、ハンバーガーまたはコッペパンを使用したサンドイッチと、スープをセットにした「ベーカリーコンボ」商品を発売している。開店日は「ケバブ&コーンスープ」「タルタルフィッシュ&ビスク」(各398円)を販売していた。
また、最近ヤオコーがインストアベーカリーで充実させているスイーツでは、夏に向けた商品として「わらび餅」を新たに扱っていた。伊奈店に続いての導入で、好評なことから6月中に全店で販売予定だという。
このように武蔵浦和店では、新しいMDが数多く投入されている。その売場から、消費ニーズをとらえた商品開発力や、旗艦店での成功事例をスピーディに水平展開する実行力といったヤオコーの実力を改めて感じた。