体験はコモディティ化しない!FAR EASTに学ぶ「顧客の心の掴み方」

湯浅大輝
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そこにしかない出会い、食の体験をプロデュース

アラビア料理を選んだのは、それが現存する西欧の食文化に影響を与えた「食文化の起源」ともいえる存在であり、「非日常という体験」そのものだと感じていたからだという。

元をたどれば、実演販売で顧客の心を掴むリアルマーケティングを体得してきた佐々木社長にとってはこうしたストーリーを描くことはあくまで日常だ。日本でアラビア料理を出す店は少なく、過剰な宣伝はせずとも一度訪れた客は、その「珍しさ」「怪しさ」に魅せられ、自然と誰かに話したくなる。そうすれば、話を聞いた友人や、SNSを読んだユーザーが話のネタに訪れ、また次に来店する際には新しい誰かを連れてくる、というサイクルが生まれるわけだ。その戦略は見事にハマった。唯一の難点は、アラビア料理に「うま味」が不足していることから日本人の舌に合わないことだった。そこで、フランス料理で使われる、うま味をベースにしたところ、中東の大使館の職員からも「こんな美味いアラビア料理食べたことがない」とお墨付きをもらったという。

CARVAAN

CAARVAANのレシピ開発についてもやはり触れておかなくてはならないだろう。コロナ禍でECサイトでも販売を始めた砂糖を使わないジェラートは、試行錯誤を繰り返して開発したものだ。一般的なアイスクリームに比べて空気含有量が極端に少なく、まるで、果実などの食材そのものを凝縮して味わっているかのような芳醇な味わいだ。佐々木社長自らがヤフーオークションで中古のアイスクリームの機材を買い揃えることから始まり、家族、社員総出で味見や食材の調達など協力した結果、今日の人気商品となっている。

CARVAAN

商品部部長で執行役員の須田典子氏は「基本的にFAR EASTでは『できない』という言葉は使わないことになっている」という。社長の熱“を感じながら、日々、試行錯誤を重ね、「社員一人ひとりがまだどこにもない味(商品)」を探求しているのだ。だから、CAARVAANで接客を受けても料理やその背景にある思いが伝わり、まるでどこか異国を旅して辿り着いたかのような充足感を得られるのだ。

また、近隣にある農園ではホップを育て、自社ビールの醸造を行っている。それだけではなく今年は、オリジナルワインのぶどう栽培も進み、来年にはジンの蒸留所もできる。昨今のコロナ事情から、ノンアルコールビールにノンアルコールワインもレストランでは飲むことができる。

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