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利用しやすさではアマゾン・ゴー越え?ファミマの無人決済店舗実用化1号店は何がすごいのか?今後の展開は?

3月31日、ファミリーマート(東京都/細見研介社長)の無人決済店舗「ファミマ!!サピアタワー/S(サテライト)店(以下:サピアタワーS店)」が、東京都千代田区にオープンした。3月9日に発表された、無人決済システムの開発を行うTOUCH TO GO(東京都/阿久津智紀社長、以下TTG)との資本業務提携による無人決済店舗実用化第1号店となる同店。無人決済システムの仕組みや、ファミリーマートが描く今後の無人店舗の展開についてレポートする。

認識率は95%、普段通りの買物が無人で完結

 今回オープンしたサピアタワーS店は、東京都千代田区・東京駅至近にあるオフィスビル「サピアタワー」の1階ロビーに位置する。同施設内の別階に存在する「ファミマ!! サピアタワー店」のサテライト店という扱いだ。店舗面積は約55㎡、うち売場として使用されているのはおよそ半分程度で、残りのスペースにはコーヒーマシンや電子レンジ、ATMなど一般的なコンビニエンスストア(CVS)の機能を備える。コンパクトな面積に約700種類、通常のファミリーマートとほぼ同じ品揃えを詰め込んだ、スピード重視の買物を求める都心の人々にとっては利用価値の高い店舗になっている。

 無人決済の仕組みは次の通りだ。ゲートを通って売場へ入ると、売場の天井に所狭しと取り付けられた48台のセンサーカメラがお客を追跡。お客が商品を手に取ると、あらかじめ登録された棚割りとセンサーからの情報をもとに、その商品が何かを判断する。そのまま商品を持ってレジの前に立つと、手に取った商品のリストが表示され、合っていればそのまま支払い、もし間違っていればその場で修正することができる。クレジットカードか交通系電子マネー、もしくは現金で支払いが完了するとゲートが開き、売場の外に出ることができる仕組みだ。現在の技術での商品認識率(お客が手に取った商品が正しく判定される率)は95%と極めて高い。

普通の買物と同じように手に取るだけで、商品が自動で判別される。天井にはセンサーカメラが所狭しと並ぶ

 ただし、店舗は完全に無人ではなく、品出しや商品管理のためのスタッフが1名、バックヤードに待機する。レジ周りはコールセンターが遠隔で監視し、トラブルにも対応する。売場にスタッフの姿がないとなると万引きや不正利用などが懸念されるが、TTGの阿久津智紀社長は、「仕組み上、一般的なCVSよりもセキュリティが高いので心配はしていない。過去にオープンした無人店舗の実績では、センサーカメラが大量に設置されていることが抑止力になるのか、通常の店舗よりも(万引きなどの)発生が低い傾向にある」と話す。

無人で酒類の販売も

 無人決済システムを提供したTTGはこれまで、東京都港区・高輪ゲートウェイ駅構内の無人決済売店、豊島区・目白駅構内の無人決済スーパー「KINOKUNIYA Sutto」などに技術を提供してきた。今回、サピアタワーS店に導入されたシステムの特徴は以下の通りだ。

 まず一つめに、無人決済システム利用のための事前登録などが一切不要な点。誰でも通りすがりにサッと利用でき、CVSと相性の良いシステムになっている。また、センサーカメラの改良により一般的なCVSとほぼ同じ密度で商品の陳列を行っても、高い精度で商品を認識できるようになったという。レジスペースも通常に比べてコンパクトで、これまでは出店できなかった狭い敷地にも、無人決済システムによって出店の可能性が広がった。

決済レジの様子。商品を手に持っていると、モニター左側に商品リストが掲示される。ファミマカフェなども、セルフでバーコードを読み取る方式で購入することができる

 遠隔確認によって酒類の販売も行う。お客が酒類を手に取ると、センサーが捉えた画像を元にバックヤードのスタッフが年齢確認を実施。現在のところタバコの取扱いはないが、将来的に酒類と同じ仕組みで販売を開始する可能性もあるという。

 また、CVSという出店スピードの早い業態にシステムを提供するにあたり、以前と比較して導入ステップを合理化、工数や時間を約半分まで短縮したことにも注目だ。

無人決済店舗導入でファミリーマートが描く今後は?

 今回、ファミリーマートが無人決済店舗を導入したねらいは、コロナ禍で高まる非接触ニーズへの対応はもとより、高騰する人件費を抑制する有効な手段を確保することと、マイクロマーケットへの出店に弾みをつけることにある。

 人件費削減については、前述の通り1名での営業が可能になるため、全時間帯で最低でも2名のスタッフを必要とする通常店舗と比べると大幅なコストカットに繋がる。また、ファミリーマートは以前から病院や工場など、いわゆるマイクロマーケットと呼ばれる特定施設内への出店を積極的に進めてきたが、これまではスペースや採算性の問題で出店が難しかった場所にも、無人決済技術の利用によって出店を拡大する方針だ。

 一方、フランチャイズ(FC)店舗の利益増加につなげる考えもあるという。まだ検討段階とのことだが、既存のオーナーが少し離れたところにサテライトとして小規模な無人決済店舗を出店することで、利益の増加を見込むものだ。

 ただ、今後の展開についてファミリーマートは、「第1号店がきちんと運用できるか、問題点は何か、徹底的に検証した上で展開を検討したい」(同社執行役員 ライン・法人室長 狩野智宏氏)と慎重な姿勢を見せた。同社の決済システム「ファミペイ」などが未対応であることなども含め、今後TTGと協力しシステムの完成度を高めていきながら、展開についても検討する考えだ。

 また、ファミリーマートの細見研介社長は、「(無人決済店舗は)コロナ禍で変化する顧客のニーズに対応し、人件費などの問題に対抗する非常に有効な一打となるとみている。ファミリーマートの新たな発展の礎になれば」と期待を語った。