小型店で都市部のプロ市場を深耕、高さ2700㎜の什器で品揃えを実現した「コーナンPRO天神川高辻通店」

ダイヤモンド・ホームセンター誌:森本守人
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通路幅、売場配置を見直す

 前述のとおり、ここ数年、コーナンではプロショップの小型化を進めている。あらためてその取り組みを時系列で紹介しておこう。

 かつて同社が標準的な規模としていたのは面積700~800坪。しかしその広さの物件は、多くは出てこない。そこで以前より小さいサイズがあれば、利用者のニーズに応えられると考えた。

 チャレンジしたのは従来と比べて200~300坪小さい売場面積500坪タイプ。ただし売場を縮めても、その分、取扱アイテム数を減らせば利便性が犠牲になる。つまりワンストップで必要な商品を購入できるコーナンPROの魅力が低減してしまう。そこで規模は小さくするが、品揃えの水準は大きく変えない店舗をめざした。

 そうして出来上がったのが11年4月オープンの「コーナンPRO生野店」(大阪府大阪市)だった。同店では利用客の動線を徹底的に分析、通路幅や売場配置を大きく見直した。

コーナンpro 売場レイアウト
売場レイアウト

 大型資材を買い求めるお客は商品を台車に乗せ、レジまで運んで精算するため一定の通路幅を確保する必要がある。だがネジやクギ、接着剤といった小さな商品の売場回りはある程度、縮めても問題がない。これらを考慮しながらレイアウトを再設計、800坪と同様、約5万アイテムを維持したまま規模を4割近くも小さいフォーマットをつくることに成功する。

 取り組みはそこでは終わらず、さらに小型化を進めた。16年11月の「コーナンPRO吉祥院店」(京都府京都市)は売場面積400坪、19年9月オープンの「コーナンPRO東寺南店」(同)は同300坪で出店した。

 これらの店では通路幅や売場配置だけでなく、什器の高さも工夫。標準的な店舗は1800㎜だが、より高い2100㎜、2400㎜も採用。当初、売場の一部でそれらの高い什器を使ったが、吉祥院店ではすべての什器の高さを2400㎜とした。取扱アイテム数は4万強とやや少なくなったものの、それでも標準店とそん色ない品揃えを実現、来店客からも好評を得た。

青木氏と公庄氏
左:PRO営業部PRO営業グループの青木勝エリアマネージャ

右:コーナンPRO天神川高辻通店の公庄哲也店長

 PRO営業部PRO業態開市)は売場面積400坪、19年9月オープンの「コーナンPRO東寺南店」(同)は同300坪で出店した。これらの店では通路幅や売場配置だけでなく、什器の発グループの八坂健一郎マネージャーは、「今も新店のたびに棚密度を上げるなど試行錯誤を重ねている。今後もムダなスペースを削りながら、今後は売場面積150坪も視野に小型化に挑戦する考えだ」と述べる。

工具、金物、資材を強化

 コーナンが展開するプロショップのうち、最新店の1つが20年11月20日にオープンした「コーナンPRO天神川高辻通店」だ。売場面積は、一昨年に出した東寺南店と同じ300坪タイプ。

 京都府は、コーナンにとって出店強化エリアの1つ。同エリアを担当するPRO営業部PRO営業グループの青木勝エリアマネージャーは「ここ数年、とくに市内では徐々に店舗数を増やしている。どの店も成績がよく、お客さまからの出店要望も多い」と教えてくれた。今回、新たな取り組みは、従来、300坪タイプで使っていた高さ2400㎜の什器より、さらに300㎜高い、2700㎜を導入。これにより約3万2000アイテムを品揃えした。

 順に特徴あるポイントを紹介する。入口から店内に進み、まず目に飛び込んでくるのは奥に向かい真っすぐ伸びる主通路だ。通路を中心とし、その右側には電動工具、金物、左側には各種資材など、今回、強化したカテゴリーの売場を配置。コンパクトな店舗ながら吹き抜け構造であるため、開放感がある。

 電動工具売場でも高さ2700㎜の什器を使っており、これまでの同規模店と比べ約140SKUも多い商品を陳列している。電動のエアー工具も、主通路から見える場所に置くことで、専門性の高さを来店客にアピールする。

 資材では、東寺南店にはなかった商品も多く扱う。鉄筋、骨材、モルタル、砕石などの建築資材などは一例で、それらをまとめたコーナーを特設する。

 入口すぐ左手にある階段で2階に上がってすぐの場所には作業衣料売場がある。1階から2階へと続く階段の壁面にも衣料品を展示しているが、これは2階に来店客の回遊を促す工夫である。

 2階の一角にも、東寺南店にはなかった住宅設備コーナーを設けている。共同住宅向けの洗面台、トイレなどを扱う。このように商圏特性や来店客の購買動向を見ながら、各店で商品構成を変え、店舗網全体で京都エリアの需要に応えようとしている。

 これらの品揃え、売場づくりでプロからの支持獲得をめざす。公庄哲也店長は「お客さまの要望を聞きながら、必要とされる商品を増やしていきたい」と抱負を語る。

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