無印良品 直江津(良品計画)
〒942-0004 新潟県上越市西本町3-8-8 直江津ショッピングセンター2F
電話:025-520-7591
えちごトキめき鉄道「直江津」駅より徒歩10分
良品計画(東京都/松﨑曉社長)は7月20日、新潟県上越市に「無印良品 直江津」(以下、直江津店)をオープンした。2018年3月に増床リニューアルした「無印良品 イオンモール堺北花田」(大阪府堺市:以下、堺北花田店)、19年11月に開業した「無印良品 京都山科」(京都府京都市:以下、京都山科店)に続き、地域と協業した店舗としては3店舗目となる。地元の食材を取り扱うだけでなく、地域活性化のためのさまざまな取り組みに注力した店舗だ。
上越市、地元バス会社と包括連携協定を締結
今回直江津店が出店したのは、「直江津ショッピングセンター エルマール」(以下、エルマール)の2階。上越市に本社を置き、主に路線バスや高速バスの運行を展開している頚くび城き 自動車(新潟県/山田知治社長)が子会社を通じて運営している。同店出店のきっかけは、核店舗「イトーヨーカドー直江津店」が19年5月に撤退したことだ。頚城自動車にとっては、地域活性化に向けた新たなテナントの誘致が喫緊の課題だった。そこで、近年店舗を通じて地域活性化に取り組んでいる良品計画と頚城自動車の理念が合致し、出店が決定した格好だ。
オープンに先立ち、20年1月には上越市・良品計画・頸城自動車の3者による「地域活性化に向けた包括連携に関する協定」が締結された。この協定をもとに、3者はエルマールを地域の中心に据えた地域活性化に取り組んでいく考えだ。
無印初のバスでの移動販売を実施
直江津店の直営売場面積は4934.65㎡で、世界的に見ても無印良品の店舗としてはトップクラスの広さを誇る。同店のコンセプトは「くらしの真ん中」。単に地元の商品を取り扱うだけでなく、地域に役立つ、地域を盛り上げるための新たなコンテンツやサービスに挑戦した店舗だ。
まず、直江津店が地域の中心となるために設置されたのが、地域住民のための開放スペース「Open MUJI」だ。前述した包括連携協定に基づき上越市が後援するコミュニティスペースで、ふだんは休憩や学生の自習に利用できる。そのほか、地元のデザイナーを招いたイベントや展示会、無印良品スタッフによるワークショップなども開催する予定だ。
また、20年8月からは「MUJI to GO」と称した移動販売を実施。頚城自動車の未稼働のマイクロバスを活用し、上越市内の柿崎区や名立区、三和区などの中山間地域を中心に周回する。店舗まで足を運びにくい住民のため、主に日用品やレトルト食品などの生活必需品を取り扱う。
さらに、毎月3と8のつく日に市内で100年以上実施されている「三・八の市」にも直江津店オープン前の5月から出店を開始しており、菓子やティーバッグなど食品を中心に取り扱う。出店者やお客が年々減少するなか、ほかの出店者とともに朝市を活気づけたい考えだ。
そのほか、直江津店では新たな試みとしてキャンプ用品を集積した「M U J ICAMP TOOLS」を設けた。良品計画が新潟県内で運営している「津南キャンプ場」のスタッフがセレクトした普段使いにもキャンプにも活用できる自社商品100アイテムのほか、国内外のアウトドアメーカーの商品も60~80アイテム取り扱う。同時に、災害時に使い慣れた日用品で備える「いつものもしも」の提案も同コーナーで行う。
「スターバックス」など食のテナントを初導入
ここからは、直江津店の食の取り組みについて見ていこう。同店では初の試みとして、カフェチェーンの「スターバックス」、輸入食品を取り扱う「カルディコーヒーファーム」、品質の高いこだわりの和食品を取り揃えた「久世福商店」といった食のテナントを導入した。このうち「スターバックス」は、無印良品の書籍コーナー「M U J IBOOKS」とともに「BOOKS & CAFÉ」を構成しており、無印良品としては最大規模の約3万5000冊を販売する。
これら食のテナントを誘致した理由の1つは、来店頻度の向上だ。「無印良品は、大ファンの方でも来店するのは2週間に1回程度。食の専門店を導入することで来店頻度を高めたい」(直江津店コミュニティマネージャー 古谷信人氏)。
また、直江津店では、160席を備えるフードコート「なおえつ良品食堂」を展開。カレー、ラーメン、丼物、定食、ジェラートなど、世代を問わず気軽に楽しめるラインアップを導入した。
京都山科店ではカレー店以外は地域の専門店がテナントとして入っていたが、直江津店ではすべて直営での運営だ。しかし、一部メニュー開発では地元の専門店のアドバイスを受けたほか、新潟県産の「なごみ豚」など地域食材を使用した料理も提供するなど、地域との協業に取り組んでいる点は変わらない。また、継続して地元の人に通ってもらえるようにリーズナブルな価格に設定。「とん汁ラーメン」や「なごみ豚のキーマカレー」(いずれも税込600円)など、大半が500~800円程度で購入できる。
そのほか、フードコートの隣には「なおえつ良品市場」を展開。上越の旬の野菜や伝統野菜のほか、不揃いや規格外の「わけあって安い」青果も販売する。加えて、上越産の米や発酵食品、乾物、加工食品、地酒など合計約100品目を展開。野菜に関しては、「J Aえちご上越」が運営する農産物直売所「旬菜交流館 あるるん畑」と協業し、商品を仕入れる。
施設全体のバランスを考慮した売場づくり
直江津店は、堺北花田店や京都山科店といった既存の地域との協業店舗とは方向性がやや異なる。これら2店舗は地域との協業をベースとしながらも、生鮮をフルラインで取り扱うなど、あくまで食品の充実に重きを置いていた。それに対し直江津店では、青果や日配品などは一部取り扱っているものの、精肉や鮮魚、総菜などは販売していない。施設内にはすでに地場の食品スーパー(SM)「ピアレマート」があり、「地域の役に立つという目的で出店しているため、SMが困るようなこと(競合する商品を置くこと)はしない」(古谷氏)とのことだ。つまり、食品の充実よりも、地域活性化のために施設全体のバランスを考慮した売場づくりを実施しているのだ。高品質な地場野菜を取り扱うのも、価格訴求型のピアレマートでは販売していないからで、お客から無印良品にない商品の問合せがあれば、施設内のほかのテナントに誘導するという。
売場づくりのほか、コミュニティスペースや移動販売などの施策からは、直江津店が地域活性化に取り組む“本気度”が窺える。同店のコンセプトビジュアルは「田んぼとにしん」。上越ではにしんは食材としてだけでなく、米の肥料としても活用されてきた。直江津店は田んぼに混ぜ込まれたにしんのように、“暮らしの肥料”となりながら地域活性化に取り組む考えだ。
売場フォーカス
なおえつ良品食堂
160席を備える直営フードコート「なおえつ良品食堂」では、無印良品人気商品のカレーのほか、麺類や丼物、定食、ジェラートなど、世代を問わず楽しめるラインアップを導入した
地元食材を使ったメニュー
「なおえつ良品食堂」では、「なごみ豚」を使用した「とん汁ラーメン」など地元食材を使ったメニューや、上越市内で人気の「ジェラート工房 ソンニャーレ」のジェラートを楽しむことができる
無印初のバスでの移動販売
直江津店では、無印初の取り組みとしてバスでの移動販売「MUJI to GO」を実施。レトルト食品や日用品などの生活必需品を取り扱う
地元の朝市に出店
直江津店では、オープン前の5月から毎月3と8のつく日に市内で100年以上実施されている「三・八の市」に出店している(写真はエルマール敷地内に再現した売場)
スタバがテナントとして入ったBOOKS&CAFÉ
無印良品の書籍コーナー「M U J I B O O K S」と「スターバックス」で構成される「BOOKS & CAFÉ」では、約3万5000冊の書籍を取り扱うほか、壁面には地元の有名児童文学作家である小川未明の代表作「赤い蝋燭と人魚」をモチーフとした人魚が描かれている
Open MUJI
直江津店では、包括連携協定に基づく上越市後援のコミュニティスペースとして「OpenMUJI」を設置。ふだんは休憩・自習スペースとして利用できるほか、無印良品スタッフによるワークショップなどさまざまなイベントが開催される予定だ
なおえつ良品市場
上越産の旬の野菜や伝統野菜を販売する「なおえつ良品食堂」は、地元の「JAえちご上越」が運営する農産物直売所「旬菜交流館 あるるん畑」と協業して運営。野菜のほか、地元の発酵食品や米、酒類なども取り扱う
MUJI CAMPTOOLS
キャンプ用品を集積した「MUJI CAMP TOOLS」では、普段使いにもキャンプにも活用できる自社商品100アイテムのほか、国内外のアウトドアメーカーの商品も60~80アイテム取り扱う
雁がん木ぎ通りをイメージした店内
店内の内装は上越産の杉を使用し、「雁木通り」(新潟県でみられる、雪をよけて冬季の通路を確保するために家屋の一部やひさしなどを延長したもの)をイメージしている
レイアウト
店舗概要
オープン日 | 2020年7月20日 |
店長 | 林昌宏 |
営業時間 | 10:00~20:00(なおえつ良品食堂は11:00~20:00、L.O.19:30) |
売場面積 | 4934.65㎡(直営部分) |
アイテム数 | 約7000アイテム(直営部分) |
従業員数 | 約80人(直営部分) |
フードコート | 160席 |
駐車台数 | 711台(SC共用) |