実力派SMチェーンの文化堂が“はみ出し陳列”に力を注ぐワケ

2019/09/23 05:00
矢野清嗣

まとめ
“はみ出し陳列”はスタッフの販売意欲のあらわれ?

 豊洲店は開店して15年目を迎える。オープン当初の店舗周辺は空き地が広がっており、このSCだけが目立っているような状況だった。そこから高層ビルやマンションの開発が進み、周辺は大きく様変わりした。そうしたなかでも、ビバホームと文化堂だけは開店時と変わらぬ活気を保っている。

 周辺には昔ながらの団地もまだ多く、商圏内は年配者が多いと見られるが、来店客の客層を見ると、20~30代や子供連れといった若年層が多い。そうした若いお客が活気をもたらしているのだろう。やはり、人口増エリアの店舗にはエネルギーがある。

 ここ最近、新規オープンした店舗を見ると、「整然とした店」が多い。これに対し豊洲店は、空いているスペースがあれば商品を置き、少しでも多く露出して売るスタイルを徹底している。とくに加工食品、青果の売場でその傾向が強く、雑然とした印象すら感じるかもしれない。

 特売品目も多く、少しでも陳列量を増やそうと試行錯誤し、“はみ出し陳列”を実施するに至ったと思われる。ただそれは商品がよく売れているから成せる技でもあり、スタッフの販売意欲のあらわれであるとも言える。

文化堂

 こうした企業文化が醸成された背景には、創業者の現相談役の後藤せき子氏の存在が大きく影響していると見られる。それを象徴するのが、文化堂の公式HPに大きく掲げられた「スーパーマーケットは食を通じて人々の生活を豊かにする素晴らしい仕事です」という同氏のメッセージだ。

 昨今、お客に向けたメッセージを発信する小売業は多いが、働くスタッフに対してここまでの思いを発する企業は少ないのではないだろうか。働くスタッフは心強く感じるだろう。24歳で独立し、約4坪の菓子店をスタートした後藤氏の歴史と信念を感じる言葉である。

 首都圏で店舗展開するチェーンにとって、最大の課題となるのは「出店」であろう。最近はSM店舗を出店可能な物件が少なくなっている。建築費の高騰なども相まって、出店への初期投資コストも高くなっており、中小チェーンはとくに厳しい局面にある。

 だが、それでも出店していかなければチェーンストア企業としての成長は望めない。文化堂は18年に「スマイルワンフーズ鶴ヶ島店」(埼玉県鶴ヶ島市)、19年に「豊島店」(東京都北区)をオープンするなど直近では年間1店舗のペースで新規出店しているものの、出店が最大の課題となっていることは想像に難くない。この課題を打破するのは難しいものがある。ネットスーパーをはじめ、新規出店に頼らない成長戦略を模索していく必要がありそうだ。

(企業概要)
所在地 東京都品川区二葉4-2-14
創立 1953年
代表者 山本敏介
売上高 220億円(2018年度)
店舗数 東京都内12店、神奈川県7店

(店舗概要)
所在地 東京都江東区豊川3-4-8
開店日 2005年8月
売場面積 約350坪(歩測)
営業時間 10:00~23:00(日曜日9:00開店)
駐車台数 850台(共有)

1 2

関連キーワード:

人気記事ランキング

© 2020 by Diamond Retail Media