握り寿司のジレンマ。総菜でも水産でも作る謎

2019/07/23 05:13
    宮川耕平(日本食糧新聞社)
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     スーパーで寿司を買おうと総菜売場で選んだら、あれ? 魚の売場にもある・・・。 そんな経験はありませんか? スーパーで寿司といえば総菜売場にあるものですが、鮮魚売場にも寿司を並べる店が増えています。総菜にあれば総菜部門、鮮魚のものは水産部門と、作る部門が異なります。それぞれの寿司に、もちろん違いはあります。顧客にとっては寿司のバラエティが広がり、選ぶ楽しみが増える? しかし良いことだけではありません。店にも顧客にも、総菜寿司と鮮魚寿司の並立にはあちらを立てればこちらが立たない・・・そんなジレンマが伴います。

    水産部門が迫られる変化対応

    構成比が下がり続ける鮮魚部門(生鮮4品の売上構成比の推移) 出所:日本チェーンストア協会
    構成比が下がり続ける水産部門(各生鮮部門の売上構成比の推移) 出所:日本チェーンストア協会

     店にとって第一に問題なのは、両部門で寿司がカニバリすることです。合わせて寿司の売上が伸びればよしとしよう・・・。そのあたりが妥協点でしょうか。総菜とカニバリしたとしても水産で寿司をやらねばならない事情が、ジレンマの1つです。そうせずにはいられないほど水産部門の売上シェアは落ちています。

     日本チェーンストア協会(JCA)の暦年統計によると、2006年まで水産の売上構成比は精肉を上回っていました。下記のグラフにあるように、翌07年に畜産・総菜に並ばれ、以降は離される一方です。なお、JCAの統計は衣料・住関連を扱う総合スーパーが含まれていますので、各部門の構成比は低く出ています。

     食品スーパーの業界3団体による統計も傾向は同じです。2018年の調査によると、売上構成比は畜産が11.4%、総菜が10.1%であるのに対し、水産は8.6%です。「魚離れ」や「生鮮素材から総菜へ」という長期トレンドを裏付けています。

     十年来の変化はそれなりに劇的で、水産がもっと強かった頃に比べ、過剰になってしまった設備や人員体制をなんとか活用しなければなりません。新しい売上を創出するカテゴリーが必要で、そのために寿司が注目されるようになりました。魚離れでも寿司の人気は不動ですし、即食できる簡便ニーズにマッチした商品でもあるからです。

     

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