無印良品、相次ぐ事業拡大も多角化ではない理由

宮川耕平(日本食糧新聞社)
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同心円のMUJI

 生活の基本領域といっても、実際には生活のあり様はいろいろで、基本とは何だろうという話になります。無印良品が追求する「基本」とは何か。それが「感じ良いくらし」というコンセプトです。同社はこのコンセプトを説明する表現として、「『これがいい』ではなく『これでいい』」。「アンチゴージャス、アンチチープ」など、さまざまな表現を使ってきました。

図2「感じ良いくらし」を核とする同心円の広がりとして整理すると、良品計画の言う「生活の基本領域」の正しいイメージが見えてくる 出典:筆者作成
図2「感じ良いくらし」を核とする同心円の広がりとして整理すると、良品計画の言う「生活の基本領域」の正しいイメージが見えてくる 出典:筆者作成

 この「感じ良いくらし」という価値基準を共有した広がりが、生活の基本領域となるようです。それは図2のように示せるでしょう。

 「感じ良いくらし」を核とする同心円の広がり。それが良品計画の言う「生活の基本領域」と考えれば、多角化とは違うイメージであると思えてきます。これほど多岐にわたる事業領域が一言のコンセプトでまとまるのは印象的です。しかもコンセプトを具体化した商品は、日本に限らず世界各地に持ち出されています。

 

それでも事業領域は異なる

 多角化ではなく、生活の基本領域という範囲内で欠落部分を埋めるだけだとしても、事業領域が異なることに違いはありません。それぞれに市場があり、競争相手となるプレーヤーも異なります。新領域に進出すれば、それぞれの課題に直面します。

 生鮮・総菜分野は、調達や物流の仕組みを地域ごとに構築しなければなりません。店舗の運営ノウハウも加工食品とは異なるため、イオンモール堺北花田店(大阪府堺市)のスーパー部門の運営は、パートナーに委託しています。ホテルについても、松﨑社長は「直営ではやらない」と明言しており、提携先が必須です。また、ホテルやオフィスなど業務用で販売する商品は、一般家庭用とは異なる品質基準をクリアしなければならないというハードルもあります。

 生活の基本領域の各所で役に立つ商品を供給していく・・・。チャレンジの難しさは多角化の場合と同等かもしれません。

 それでも「感じ良いくらし」として各々が充実してくれば、MUJIブランドの魅力は相乗的に高まるでしょう。食品の充実で来店頻度が増え、他部門の売上増にもつながるといった効果は、すでに松﨑社長が手応えとして挙げるところです。

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