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現役ドラッグストア店員が解説!町田市にオープンしたコスモス薬品「町田根岸店」のここがスゴイ

コロナ禍にあってもなお拡大を続け、8兆5000億円超まで膨れ上がったドラッグストア市場(日本チェーンドラッグストア協会『2021年度版業界推計 日本のドラッグストア実態調査(速報版)』より)。市場拡大にあわせて、ドラッグストア業界ではさまざまな店舗が登場しており、食品強化型のドラッグストアのほか、近年は生鮮食品までを取り扱う「フード&ドラッグ」も勢力を急拡大。足元ではお客の自宅まで取扱商品を届ける「ネットスーパー」ならぬ「ネットドラッグストア」も広がり始めている。
現役ドラッグストア店員の「梨さん」氏が注目ドラッグストアの店舗を実際に訪ね、売場をレポートする本連載。第1回で取り上げるのは、コスモス薬品(福岡県)が東京都町田市に出店したレギュラー店舗「ディスカウントドラッグコスモス町田根岸店」(以下、町田根岸店)だ。現役ドラッグストア店員の目に同店の売場はどう映ったのか。

ディスカウントドラッグコスモス町田根岸店の外観

「三和」のドミナントエリアに出店

 今回、訪れたのは東京都町田市にある「町田根岸店」だ。2021年10月23日にオープンした、最寄りのJR横浜線「淵野辺」駅からバスで20分ほど離れた場所に立地する郊外型店舗だ。支払いは現金払いのみ、クレジットや電子マネーの類は一切使用できない。キャッシュレス決済のコストを極限まで抑え、代わりに商品を毎日低価格で提供するEDLP(エブリデイ・ロープライス)と呼ばれる手法をとっている。

 コスモス薬品の情報を集めていく中で、町田市内にコスモス薬品があると知ったとき、筆者は「なんて無謀な地区に出店したのだろう……」と強く思った。

 町田市内には、町田・多摩中心に店舗展開する「スーパー三和」が数多く出店している。運営企業の三和(神奈川県)は半径1.5km商圏を埋め尽くす“超ドミナント戦略”を志向し、「町田」駅前から住宅街、郊外まで幅広く店舗網を築いており、町田市で暮らす人々に深く根付いている。

 食品の取り扱いを強化し、成長してきたコスモス薬品でも、50年以上地域と寄り添い続けた実績のある三和とこの先競い合っていくのはきっと難しいだろう……と思っていた。食品強化型のドラッグストアであるコスモス薬品は、地域密着型スーパーの三和にどう対抗していくのか、それぞれの店に足を運んでみて得た気づきを分析してみたい。

買物時間が豊かに? 圧巻の冷凍食品売場

 「町田根岸店」を訪れてまず感じたのは、圧倒的な低価格と品揃えの強さだ。コスモス薬品は、ポイントカードシステムを撤廃しているので、浮いたコストを価格に反映しているのがよくわかる。筆者自身、町田周辺に住んでいたことがあるが、売場を見ていて「あれ……三和より安い…」となることもしばしば。地域の暮らしを助ける魅力的な価格設定のため、その場で個人的な買い物もしてしまった(最寄りのドラッグストアよりも断然安かった)。 

 食品については、冷凍食品にとくに力を入れており、店内には大サイズの冷凍什器を8台設置、壁一面を冷凍食品に割いていて、スーパーマーケットに引けを取らないレベルの売場であるように感じた。

 長年ドラッグストアに勤めている経験則から言えば、ドラッグストアの冷凍商品売場はどこの店も小規模であり、取り扱う商品にも限界がある。取り扱う品数も冷凍うどん、チャーハン、パスタ、ギョーザ、ロックアイスを1種類ずつ扱えれば十分、というレベルだった。

 一方、コスモス薬品の「町田根岸店」は、(店内規模がもともと大きいこともあるが)「食品コーナーのメインは冷凍食品です」とアピールするくらいに冷凍食品売場を大きくとっている。注目したいのは、売れ筋に絞って必要最低限の品目を仕入れるのではなく、総菜・チャーハン・パスタ・冷凍うどん・一品ものなどを数種類仕入れている点だ。幅広い総菜ジャンルと品数で勝負しているので、売れ筋以外の商品もしっかりあるし、商品を選ぶ楽しみをつくってくれているので買物時間も豊かになる。小さめのドラッグストアではそうはいかない。「売場が大きい」という店舗特徴を有効活用していて大変好感が持てる食品コーナーだった。

忘れてはいけない、「ドラッグストア」としての機能

 次に気付いたのは生活雑貨の取り扱いの多さだ。キッチン用品のほか、季節品のカイロ、カーペット・布団に敷く断熱マットレス、さらには快眠をサポートする枕まで、寒さ対策関連グッズが豊富に売られていた。

 一方、三和はあくまでも食品スーパーのためキッチンまわりの小物アイテムの取り扱いはあれど、生活雑貨の品揃えはコスモス薬品より乏しいイメージだった。需要はあるが、取り扱いに限界がある生活雑貨は、同じテナント内に入っている服飾店やディスカウントストアなどでカバーしているようだ(参考店舗:スーパー三和玉川学園前店、フードワン森野店 ※いずれも東京都町田市)。

 ここまで食品や雑貨について取り上げてきて少し忘れそうになるが、コスモス薬品はあくまでドラッグストアである。処方せん受付ももちろん行っている。処方せんを渡した後、受け取るまでの待ち時間を店内で過ごせるのは大きなポイントだ。調剤薬局内のイスで黙々と待つ時間を買物時間に当てられ、1日を有意義に過ごすことができる。

 薬・食品・日用品の買い物がワンフロアで済んでしまうのも、お客にとって非常にラクである。効率よく各売場を回ることができるのもコスモスの魅力だ(玉川学園前店とフードワン森野店は別階にディスカウントショップがあり、日用品の買物をする際は階段を使う必要がある)。

 コスモス薬品は元々、九州エリアを中心にドミナント戦略を進め、顧客満足度の向上を強く意識し続けた結果、2021年度に業界4位というシェアを獲得できた。コスモス薬品の「小商圏(商圏人口1万人)を意識した出店戦略」は、競合店である三和の店舗戦略と共通するところがある。

 コスモスも町田市内に2店舗目、3店舗目と出店を重ねていくことで地域の人たちにも認知され、コスモスの利便性や強みも広く知ってもらえるのではないだろうか。今後、“三和一強時代”がどう変化していくのか、町田でのコスモス薬品の進退が気になるところだ。

(店舗概要)
開店日 2021年10月23日
所在地 東京都町田市根岸2-25-4
営業時間 ドラッグストア:9:30〜21:00、処方せん受付:9:30〜19:30(月〜土、日・祝は定休日)
取り扱い商品:医薬品、化粧品、雑貨、食品、酒、たばこ、調剤