購買計画の実態を分析し、消費者の購入決定タイミングをとらえる
第4回(最終回) 分析②カップ麺分析

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カップ麺の計画購買性

 前回でカップ麺は冷凍麺やインスタント袋麺に比べ、非計画購買比率が高く、バスケット内の購買点数を増やせる可能性が高いカテゴリーであるという結果がわかりました。今回はそのカップ麺をさらに細かく分析した結果をご紹介します。


図1:カップ麺 性年代別非計画購買発生理由
(スーパー)
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図2:カップ麺 性年代別使用者構成比(スーパー)
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※QPRはマクロミルの購買履歴データサービス
携帯型バーコードスキャナを使い、モニタからお買物情報を収集した
※使用者:買物の都度、商品単位で「誰のために」購入したのかという情報を取得した

 カップ麺の非計画購買の発生理由を性年代間で比較すると、想起購買は女性40-50代、条件購買は男性40-50代、衝動購買は女性20-30代が高いという結果に(図1参照)。

 

 想起購買が女性40-50代において高い理由としては、夫や子供のためにすぐに食べられるカップ麺をストックしておくといった利用が多いためだと考えられます。

 

 図2はマクロミルのQPR(購買履歴データ)から作成したカップ麺の性年代別使用者構成比(金額)です。QPRでは、買物の都度、商品ごとに「誰のために」購入したのかという使用者情報を「本人」「共有(本人+本人以外)」「本人以外」という単位で取得しています。

 

 カップ麺の使用者構成比を見ると、女性40-50代は他の属性に比べて、カップ麺を「共有」「本人以外」のために購入した比率が高く、自分以外の人が食べることを想定した購入が多いことが読み取れます。

 

 一方で、条件購買の比率が他の性年代と比べて最も高い男性40-50代は、男性20-30代に比べると「本人以外」の比率は同程度ですが、「本人」と「共有」の比率に差があります。男性の若年層に比べると、家族を意識した購買が多い層であることがわかります。家族がいて自由に使える金額が少なく、値引きなどの施策に反応しやすい人が多いと考えられます。

 

 なお、条件購買については、その理由が値引きによるものであった場合、価格が安ければブランドにこだわらず購入するのか、それともお気に入りのブランドが安かった場合に購入するのかを確認する必要があります。特定のブランドの値引きに魅力がある場合は、特売チラシや、クーポンの発行等で店舗の魅力付けにつながる可能性があります。

 

 このように、非計画購買の発生理由は属性によっても差が見られるため、ブランドや店舗の顧客層に合わせた施策を行う必要があります。


図3:カップ麺 非計画購買発生理由別
購入価格帯比率(スーパー)
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 図3はカップ麺の非計画購買の発生理由別の購入価格帯比率を集計したものです。

 

 衝動購買は他の発生理由と比べて、高価格帯での購入比率が高くなっています。商品自体の魅力を買物客に伝えることができれば、価格が高くても購買行動を引き起こすことが可能ということがわかります。パッケージや訴求点に自信のある商品は、安易な値引きはせず、商品の魅力が伝わるような売場作りに注力するべきかと思います。

 

 必要性を思い出して購入する想起購買は、売れ筋価格帯である90円台での購入比率が他の発生理由と比べて高くなっています。想起購買についても、購入決定において価格の影響を受けにくいことがわかります。家庭内のストックとして購入する場合は、購入者以外の方のための購買も多いため、売れ筋の商品を選ぶ傾向があるのではないかと考えられます。

 

 この連載では、購入直後に調査を行うことにより、「購入者」の購入の意思決定のタイミングを捉える方法とその結果の一部をご紹介しました。売上という観点で考えると、「購入してもらうこと」が非常に重要であり、そのためのマーケティング施策をうつためには「購入者」の心理を理解することが必要です。たとえ同一人物だったとしても、商品を実際に使用する「使用者」としての心理と商品を購入する「購入者」の心理は違っていると考えられます。今回の連載が「購入者」を理解するためのデータ分析とマーケティング施策への活用の参考になれば幸いです。

 

購入決定のタイミングを捉える ~消費者の購買計画の実態~

<ポイント>

・計画購買の比率が高いカテゴリーは店外施策、
非計画購買の比率が高いカテゴリーは店内施策に重点を置く。
・店内施策は非計画購買の発生理由の特徴に合った施策を行う必要がある。
・非計画購買の発生理由は属性によっても差が見られるため、
ブランドや店舗の顧客層に合わせた施策を行う必要がある。
参考:(財)流通経済研究所「インストア・マーチャンダイジング」

 

    1. 想起購買:家庭内の在庫切れなど、店頭で商品やPOPを見て商品の必要性を思い出し購入する購買行動
    2. 関連購買:他の購入商品との関連性から店舗内で必要性を認識し、商品を購入する購買行動
    3. 条件購買:来店時には明確な購入意思を持っていないが、値引きなどの条件により店頭で購入意向が喚起され、商品を購入する購買行動
    4. 衝動購買:商品の新規性や衝動により、商品を購入する購買行動

※(財)流通経済研究所「インストア・マーチャンダイジング」より引用

 

※調査条件

・調査パネル:マクロミル MHS(消費者購買パネル)
・調査対象者 :15~59歳男女
・エリア :全国
・業態 :スーパー/コンビニエンスストア
・回答デバイス :スマートフォン
・調査時期 :2017年2月8日~2017年2月22日
・有効回答数 :10416件 ※購入機会数
・対象カテゴリー :スーパー/コンビニエンスストア 各9カテゴリー

 

【プロフィール

株式会社マクロミル

マクロミルは、高品質・スピーディな市場調査を提供する、国内インターネット・マーケティング・リサーチのリーディング・カンパニー。世界13カ国、34の拠点を展開しており、世界に誇れる実行力と、時代を変革するテクノロジーを統合し、唯一無二のグローバル・デジタル・リサーチ・カンパニーを目指している。

(執筆)

リサーチプロダクト本部
パネルデータ事業部 企画グループ
中村彩子

本記事内容やご紹介している調査手法についてのお問合わせは下記ご連絡先まで。
電話番号:03-6716-0720
連絡先:mhs_support@macromill.com

 

 

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