データで見る流通
目的と商品の多様化で広がる「糖質オフ」な食卓

2017/12/15 00:00
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    文=山口 美穂

    大日本印刷包装事業部マーケティング企画本部
    マーケティング部 ライフマーケティングチーム

     

     近年、食品市場において「生活者の健康志向の高まり」に着目して開発された商品が話題を集めるようになってきた。それらの商品をよく見てみると、「カロリーオフ商品」「糖質オフ商品」「減塩商品」などの「栄養の摂取を抑える商品」と、「野菜ジュース」「甘酒」といった「栄養を摂取する商品」の大きく2種類に分類することができる。

     

     このうち前者の食卓出現率の推移を見てみると(図表1)、ここ5年間においては、「糖質オフ商品」と「減塩商品」が好調である。それに対して、「カロリーオフ商品」は2013年度以降やや勢いに衰えが見られ、「カロリーオフ」の時代から「糖質オフ」「減塩」の時代へとシフトしていることがわかる。

     

    健康系諸王品の食卓出現率推移図表1 健康系商品の食卓出現率推移
    ※2012年度を100%とした指数
    ※糖質オフ商品:商品名に「糖質オフ、糖質ゼロ」と入っている商品。減塩商品:商品名に「減塩」と入っている商品。カロリーオフ商品:商品名に「カロリーオフ、カロリーゼロ」と入っている商品

     

     本稿ではこのうち、「糖質オフ」に着目した。生活者の食実態の調査データ「食MAP®※」をもとに、「糖質オフ商品」「主食なし食卓」の2つの切り口から消費の実態を探ってみよう。

     

     まず、糖質オフ商品の内訳を見てみると、そのほとんどを「飲料・アルコール」が占めていることがわかる(図表2)が、近年は「飲料・アルコール以外」も高い伸び率を示している。実際、乳製品、加工肉、麺類やパン類、さらにインスタント食品まで、あらゆるカテゴリーで糖質オフ商品が発売されており、生活者に広く浸透している。

     

    図表2 糖質オフ商品TI値推移
    ※飲料・アルコール以外:ヨーグルトなどの乳製品、麺類、パン類、シリアル、ハム・ベーコン、カップ麺など
    ※TI値:1000食卓あたりの出現数

     

     今後、糖質オフの分野については、既存商品が定着することに加え、さらなるアイテム数の増加が市場拡大のポイントになると思われる。

     

     「糖質オフ」に関連してもう1つ注目したいのが、「主食なし食卓」の存在である。糖質オフを目的として夕食時にご飯やパンなどの主食を摂らない「主食なし食卓」は、この10年の間で増加傾向にある(図表3)。

     

    大人の年代別「主食なし食卓」の推移図表3 大人の年代別「主食なし食卓」の推移
    ※大人:主人、主婦、祖父母、叔父叔母

     

     年代別にみると、07年度は50代と60代以上の比率が高かったのに対して、16年度は若い世代の比率も伸びており、年代を問わず幅広い層で「主食なし食卓」の数が増えていることがわかる。

     

     「糖質オフ」はもともと、50代以上の高年齢層の食卓において、病気の予防や体質の改善を目的として広まった。しかし、近年はメタボ予防からダイエット、アンチエイジングまでさまざまな効果が期待できる食事法と認知されたことにより、若年層の食卓まで拡大したと推測される。また、「ロカボ」(緩やかな糖質制限)という言葉が浸透し、糖質オフがより身近なものになったことも関係しているであろう。

     

     実際に、若年層をターゲットにしたアイスクリームやチルドデザートなどの嗜好品において糖質オフ商品が発売されるなど、商品のバリエーションにも広がりを見せている。糖質オフの目的が多様化するなか、糖質オフがよりカジュアルなかたちに変化してきているのだ。

     

     今後、「糖質オフの食卓」がどのようなかたちで進化・拡大を続けていくのか、引き続き注目される。

     

    ※「食MAP®」とは:食品の購買から調理、消費までをパネル形式で調査した、首都圏30km圏内在住400世帯の食卓データベース。1998年から消費者の毎日の食データを蓄積しており、POSデータ等ではわからない、食生活の実態をとらえている

     

    (「ダイヤモンド・チェーンストア」2017年12/15号)

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