売れる売場のために死筋商品カットや適正売価、適正発注を

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全日本食品代表取締役社長 齋藤 充弘
全日本食品代表取締役社長 齋藤 充弘

ネットワーク型ボランタリーチェーンの新ビジネスモデル

 全日本食品のようなボランタリーチェーンでは中小の加盟小売店が多く、競争激化と景気低迷の時代になってさらなる経営改革が必要になっている。これまで全日食は売れる売場作りを提案してきたが、さらに一歩踏み込んで一緒になって売場を作ろうという活動を推進している。売場改革で重要なのは死筋商品をカットして売筋商品を陳列することであり、その売筋商品を適正な売価で販売し、適正な数量を発注するということに尽きる。全日食では5年ほど前から売れる売場づくりの検討を進めてきたが、2年前からこの方針を定めて加盟店を支援している。

 死筋商品・売筋商品という定義は明確ではないと思うが、全日食では生鮮ならば1日3個、チルドなら1周で3個、ドライは1月3個以下しか売れない商品を死筋商品として排除した。この基準を当てはめてみるとあるSMではチルドとドライ商品で定番在庫は3179SKUあったが、このうちカット提案商品数は1036SKUで33%程度を占めていた。売上で見れば継続提案商品は831万円強で構成比95%、カット候補商品は39万円程度で5%に過ぎない。これを加盟店約600店でみると平均3割の死筋商品を抱えていた。

 逆に売筋商品とはどういうものなのか。1万4326SKUある店舗を例にすると、扱い率が80%以上の商品は444SKU、60%以上の商品は455SKUあった。1000人あたりの売上であるPI値を取ると、売上金額で上位50%未満の商品が最も多く282SKUある。これらをマトリクス化し扱い率が40%以上で構成比が10%未満の商品を超売筋のAA商品とすると55SKU、扱い率が40%以上で構成比50%未満の商品を売筋A商品とすると545SKUあり、合計で600SKUが売筋の合計になる。

 つまり他で扱っていないものは売れないということになる。また、データを分析すると売筋商品の比率の高い店舗は他の商品も入れて客単価も高いという結果も出た。年4回のデータを分析し、死筋商品をカットし導入提案商品を入れた見込みでは、売上期待値が946万円となり売上比109%となる。

 それをどのようにして適正な売価で販売するか。ある醤油のケースでは、原価208円の商品を328円で売ると27日間販売して10本売れる。PI値は0.4で差益は1033円。それを特売で158円にすると58本売れて、PI値は57.7になるが差損は3319円になる。現状では平均売価191円でPI値2.9、差損が2293円となる。それを最適売価を分析することで平均売価216円ならPI値5.2、差損が329円という結果が出る。

 全日食では加盟店のPOSデータを集計し、売価別のPI値のデータから近似値曲線を求め係数bmを売価X乗で計算したグラフを算出しこれを価格弾力性のグラフとして活用している。また、PI値の算出式に提供原価をNを代入することで最適売価が出て、販売価格を指示することができる。ではその商品をどのように発注するのか。全日食では2007年9月から新発注システムを導入し2008年2月頃から効果が出始めた。

 まだ利用している店舗は少ないが、近く全店舗に展開するよていである。これは販売数量を予測していてはどうしてもバラツキが出てくるので、MAX在庫数量として確保する分を計画して発注する仕組みである。新発注システムの数式に安全率や標準偏差など商品ごとの特性値を当てはめで算出する。この自動発注システムを導入した店舗では在庫は23%減少し、売上が22%アップした。在庫が減れば売上が増えるわけではないので、この結果は売れる商品を在庫数を増やすことができたという結果だ。

 これらの新商品施策を実施した店舗では、導入後3カ月でチルドとドライの売上合計は122%に、差益は132%に、差益率が111%に伸びている。

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