スーパーマーケットは成長産業

2012/01/19 18:45

オール日本スーパーマーケット協会会長 荒井 伸也

成熟時代の小売業成長戦略

 

 「小売業」というのは例えば「製造業」や「金融業」という大きな業種に相当する言葉であって、製造業の中に自動車産業や精密機械産業、化学産業などがあり、金融の中には銀行業、証券業、保険業などがある。その点から言えば果たして「小売業成長戦略」というのが正しいのかどうなのか実は疑問に思っている。そして「成熟時代」と言うが、小売業全体が本当に成熟しているのか。見方によれば大昔から成熟しているとも言えるし、また今でも成熟していないとも言える。小売業という大きなくくりではなく業態や取扱品目によって違うというのが私の考えているところで、その中でも業態に注目したいと思う。


 百貨店の売上が大幅にダウンしコンビニが大きく伸びている。なぜコンビニが急成長してきたか。最近ではTASPO効果が挙げられているが、もともとあった街の酒屋や雑貨屋がコンビニに業態を変えていった。それらをコンビニが取って代わり急成長の基盤になった。つまり「昔からある小売業」を代替する「新しい小売業」という業態で成長しているというわけだ。


 では小売業の業態を整理すると、社会的機能から見たときの業態で分ける必要がある。まずスーパーマーケット、食品スーパーは「外食」に対して家庭での食事つまり「内食」を中心にして総合的、ワンストップショッピングに対応した品揃えが特徴である。家から5分、遠くても10-20分程度の距離にあり、ほぼ毎日買い物に行く業態だ。そして2000~3000円程度の買い物をする。そのため100g1000円の牛肉は売れないし、2000円のワインも売れない。そういう商品ではなく日常的な価格帯の商品が揃っている。スーパーマーケットは、生鮮食品を中心とした市場が発展して1930年に米国で誕生した。創始者のマイケル・カレンが「世界一の価格破壊者」を標榜したため「安売り原点説」が定着しているが、それは本質ではない。内食提供が目的だから、それを差別化しようとして独自性を出したりするのはむしろ目的を逸脱した結果になりかねない。


 コンビニはさきほど言ったように、街の酒屋や雑貨屋を代替して成長したが、「日常生活で急に必要になるもの」をワンストップショッピングできるお店。だからビールは冷えたものしか置かないし、歩いているときに急に雨が降れば傘が欲しくなるから置いてある。絆創膏や慶弔袋など急に必要になる商品が常に揃っている。


 百貨店は、100万人の大都市を背景にして5万人の小都市では品ぞろえできない高額・稀少な商品を総合的に扱う業態となる。大都市の限界から客を引き付けることが課題であり、都市の規模が大きくなれば店舗規模を大きくするか稀少性をさらに高めることで吸引力を維持する。5万人の都市で年1個しか売れないものが、100万人の都市では20個売れる。月に2個近く売れるようになれば店舗で扱うことができるようになる。それが百貨店の本質ではないだろうか。百貨店は高品質・高額商品を置かざるを得ないわけだ。


 こうした社会的機能で見てみると、一番はっきりしない存在がGMSとなる。スーパーでもなければ百貨店でもない。結果的に百貨店に近い社会的機能を目指している日本独特の業態である。これは百貨店法で都市百貨店の出店が規制されていたためであり、現在のようにスーパーや専門店などカテゴリーキラーの攻撃にさらされ経営的に厳しくなっている。今、GMSにとって必要なのはコンセプトの明確化だ。


 小売業の扱う商品は約300万点あるという。ワンストップショッピングを可能にするといってもそれだけの商品をそろえるのは不可能である。しかし業態に合わせてワンストップショッピングを実現する手法を考えなければならない。それに必要なのは技術的革新だ。スーパーマーケットでは、最高の鮮度の商品を売場で品切れなく並べておく手法が採用されている。しかし新しい技術を取り入れているスーパーマーケットが全国に普及しているわけではない。この点でスーパーマーケットは成長する余地があるというわけだ。

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