流通業界への提言:店舗流通業態はネット通販にどう取り組むべきか

2012/01/19 18:18

同志社大学商学部特別客員教授 田村 正紀氏

 ネット通販がものすごい勢いで伸びている。経済産業省の調査「電子商取引に関する市場調査」の年度別のデータをみると、ネット通販全体では2005年度に1兆7130億円だったものが08年には2兆9300億円に拡大。個別分野の年平均成長率を見ると、総合が17.5%、衣服・アクセサリーが31.6%、食料品25.8%、医薬化粧品27.5%、スポーツ・音楽・玩具20.6%、その他の家電や家具、自動車・パーツなどが18.5%となっている。この数字で「総合」を商品別に分解し、私の独自のデータを組み入れて将来を予測すると、衣服・アクセサリーは現在の08年の730億円に対して6700億円、食品は2930億円だが2兆円を上回る規模に、医薬化粧品は1720億円に対して1兆5000億円程度などと成長する余地が随分大きいことがわかる。

 

 これが既存の小売店舗にどのような影響を与えるかは明確である。ネット通販のこれまでの年平均成長率が19.6%だが、今後もう少し鈍化するとして15%程度と考えてみる。日本チェーンストア協会加盟社のここ10年の平均成長率は-2.5%であり、日本百貨店協会加盟社の年平均成長率は同様に-3.1%だったことと合わせて、ネット通販は12年に百貨店の売上を上回り、15年以降にはチェーンストアの売上を追い越すことになる。

 

 問題は全体量で抜かれるということだけではない。流通各社の有価証券報告書から分析した売上高に対する損益分岐点の割合でみると井筒屋が106%で超過しており、イトーヨーカ堂でも97.7%、イオンで95.9%ということは昨年対比で5%減収になれば赤字になってしまうということ。ネット通販が成長することで、減収幅が大きくなれば経営が行き詰ってしまうということがわかる。

 

 それを防ぐためにはリアル店舗型のビジネスが中心の業態も、ネット通販というバーチャル店舗型のビジネスを取り入れていく必要がある。そのチャンスは今が最後である。先行した企業は加速度がついている。それに遅れないようにするためには、相当力を入れなければならないというわけだ。しかしネット通販比率を見ると、専門店では、キタムラが5.4%でヨドバシカメラは4.5%と高いが、百貨店に至っては通販先行グループさえ、三越0.5%、高島屋0.3%と1%をはるかに下回っているのが現状だ。なぜそうなったのかは、リアル店舗型ビジネスでは、それと同じスタイルをネット通販にも持ち込もうとして実現できていないから。もともとビジネスモデルに大きな違いがあるということを認識できていない。

 

 たとえば販売管理費の比率をみると千趣会やセシール、ニッセンなどは40%から50%超と非常に高い。非常に高いが回転率の低い商品でも高い粗利を確保している。両者の違いをみると品揃えでは店舗販売はショートテールでネット通販はロングテール、自主開発商品は店舗販売では少ないがネット通販は多い、広告宣伝比率は店舗販売は低くネット通販は高い、物流費は店舗販売が低くネット通販は高い。

 

 ネット通販を展開する最後のチャンスとして、どのような展開方法があるだろう。ひとつは独自ドメインで参入する方法と楽天やヤフーなどのショッピングモールに参加するという方法だ。楽天の物販の売上高は02年度が707億円に対して09年度は8003億円。年平均成長率は41.4%という成長を続けてきた。しかし1人あたり月ベースの購入金額は02年度6916円に対して09年度8583円とそれほど伸びていない。だが年間の平均注文回数は02年度6.7回から09年度は12.7回に増加し、その反対に1回あたりの購入金額は7368円に下がっている。つまり会員数の増加が規模の拡大につながっていることになる。そして参加店舗数が02年度の6180店舗から3万1523店舗と大幅に拡大したことで、ネットワーク効果で1店あたりの売上も向上してくるという現象が起きている。

 

 ただ楽天モールに弱点がないわけではない。ショッピングモールで購入回数が増え認知度が高まると、ショッピングモールから独自ドメインに顧客が流れるという現象も起きてくる。そこでこれからどうネット通販を利用するかという答えのひとつは、ショッピングモールへの出店と独自ドメインを並行して進めるということになる。さらに商品ラインはブランドの強化と定番商品の充実が必要。また、課題となる物流もパッケージ化と定時配送が有効なのは灘生協が事例としてあり、ホーンイン&ピックアップは郊外駅ナカで展開すれば面白いだろう。さらにモバイル販促との連動や、マルチチャネル連動エリアを選定することも重要になってくる。

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