小売業のデジタル化が加速している。オムニチャネル化やビッグデータ活用、IoT、AIといったキーワードが飛び交い、そのキャッチアップに翻弄されているケースや振り回されないと踏みとどまっている企業など“デジタルトランスフォーメーション”のスピード感も様々だ。ダイヤモンド・リテイルメディアでは、2017年8月3日、東京・平河町で「小売業のデジタルトランスフォーメーション~進化する顧客起点のデータ分析・活用戦略の最前線~」を開催した。データ活用により接客品質の向上や業務改革につなげたベイシアの事例や、潜在顧客の発掘で成果を上げているサンキュードラッグの事例を紹介。またSAS Institute Japanは、アナリティクスをベースに流通業の意思決定を支援するシステムを紹介し、会場に詰め掛けた参加者は熱心に聞き入っていた。
【事例講演】
業務改善と生産性向上を支えるテクノロジー活用事例
~データの収集・分析で「お客様目線」を磨く~
株式会社 ベイシア
執行役員 流通技術研究所 所長
重田 憲司 氏
【講演】
「IoT時代のマーチャンダイジングイノベーション」
~小売業界の収益最大化を図った需要予測に必要な要件とは?~
SAS Institute Japan株式会社
ソリューション統括本部 インダストリーソリューション統括部
マネージャー
井上 義成 氏
【事例講演】
小売業の次世代モデルに向けて
~ID-POSとデジタルマーケティングの融合~
株式会社 サンキュードラッグ
代表取締役社長
平野 健二 氏
業務改善と生産性向上を支えるテクノロジー活用事例
~データの収集・分析で「お客様目線」を磨く~
株式会社 ベイシア
執行役員 流通技術研究所 所長
重田 憲司 氏
デジタルの最新潮流としてIoTやAIに注目が集まっている。しかしITはそれをどう使うかで効果を発揮することもあり、また計画性が無ければ無駄な投資に終わる可能性もある。検討しているだけではチャンスを逃す可能性も高い。デジタル活用によりどのように課題が解決されるのか、確かな方針を立ててスピーディに実行することも重要になる。解決すべき課題をはっきり捉えられていれば、それだけデジタル活用による効果も大きい。
現金管理業務の機械化、自動化で効果
ベイシアでは「商業の工業化」を標榜している。チェーンストアとしてロープライス販売をコンセプトとしているが、そのためにはローコストオペレーションを実現する必要があり各作業の生産性を向上しなければならない。それを可能にするための課題は、自動化と機械化、そしてIT化の3つだ。
店舗作業の効率化は、まず商品陳列の効率化、それから什器の有効利用などクレンリネス、自動化による発注と補充の効率化、セルフレジなどの導入によるチェックアウトの効率化とミスの防止、バックオフィスも機械化と自動化による省力化やミスの防止を図っている。
効果を挙げた実例として、現金管理業務には自動釣銭機とともに入出金機を取り入れデータ連携も図った。現在はレジから入出金機で売上金入金・釣銭データ、金種別有高データ、項目別入金データ、操作ログを蓄積。本部それをもとに現金過不足、金種別有高情報、入出金履歴、操作ログを把握するなど現金一括管理に取り組んでいる。
こうした現金管理業務に自動化を取り入れたことで、売上金管理や精算業務の標準化が図れたこと、店舗金庫内現金を全体で2億円削減できたこと、伝票計上作業もWeb発行の徹底による作業を不要にした。また、そうした管理ができたことでパート・アルバイト社員の入社日を統一して各店の人員のばらつきを是正できた。これにより削減効果は、年間約3万6000人時にのぼる。
「何を解決するのか」「なぜ導入するのか」
IT導入による業務改善は、まず目的や目標をはっきりさせること。そして業務を変えるためにITも変わっていき、それを定着させるというサイクルになる。IoTやAIも同様だ。重要なことは「何を解決したいのか」「なぜ導入したいのか」と目的を明確にすること。それができなければ行き詰る。しかも定着させるというハードルは高い。期待値が大きくて、「何かができるのではないか」「なにかがわかるのではないか」というのでは目的に対してKPIが明示できない。つまり費用対効果が説明できずに導入は難しい。風呂敷を広げるのではなく、対象を絞り込むということも必要だろう。欧米では機会損失、つまり「やらないことによる不利益」を重視するが、日本の場合、いろいろなリスクを考えることが多すぎて、結局「やらない」という選択をしがちだ。
そんな中で当社が取り組んでいることのひとつに、レジ待ちの解消があげられる。当社では「レジ混雑予測システム」を現在2店舗で導入している。なかなか認知されなかったが、1店舗目をPOC(概念実証)だと考えて、ようやく2店舗目に進んだ。導入の背景にあるのは、スーパーでのクレームワースト3の中で最も多いのが「レジ待ち」であり約3割を占めているという事実。レジ待ちでストレスを感じることは多く、店舗のイメージも悪化する。ベイシア前橋モール店を例に挙げると、平均買い上げ点数が20点超、会計人数が毎時31人、買い上げ点数の合計が618点となる。買い上げ点数が非常に多く、通常でも他社よりレジ待ち時間が長くなりがちで、それをどう効率化するかが大きな課題だった。
レジの混在を予測してスピーディに対応
レジで「お客様を待たせないことが第一」であることに変わりはない。そのために自動釣銭機を導入しセルフレジも導入した。さらにレジ前司令塔係を配置し、スタッフの多能工化も図ってきた。問題を正確に把握し解決するために取り組んだことは、レジ混雑状況の可視化や混む前にレジを開けること、チェッカー業務の効率化、適切なレジ稼働計画の策定と運用、それから施策の効果測定とそれに対応した行動だ。
レジ待ちを解消する施策として、まず取り組んだのが「混んだら開ける」ではなく「混む前に開ける」。当社の基準として「1+2」を置いた。これは商品登録をしているお客様1人に対して2人が精算を待っている、という状況。これで待っている時間が3分程度になる。まずベイシア佐倉店に導入している。実際に並ばない状況が自然に行われている。
システム導入前、この店舗では有人POS23台、セルフレジ6台であった。月間のチェッカー労働時間は6270時間という状況。調べてみるとウィークデーは時間帯によって1人以下しか待っていないケースが意外と多いことがわかった。そこはレジを開けすぎていて、生産性が低いということになる。これが日曜日になると逆で、どのレジも3人以上待っている状況が当たり前だった。
混雑して来ると、取り掛かっている仕事を止めて応援に入らなければならない。これではうまくいかない。この頃は平均待ち時間は145秒で最大待ち時間は344秒、つまり約6分だった。
当初は戸惑うが運用が定着で効果を発揮
そこでPDAに予測表示を送りレジ開閉の指示を行う仕組みを取り入れた。ベースは当日の入店客数や現在のレジ待ちの状況、それから過去の傾向など。そうしたデータから15分後に備えて「今」必要なレジ台数を予測。さらに30分後に必要なレジ台数も表示するなど、レジ待ちが長くなる前に準備をしておくようにした。そうした指示は「レジ前係」が常時持っているPDAに表示される。
そうした準備をしても指示通りに動けなければ、レジが不足したり無駄に開いている時間が出てきたりということがあった。運用が定着することでレジ待ちの解消につながり、運用開始前に1日6140人の客数に対して「1+2」の達成率が70%だったのに対し、運用後は6113人の客数に対して達成率82.4%でレジに3組以上待たせている状況が大幅に減少した。これにより実際にお客様の待ち時間の減少という運用上の改善効果に加えて、チェッカー人時売上向上、改善効果をデータで把握するなど見える化も実現できた。
「IoT時代のマーチャンダイジングイノベーション」
~小売業界の収益最大化を図った需要予測に必要な要件とは?~
SAS Institute Japan株式会社
ソリューション統括本部 インダストリーソリューション統括部
マネージャー
井上 義成 氏
流通業界にとって需要予測や在庫の最適化は、売上拡大と経営効率化に向けて非常に重要なテーマである。ビッグデータの活用と言われるようになった昨今、従来の「勘と経験」に頼る予測や分析から「データを重視」する傾向がより強まり、データ活用の効果の最大化や効率化にはツールの選定が重要なウェートを占めている。
「顧客理解」中心のソリューションコンセプト
SASがフォーカスしているのは、アナリティクスを「業務とどのように連携させていくことで、収益向上や顧客の獲得につなげていけるか」ということである。
「SAS for Retail」のコンセプトは「顧客理解」を中心に置いており、顧客の様々な情報を分析することで、ライフスタイルやライフステージなどに合わせた需要を把握し、流通業の意思決定を支援するアナリティクスを提供している。
顧客理解というとCRMを想定しがちだが、マーチャンダイジング、サプライチェーン、ストアオペレーション、デジタルコマース、リスク/サイバーセキュリティ、エグゼクティブインサイト、マーケティングなど様々な業務で顧客理解を踏まえた意思決定を支援する仕組みを備えているのが特徴である。
マーチャンダイジングは、店舗のローカリゼーションや顧客ニーズに応じたプライスラインの設定などに活用。サプライチェーンは、マーチャンダイジングやマーケティングと連動した需要予測や在庫計画などを支援。ストアオペレーションの領域は、IoTによりレジ待ちの解消や接客の高度化を実現。デジタルコマースは、顧客体験のパーソナライズやレコメンドの最適化を図る。リスク/サイバーセキュリティは、SASが金融業界向けに培ってきた高度な機能を提供。エグゼクティブインサイトは、従来からの集計管理に予測やシミュレーションの技術を活用したインサイトを提供。マーケティングの領域は、カスタマージャーニーと連動したマーケティング計画・実行や他業務との連携を図るソリューションである。
現在、54カ国で900社以上の流通企業が、SASのソリューションを活用して成果を上げている。
様々な機能をシングルプラットフォーム上で提供
「SAS for Retail」が構成する機能は、顧客の行動に関するデータや小売りの様々な業務を統合して分析できるデータマネジメント、要因分析などを行うデータ探索の機能、売上や来店を時系列で予測する機能、店舗のクラスタリングや顧客セグメントを行うモデリング機能、構築されたモデルを更新して高精度に業務に適用するモデル管理、分析の結果から最適な在庫量などを導き出す最適化エンジン、様々な最適化からビジネスルールや契約条件などと紐付けて業務に反映する意思決定支援の機能、顧客連携などの運用管理の機能、分析の結果を従業員に素早く伝えるレポーティング機能、発注システムなど業務系システムと連携するための機能などを網羅している。
これらの機能は、すべてシングルプラットフォーム上で動かせるのが最大の特徴であり、必要な機能をピックアップしてコンポーネントとして組み合わせていくことができる。つまり、スモールスタートで確認しながらスケールアップしていくことができる。
SAS DDPOで需要予測に関わる問題を解決
需要予測がうまく活用されない理由として、①予測精度の問題、②人/運用の問題、③MDとの適合性、④SCMとの適合性、といった問題があると考え、それぞれに解決の機能を備えている。①の問題は、様々な商品カテゴリや需要パターンに対応した予測手法を取り入れ、需要変動を検知してモデルを再構築、及び自動更新。②ツールによる自動化と高速化、予測ロジックや分析プロセスを可視化、人材育成や外部人材の活用。SASでは経験豊富な人材を擁して支援する体制も構築。③MD実績データの収集・統合、MD効果を予測モデルへ適用。④複数の制約条件に基づいた最適化ロジックの構築や“What-ifシミュレーション”機能を活用。
これらの機能を備えたものが「SAS for Demand-Driven Planning and Optimization(DDPO)」で、DDPOは需要予測をベースとしたMD/SCM全体最適化ソリューションである。
DDPOを構成する製品としてデータ統合やレポーティング、実績管理を行う「SAS Demand Signal Repository(SAS DI Server/SAS Reporting)があり、これをベースにSKU別の需要予測や店舗別客数予測など自動的に行う「SAS Forecast Analyst Workbench」および「SAS Enterprise Miner」、階層間の全体在庫最適化や推奨発注数算出などを行う「SAS Inventory Optimization Workbench」がある。
AIと融合したプロセスで市場の変化にも対応
DDPOを導入しAIと融合した在庫最適化を実現するためのプロセスは、まず需要予測、人による意思入れ、そして在庫最適化という流れになる。需要予測では売上データだけでなく様々なデータを取り込んで有効なデータだけを自動反映。また高度な統計知識がなくても自動的に需要予測モデルを作ることが可能で、拠点階層・商品階層を考慮したワンナンバーの需要予測が行える。
意思入れのプロセスでは、セールやプロモーションによる需要変化を予想する“What-ifシナリオ分析”や需要予測値に対して経験による意思を入れ込むことも可能とした。在庫最適化の段階では、“What-ifシナリオ分析”による欠品率と在庫コストの調整と最適化、そのための推奨発注数を自動作成する。
こうした機能を、店舗クラスタリングから品揃え最適化、在庫最適化、価格最適化といったプロセスで活用している事例もある。データソースはPOSの販売情報や顧客情報、ECサイトアクセス、天候情報なども含めて数多くのデータが存在し、それをDDPOで取り込んでデータ統合、モデリング、時系列予測、在庫最適化などに反映する。例えば、そこから店舗計画や輸送・在庫のコントロール、売場計画や販促計画などマーチャンダイジング全般を網羅した計画策定などで流通業界の業務最適化につなげる。
【特別レポートのご案内】
■ 新製品の需要予測のためのステップ別ガイド
新製品の投入に関する正確な需要予測は、履歴データが足りないことから「従来の時系列手法では信頼に足る予測結果が得られない」という課題がある。SASではデータマイニング、セグメンテーションとクラスタリング、統計予測、特定領域の専門知識、非構造化データの活用による最新のイノベーションによって、新製品の需要予測を最適な意思決定で可能にしたソリューションを提供している。
<特別レポートのダウンロードは終了しました>
小売業の次世代モデルに向けて
~ID-POSとデジタルマーケティングの融合~
株式会社 サンキュードラッグ
代表取締役社長
平野 健二 氏
少子高齢化や将来的に人口減少が顕在化することで、小売りにとってもメーカーにとっても売上アップが非常に難しい状況がより深刻化することになる。ID-POSやデジタルマーケティングの活用をより効果的にするため、「誰が、誰に対して、どのタイミング」で情報を発信しているのかを明確にし、個別のマーケティングや情報配信することが必要になる。それによりローカルの店舗に顧客を誘導することが、市場縮小の中で個店の売上向上、地域シェアアップにつなげていくことが可能となり、メーカーにとっても潜在顧客発掘などで売上貢献するチャンス創出につながる。
ID-POSをどう活用するか
少子高齢化で確実にマーケットは縮小していく。サンキュードラッグが本拠地としている北九州市では人口が毎年0.3-0.4%減少し、また店舗のある下関市では毎年0.6-0.7%減少している。しかも高齢化でモノの消費は減退し続け、さらに高齢者はモビリティの低下で半径500Mより遠い店には行かない。そのためドラッグストアはパーソナルケア商品の育成やリピートによるブランド育成、買上率向上など自ら市場創造し店舗の売上向上につなげていかなければならない。
ID-POSを導入して10年ほどになる。まずフェーズIとしてお客様を知るということがあるが、顧客のデモグラフィーだけではしょせんスモールマスであり、使える範囲が限定されることは極めて初期の発見であった。そこでデータの質的定義が不可欠になる。アクションを起こすために何を知ればよいのかを探求する。しかも赤ちゃんから高齢者までを対象とした幅広い商品を扱っているドラッグストアの特長をどう生かすか。ID-POSのデータから未購買者を発掘し、どのようにカテゴリー新規の需要創造につなげていくかが重要になる。
フェーズⅡの段階としては商品の価値を定義することが必要。商品固有の潜在価値、バイヤーも知らない価値を発見定義し、それが顧客にとってのどのような価値を持つかの表現に変えなくてはならない。価値の属性~モノではなく便益を受ける人、それが「Right Person」=つまりターゲットとして正しい人に届けられているかを分析する。フェーズⅢとして、その人の心に刺さるメッセージを届けられているか、効果的に伝達できるメディアは何なのか、それが正しいタイミングで発信できているかを検証する。
閲覧履歴と位置情報は状況証拠
しかしデジタルマーケティングにはいくつかの課題がある。まず閲覧履歴等から「Right Person」と思われる方に情報を届けたとしても、その方が購買したのかどうかがわからない。閲覧履歴と位置情報は購買可能性の「状況証拠」に過ぎず、購買履歴とのリンクがあって「確証」となる。また「Right Timing」としてもSNSアクセスは「興味」「一過性」のタイミングであって、それが「購買」へ誘うタイミングである必要がある。そして結果として買ったのか、ということを検証するのが難しい。ということは次回購入へのアクションはさらに難しく、買ったのがどのような人かも検証できない。SNSへのアクセスは容易だが、それはタイムリーでなければならない。しかしデジタルメディアは選択的、個別的配信が可能とされながらマスメディアとして使用されているケースが多い、つまりテレビコマーシャルと同じというのが実情だろう。使う側がメディアの特性を生かしていないということになる。
「デジタルマーケティング」とは、お客様それぞれをデジタルにとらえるマーケティング。個別的アプローチのためにデジタルメディアの特性をどう生かすか。我々はID-POSによる購買履歴がありパーソナル・ヘルス・レコードも保有している。これらを選択的・個別的伝達を可能にする媒体と結びつけることで「真のデジタルマーケティング」が成立するわけだ。
「ドラポン!」の機能拡充を計画
ID-POSとデジタルマーケティングを組み合わせることで、様々な外部メディアへのバナー広告配信や郵便番号レベルでの広告配信が行える。ID-POSの購買履歴、閲覧履歴、位置情報から購買後のフォローや購買可能性の高いタイミングの特定も可能になる。また、店舗へのアクセスとして誰が配信するかも重要だ。メーカーから配信することが多いが、お客様はその商品がどこにあるかわからない。しかし小売が配信すれば、その商品がその店に存在している安心感があるから購買率が上がる。つまりデジタルメディアの配信は、地域のローカルチェーンが行うべきなのである。
顧客ID-POS による全国パネルデータの提供とマーケティング研究と実践活動を行っているSegment of One & Onlyの会員企業23社では、「ドラポン!」というサイトを運営している。メインサイトでは興味関心に関するアンケートの実施、潜在顧客の発見、サンプリング・クーポン配信などを行い今年度中にはフォローアップも実施する予定だ。さらにネット通販との連携も今後もありえるし、健康管理サイトとの連携も行う予定だ。
「ドラポン!」は各ドラッグストアの会員だけに配信するサイトだったが、ブラウザ配信することで広く地域の人に届くようになる。とくにローカルチェーンの集合体なので、出店エリアが明確になっており、店舗からの情報発信で商品の所在がわかる。
カテゴリー買上率向上は来店頻度の向上
カテゴリー買上率に注目したところ、その結果にがく然としたケースもある。年間1万円以上購入する人を抽出してみたところ、例えばシャンプーを1度でも購入した人は30数%しかいないという事実もそのひとつ。2度以上の購買はさらに低くなるだろう。そうなるとカテゴリー買上率をアップする施策が必要になる。カテゴリーの買上率を向上させるこということは、顧客軸から見れば買上カテゴリーが増えたということになる。買上カテゴリーが増えれば来店頻度も増える。来店が増えることでついで買いが増え、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は二乗で増える。
カテゴリー買上率をアップするためにサブカテゴリ―、価格帯、顧客セグメント、新たな伝達手段、新発売・シーズン導入期それぞれの買上率を高める取り組みを進めている。分析してみると企業、店それぞれによって課題は違うが、同じアプローチをしてしまっている。汗腋パッドは制汗剤と併売されているケースが多い。しかし実際に同時購入されているのは洗剤。つまり洗濯の時に汗染みを気にしないために、汗腋パッドを購入するケースが多い。たびたび選択しなくて済むように購入しているわけだ。ID-POSのデータをよく見ればそうした事実を新たに発見することもできる。