ダイヤモンド・リテイルメディア・カンファレンス2017
小売業の成長を加速するデジタルイノベーション
「優れた顧客体験価値」の創造戦略

2017/05/12 17:32

オムニチャネルを活用した全体最適の統合マーケティング戦略

株式会社 ココカラファインヘルスケア 販促部 マーケティングチーム マネジャー 郡司 昇氏

ドラッグストアに求められる「友達以上・医者未満」を起点に

 

競争の激しい業界にあって、差別化のためのデジタルマーケティングの実現は非常に難しい課題である。とくに合併・統合で企業規模を拡大したケースでは、従来のECやデジタルマーケティングの再構築という作業が突きつけられる。ココカラファインヘルスケアがまさにそれに当てはまる。オムニチャネル化の中で、もともとEC化率が低いドラッグストアとして顧客接点を何に求め、顧客体験向上のために何を改善すべきか。顧客に対する調査の結果導き出した顧客ニーズ「友達以上・医者未満」を起点にオムニチャネル化を推進する。

 

ECのメリット生かし黒字化図る


株式会社 ココカラファインヘルスケア 販促部 マーケティングチーム マネジャー 郡司 昇氏

 ココカラファインのEC事業は、旧販社時代の2006年にセイジョーでEC事業を開始したことに始まる。しかしココカラファインとなった後もEC事業単独では、ずっと赤字が続いていた。EC事業単独での黒字化を図るため、2013年にEC事業を分社化しココカラファインOECを設立。2014年には第1類医薬品のネット販売を開始、2015年には日本郵便のネットショップに出店した。その2015年度はEC事業として黒字化を達成した年でもあり、翌年分社化を解消して約1,300店舗が所属するココカラファインヘルスケアと統合した。分社化から2015年までEC事業の改善に注力し、3年間で売上高2.9倍以上となり黒字化の要因として販管費率は16.8%減となった。

 

 一般的にECは店舗数も必要なく人件費も比較的かからず高収益と思われがちだが、アパレルのような高単価・高粗利益商品はともかく、ドラッグストアで扱うような低単価・低粗利益商品ではECでの収益は上げにくい。固定費は小さくても変動費が大きく、限界利益率が低くなる。そこで庫内作業効率を改善し、コールセンターの対応の標準化を図り属人性を排除、販売する商品もN個パックといった高単価商材を導入した。

 

 一方ECならではのメリットもある。在庫が店頭にないと売れないリアル店舗に対して、ECは在庫がなくても受注してから納品出荷が可能であり、店舗が閉店している時間帯でも受注ができるため機会ロスが少ない。従来は登録した商品は全てECサイトに掲載し、在庫なし販売を行ってきた。しかし受注してもベンダー欠品で納期が遅れるケースや、そもそも掲載した商品が廃盤というケースもあった。当然、クレームも出てコールセンターの負荷が高まり、顧客満足度も低くなるためリピートが少なくなった。

 

EC事業の収益改善

ドラッグストアとしてサイトも安全・安心への配慮を徹底

 収益改善のために全体最適の視点で、目的から要望、行動・手段まで見直した。「在庫なし販売をする」と「在庫なし販売をしない」という行動・手段は対立の関係にある。要望としてはそれぞれ「売り上げを増やしたい」、「出荷を早くしたい・クレームを減らしたい」であり、これは対立しない。そして要望の共通目的は「顧客満足度を向上し、収益を上げる」という一点である。

 

 共通目的と要望を実現する行動・手段を見直して①商品を特定して、扱いを分ける②需要予測の精度を上げる―売れ筋商品は常に欠品しないように在庫量を監視し、掲載のみの商品はベンダーの供給の可否をチェックして不安定なものは掲載削除するようにした。その結果、48時間以内出荷率は従来の75%から85.8%に高まり、72時間以内出荷率も95.6%を維持できた。

 

 EC事業の改善の一環としてサイトリニューアルをしているが、独自にドラッグストアならではの要素も組み入れた。ひとつは買上点数の制限で、医薬品の場合、長期使用で副作用の恐れがあるので一品一品の成分と添付文書を確認して単品毎に購入点数を制限することにした。医薬品販売のECサイトでは、この制限がないもしくは根拠がないサイトが多い。また医薬品の添付文書はしばしば改訂されて、古い情報の場合は健康被害に繋がるケースもありうる。多くのサイトは、添付文書のテキストやPDFをそのまま貼り付けており、改訂されてもそのままというサイトもある。当社は添付文書専用サーバーを保有し、月1回の頻度で最新版に更新している。こうした安全・安心に対する配慮も徹底するようにしている。

 

顧客の購買行動はオムニチャネル化する

 EC事業を立て直したものの「それだけで良いのか」という疑問が残った。ドラッグストア業界のEC化率は1%以下と非常に少ないが、ECを運営したことで99%の売上を占めるリアル店舗にICTを組み合わせることで新しい顧客価値を提供し、結果として売上アップできるのではないか、と思い始めた。

 

 そこで自分なりに研究し、その結果として①競合に注目するのではなく、顧客に注目するマーケティングが必要②顧客の購買行動がオムニチャネル化していくのは間違いない。小売業のオムニチャネル対応が必須な時代が来る―と判断し、トップも参加する全社会議で繰り返しマーケティングとオムニチャネル対応の必要性を説いた。トップがプロジェクト化して取り組む判断をしたので、米国に出張し先進事例の視察も行った。

 

 その中で感心したのが同じドラッグストアのWalgreensの事例。「ファーマシーチャット」というのがあり、簡単な問い合わせに対して専門家が答えてくれる。夜中の3時に利用したが、丁寧に対応してもらえて感動した。

 

 このケースもあり、オムニチャネル化にあたって考えたことは「ドラッグストアに顧客は何を求めるか」である。これは顧客に「聴く」のが一番早く正確。定性調査として顧客層のグループインタビューで市場インサイトとニーズの把握を行うことで市場理解を深化させ仮説を立てた。また、定量調査としてターゲット顧客になり得る層を探索し多面的にターゲット像を把握する一方で、ターゲット顧客へのアプローチについて考察した。こうした一連の検討作業で得たユニバーサルニーズの一つは「友達以上、医者未満」。ちょっとした変調で医者に行くのは難しい。友達や親兄弟には簡単に相談できるが、医療知識がないので正しい対処法が得られるとは限らない。ドラッグストアならお医者様より気軽に相談できて、友達より正しい対処方法が得られる。その顧客ニーズを満たすドラッグストアになる必要がある。

 

サイトと店舗をつなげる「ココカラアプリ」

 超高齢社会で国民医療費の財政はひっ迫している。軽度の変調なら自分で手当てするセルフメディケーションを広めることは社会の要請である。しかし、例えば効能・効果が「せき・たん」とだけ記載されている一般用医薬品は400種以上ある。その中から消費者がひとつを選ぶのは難しい。つまりセルフメディケ―ションは一般用医薬品がただ並んでいるだけではできない。

 

 店頭なら薬剤師が症状などから判断して、選ぶことができる。サイトではただ並べるだけではなく薬剤師が一品一品の成分を精査したコンテンツを用意することで、体質・症状に合った薬を選んでいただけるようにしている。

 

 ココカラファインの経営理念は「人々のココロとカラダの健康を追求し、地域社会に貢献する」であり、ミッションは「地域におけるヘルスケアネットワークの構築」である。その実現のための手段としてオムニチャネルでの統合マーケティング「いつでも・どこでも・どなたでもココカラファイン」が中期経営戦略の基本方針の一つに入っている。

 

 大事なのは目的と手段を混同しないこと。オムニチャネルは目的ではない。そこで目的(Objectives)、成果物(Deliverables)、成功基準(Success Criteria)のODSCを明確にする。

 

 「いつでも・どこでも・どなたでもココカラファイン」を構築し、様々な接点から最適な情報、商品、サービスを届けヘルスケアにおいて「友達以上・医者未満」の相談相手になることが目的。その成果物としてさらにカスタマーサイト、ECサイト、クラブカード会員サイトを統合した「ココカラクラブ」サイトを創設し、このサイトと同一IDでログインできる公式アプリを提供している。成功基準として中経最終年度に100億円超の売上を達成することなどを盛り込んだ。

 

 「ココカラアプリ」はサイトと店舗を結びつけることを目的に、2016年6月にリリースした。12月には機能強化し、クーポン配信とチェックイン機能を付加した。同時に来店頻度向上と客単価向上につなげるためマイ店舗登録もできるようにしている。

 

 今後も一人ひとりのお客様の顧客体験が向上するようにアップグレードを続けていく。

 

「いつでも・どこでも・どなたでもココカラファイン」の姿

 

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