イズミが自社PB「ゆめイチ」をリリース ”最後発”ならではの深謀とは

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

30年度には累計750品目へ拡大!

 「ゆめイチ」はイズミの成長戦略においても重要な位置づけを担う。イズミは「2030年 長期ビジョン」で、食品スーパー事業300店舗体制の確立をめざしている。24年8月には、九州エリアにおける店舗網を強化すべく、西友から「サニー」の店舗を承継。九州エリアでの店舗網を一気に拡大する一方で、価格競争が一段と激しい九州市場では、「選ばれる理由」がなければ顧客を獲得できないと判断した。

取締役副社長の山西大輔氏(写真中央)と、上席執行役員食品本部長兼PBプロジェクトマネージャー山野正道氏(写真右)、左からPB事業企画部部長鎌田進也氏(写真左)
取締役副社長の山西大輔氏(写真中央)と、上席執行役員食品本部長兼PBプロジェクトマネージャー山野正道氏(写真右)、左からPB事業企画部部長鎌田進也氏(写真左)

 こうした背景のもと開発されたのが、「ゆめイチ」である。山西副社長は、「お客さまから『この商品があるからこのチェーンに行く』と言ってもらえるようなPBを開発しなければ、競争に勝てないと考えた」と説明する。 

 今後PB戦略を本格的に展開していくために、イズミはPBに特化した商品開発組織「PB事業企画部」を9月9日付で新設。 顧客ニーズに即した商品企画・開発のスピードと品質をいっそう高めていく考えだ。

 商品開発ではイズミの強みである“地域対応力”を生かし、エリアごとの嗜好に合わせた商品開発に取り組む。たとえば、醤油や出汁などは求められる味わいが地域によって異なるため、九州なら九州、広島なら広島と、その土地に合わせた商品設計をしていく。

 ゆめイチは25年度中に124品目、30年度には累計750品目へ拡大する計画だ。また、35年度までに食品売上におけるPB(「セブンプレミアム」「くらしモア」含む)の売上高構成比を10%まで引き上げる目標を掲げている。

 イズミはPB戦略において、価格競争に挑むだけでなく品質面でも優位性を確保する姿勢を示している。価格と品質が同時に問われるインフレ時代において、「イズミにしか出せない価値」をどう形にしていくか。同社のPB戦略は、グループの競争力強化のカギを握る戦略として、いよいよ本格始動する。

1 2

記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態