差別化の重要装置「プライスブランド」の設計と開発の手法

桜井 多恵子(チェーンストア経営システムコンサルタント)

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低価格のプライスブランド品の条件

 本連載第5回で述べたように、自社ブランド開発は、複数の種類があるブランドの中で最も影響力のある低価格のプライスブランドから始める。これは、ナショナルブランド(NB)品とほぼ同じ品質を維持しながら、売価を2~3割ほど引き下げたブランドである。

 現状のオーバーストアの中で、同業他社と、そして同一品種グループを扱う他フォーマットとの間で発生しつつある競争に勝つためには、プライスブランドが強力な武器となるのだ。

ビジネス コスト 会議
自社ブランド開発は、複数の種類があるブランドの中で最も影響力のある低価格のプライスブランドから始める(i-stock/ArLawKa AungTun)

 まず開発に取り組む品種と品目を選定し、優先順位を決める。やりやすそうな品目、やりたい品目から無秩序に開発に着手すると、成果が出しにくいからである。

 開発品目の選定は、フォーマットの核となる商品部門の、お客の目的買いが多い品種の中から行う。選定基準は、マス化が可能なことが条件となる。そのため、現状の品揃えの中の売れ筋品目、食品なら1店舗で1日100個以上売れる品目、非食品なら週の販売数量がほかの品目より多く売れる品目を見つけて、その中から候補を選ぶのだ。

 その際にSKU単位ではなく、販売数量を品目に集約してから比較することが重要だ。SKUコードが違っても、お客が同じ用途と認める代替性があるなら、それら複数のSKUは同一品目に属するのだ。売れ筋はSKU単位ではわかりにくいが、品目に集約することで正確に把握できる。これは商品管理の常識である。

 こうして選ばれた候補は、とくに客層が広く、購買頻度が高い品目だ。自社開発のプライスブランドに入れ替えることができれば、そのマスの効果は一挙に増幅する。お客はそれ目当てに自社の固定客となり、買い上げ品目数も来店頻度も徐々に増えるからである。

 売れ筋品目のマス化の影響力は大きい。その本質はプライスブランドの低価格が他社にはない差別化となることである。

 したがって、お客が目的買いをするすべての核商品部門に自社のプライスブランド品がある状態にしたい。だが、

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