商品開発のカギを握る「取引先の選択と変更」の手法

桜井 多恵子(チェーンストア経営システムコンサルタント)
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有利な取引先を発掘し、入れ替え続ける

 原価高騰により値上げが不可避となった今日では少しでも安く商品を調達し、より低価格に値入れすることで他社と差別化したい。そのために自社ブランド開発を軌道に乗せたいのだ。

 その成否を分ける条件は取引先の選択である。本連載第8回「ソーシング活動」で述べたが、有利な取引先を探して選び、取引を拡大することで自社ブランド開発を成功に導けるのである。

食品スーパーの店内 イメージ
商品開発において取引先の開拓と選定は欠かせない取り組みだ。選択肢は多ければ多いほど自社にとって有利になる※写真はイメージgopixa/iStock

 商品開発のみならずバイイングでも同じだが、取引歴の長い既存の取引先が値段を安くするための技術を持っているとは限らない。取引先の取引先も長年固定化していて、新たな商品や材料の調達ルートを開拓していないからだ。だからいくら安くしろと値下げ交渉をしても無駄である。

 したがって、必要な機能と品質を確保しながら仕入れ価格を下げるには、低価格化に熱心で、その実現が可能な取引先と取引をすることが最も有効な手段である。その新たな取引先を選ぶために継続的なソーシング活動を続け、より有利な取引先を次々と発掘して入れ替えていくのである。

 欧米の大チェーンは自社ブランドの産地をしばしば変更する。見かけは同じだが、産地表示を見ると産地国が変わっている。自社ブランド品のバリューを高めるためには努力をいとわないのだ。

 しかも、もともと産地でなかった国や地域を産地に仕立て上げるノウハウを身に付けたから、材料や半製品の移動、そして完成品の物流がスムーズで輸入手続きも簡便にできる。その流れを円滑に進めるために、産地国が友好的に協力してくれるなら産地を創造するという技術を確立したのである。

 もちろん日本の企業がそこまで追いつくにはたゆまぬ研鑽が不可欠だが、まずは取引先の選択に時間をかけるべきである。

 次は品目当たりの取引数量を増やすことを検討する。企業全体の年間または季節間の数量をまとめて大量にするのだ。商品開発は少量ではできることが限られるから、数多く売れる品目を開発の対象として選び、同時に低価格化の実現でさらに販売量を増やせる見込みの品目に取り組まねばならない。

 お客に受け入れられればさらなる大量化が期待できて、本物のマスアイテムに育つはずのものにこそ時間をかける意味があるのだ。

 ちなみに企業規模が小さくても

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