定番商品のブラッシュアップと価値訴求に本腰! セブン-イレブンの最新商品政策の方向性 

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア)
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セブン-イレブン・ジャパン(東京都/阿久津知洋社長:以下、セブン-イレブン)は、2024年2月期下期に価格訴求の販促施策「うれしい値!」を開始して以降、売上・客数が回復傾向にある。26年2月期はさらなる成長に向け、中価格帯の商品を強化する方針で、セブン-イレブン本来の強みである価値訴求型の商品開発を推進するという。また、「セブンカフェ ティー」をはじめとした、新たな顧客体験を創出する新機軸商品の実験にも力を入れる。

低価格戦略で客足回復、今期は中価格帯強化へ

 セブン-イレブンの25年2月期の既存店売上高は、対前期比0.2%増、既存店客数は同0.2%増と微増し、客単価は横ばいだった。全店平均日販は同1000円増の69万2000円となっている。

セブン-イレブン取締役執行役員商品本部長の羽石奈緒氏
セブン-イレブン取締役執行役員商品本部長の羽石奈緒氏

 25年2月期は、上期は売上・客数ともに前年同月割れが多かったものの、24年9月以降は回復し、今期に入ってからも同様の傾向が続いている。その要因として、セブン-イレブンで取締役執行役員商品本部長を務める羽石奈緒氏は、「24年9月に『うれしい値!宣言』を掲げ、低価格帯商品の品揃えの幅を積極的に訴求したことが来店動機につながった」と振り返る。

 セブン-イレブンは、品質を落とさず手頃な価格で商品を提供する施策「うれしい値!」を24年9月より本格的に開始。おにぎりやチルド弁当といったオリジナルフレッシュフードのほか、プライベートブランド(PB)の「セブンプレミアム」、価格訴求型のPB「セブン・ザ・プライス」の総菜や日配、日用品まで広くラインアップした。

 「うれしい値!」の開始以降、従来は来店頻度が下がる傾向にある8月以降も「うれしい値!」の購入者の来店頻度は下がらなかった。また、25年1月の来店客のデータを分析すると、前年同月と比べて男女ともに20代以下の来店回数がほかの年代より多くみられる効果もあったという。

 「うれしい値!」を通じて低価格帯の品揃えの認知が一定数広まったとして、26年2月期は価値訴求を重視した商品開発に専念する。商品政策に掲げるのは「松竹梅の品揃えと基本商品の磨き込み」だ。

 セブン-イレブンはこれまで、付加価値を訴求する高価格帯の「松」、基本・定番商品を扱う中価格帯の「竹」、経済性を重視する低価格帯の「梅」という3つの価格帯による価格政策をとってきた。羽石氏は、「セブン-イレブンの強みは基本・定番商品の品質の磨き込みを続けてきたこと。この本来の強みを生かして、今期は価値提供の商品政策に主軸を置く」と説明する。

セブン-イレブンが注力するカウンター商材
セブン-イレブンが注力するカウンター商材

基本・定番商品を強化、人気カテゴリーを刷新

 今期の商品政策では2つの柱を掲げる。1つめの「基本・定番商品の磨きこみとワクワク感・楽しさの提供」では、まず売上の土台となる基本・定番商品のリニューアルおよび新商品開発で品揃えの幅を拡大する。たとえば売れ筋のカテゴリーのおにぎりについては、販売数が年間5位の「赤飯おこわおむすび」をリニューアル。製造工場にせいろを完備し、専門店と同じ製法に変え、もちもちした食感ともち米の旨味を実現した。

セブンの「赤飯おこわおむすび」
製法を変え、もちもちの食感を実現した「赤飯おこわおむすび」

 23年に販売を開始した「京の米老舗八代目儀兵衛」監修の「こだわりおむすび」シリーズは、新しくブレンドした米を使い、商品を全面リニューアルする。そのほか、販売開始から6年で売上が4倍に伸びている小容量の総菜「カップデリ」シリーズでは、新たに「カップネリ」を開発した。

 同商品は魚を原料とした練り物を使った総菜で、「調理の手間をかけずに魚を食べたい」というニーズに応えるために開発したという。第一弾として「玉ねぎとお魚のおつまみ揚げ」を6月に発売する。新商品投入で、カップデリシリーズ全体のさらなる伸長をめざす。

 こうした基本・定番商品に加えて「ワクワク感・楽しさの提供」にも取り組む。近年は、「推し活」が8000億円超の市場に成長しているほか、ライブ・エンタメ市場も拡大傾向にある。羽石氏は「長期にわたるインフレで節約志向が強まっているが、推し活に見られるようにお客さまは価値があると感じたものには支出する」と分析。節約疲れの反動も見込み、来店動機につながる新商品や話題性のある商品を新たに揃えた。

 具体的には、人気漫画のキャラクターを扱うカプセル玩具の販売や、米アップル傘下のオーディオブランド「Beats(ビーツ)」の充電ケーブルを発売する。Beatsを扱うのはCVSではセブン-イレブンのみで、若年層を取り込みたい考えだ。

 また、インバウンドを中心に売上が伸びている人気のスイーツブランド「シュガーバターの木」から初のアイスクリーム「シュガーバターの木アイス」を開発。こうした新たなラインアップで話題性や「ワクワク感」を演出し、新規顧客の獲得につなげる。

セブンで販売している「シュガーバターの木アイス」
「シュガーバターの木」初のアイスクリーム「シュガーバターの木アイス」

 商品政策のもう1つの柱は、「セブンプレミアムの進化」だ。セブンプレミアムは、24年2月期にグループ累計売上が15兆円を突破し、25年2月期も過去最高の売上を記録した。その成長を支えているのは

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ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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