イオンリテール(千葉県/井出武美社長)は現在、「イオン」や「イオンスタイル」における「住居余暇」カテゴリーの販売に力を入れている。プライベートブランド(PB)の「トップバリュ ホームコーディ」(以下、ホームコーディ)を強化し、同カテゴリーの売上を伸ばすねらいだ。イオンリテールは26年2月期に向け、住居余暇売場のうち家電を除く「ホームファッション」カテゴリーに占めるホームコーディ商品の割合を現状の約45%から65~70%まで引き上げるとしている。同社は商品開発部門の人材を増やし、開発体制の強化を図る。
開発コストの削減が可能に
ホームコーディは「家具」「インテリア雑貨」「寝具・寝装品」「キッチン用品」「生活雑貨」「アウトドア用品」「家電」など約1600アイテムをラインアップするPBだ。80年代に旧ジャスコ(現イオン)のPBとして発足し、00年代に現ブランドに変更、各カテゴリーを集約した。現在、全国の「イオン」「イオンスタイル」などで販売している。
商品を開発する部署は100人弱が在籍、商品の開発には約30人が携わり、製造の上流部分である生産プロセスに精通した専門技術を持つ人材をそれぞれのカテゴリーに配置している。「木製品」が1人、「繊維」が2人、「プラスチック」が1人、「家電」が2人、全体を統括するリーダーが1人の合計7人が商品開発を担う。
各業種のメーカーなどから中途入社したというこの専門の人材が、商品開発をするうえで品質と生産効率の向上を可能にしている。イオンリテールの住居余暇本部ホームコーディ商品部の小河豊部長は、「専門人材は事務的な品質管理だけではなく、実際に工場まで訪問して生産工程に関与している。無駄な工程を減らし、開発スピードを上げることがコスト削減にもつながっている」と話す。
たとえば、専門人材が素材の品質を確認し、商品の歪みや強度不足などの不具合を把握、問題があれば設計段階で修正する。以前はサンプルを作成するまで不具合の有無がわからなかったが、その工程を省略することでコスト削減を実現しているという。また、同人材による原材料の見直しも積極的に行うことで商品の品質向上につなげている。
木製品の「ソファ前こたつ」(税込3万8280円)は、そうした過程を経て開発された商品だ。開発過程では、家具としての質感を高めるために旧型モデルから天板の材質を変更したほか、近年需要が高まっている「TYPE CのUSBポート」を新たに備え付けた。各種コストの上昇があるなか、これらの改良を加えながらも価格は旧型モデルから据え置いている。
今後の課題となるカテゴリーは、売場でメーカー商品の構成比率が高いアウトドア用品などだ。小河氏は「まだ専門的な人材を用意できていないカテゴリーが残されている。どのカテゴリーも商品開発において特別な技術や知識を必要とする商品が多く、ノウハウを持った専門家がいないと開発が難しい。今後も人材採用に力を入れていきたい」と語る。
開発方針の2つの軸
ホームコーディの商品開発は、付加価値型と価格訴求型の2つの軸で行っている。付加価値型では消費者の需要を汲み取った高機能な商品を、価格訴求型はシンプルな設計の商品を打ち出す。
それぞれの開発工程について小河氏は「付加価値型は、店頭で吸い上げたお客さまの意見をもとに潜在需要を探る。価格訴求型は、ナショナルブランド商品や素材の相場観を把握し、商品の価格を決めてから生産ロス削減のためプロセスを見直し、商品スペックを検討する」と話す。
付加価値型の例は、「寝具・寝装品」カテゴリーの商品だ。同カテゴリーでは疲れをとったり快眠を促進したりする商品を重点的に開発しており、とくに人気の商品が、夏の夜でも涼しくて寝やすい寝具「置くだけ簡単 アイスコールド 敷パッド」(税抜4480円)だ。同カテゴリーは売場に占める商品構成比がとくに高く、ホームコーディが80~90 %、メーカ―商品が10~20%となっている。
付加価値型の例としてはほかにも、「テーブルウェア」カテゴリーから、時勢によって変化する食生活や、旬の食品の調理に対応した食器を打ち出している。コロナ禍では内食需要の増加を受け、7種類のグラタン皿をラインアップするなど食器類を充実させた。
ホームファッション以外に展開している「家電」もイオンリテールが注力するカテゴリーの1つだ。ホームコーディの家電は基本的に価格訴求型の位置づけで、高機能化が進む大手メーカーの商品とは異なり、シンプルな機能で低価格な商品をラインアップする。たとえば、必要最低限の機能のみを備えた「フラット単機能電子レンジ18L」(同1万4800円)は、使いやすいシンプルなボタン設計が特徴だ。
一方で、メーカー商品にはない特殊な性能を加えた商品もある。機械が苦手な人向けに開発した音声つきの炊飯器は、高齢者を中心に人気だという。ほかにも、「LEDシーリングライト(調光調色)」は入眠しやすい環境を整えるためのタイマー機能「おやすみシーン」を搭載しており、ボタンを押すと徐々に暗くなり約60分かけて常夜灯に変化するという特殊な機能が備わっている。
24年2月期におけるホームコーディ商品の売上目標は対前期比30%増で、中期経営計画の最終期となる26年2月期までに対23年2月期比で2倍の売上高をめざす。