健康サプリメントの市場が動き出している。中でも脚光を浴びているのはミツバチが作る健康素材のプロポリス市場である。そのパイオニアで、専業メーカーである富士見養蜂園(埼玉県/角田陽介社長)が打ち出す新機軸を見ていきたい。

特許取得「超臨界抽出プロポリス」とは
プロポリスとはミツバチが種々の植物の新芽、樹脂やつぼみをかみ砕いて得た物質に、ミツバチの自身の分泌物、蜜ろうなどを混合して作り出す粘着性のある樹脂状の物質のこと。ミツバチはプロポリスを巣の壁や出入り口などに塗りつけ、巣内の補強や修理を行い、外敵からの侵入を防ぐ。また抗菌作用により、雑菌の繁殖を防ぐことで巣の中を清潔に保ち、感染に弱い幼虫を保護するのに役立っている。
安定成長を続けるプロポリスの国内の市場規模は約300億円。世界中で拡大している。富士見養蜂園はプロポリスをはじめとした蜂産品と薬用キノコであるオーガニック霊芝(れいし)の原料を製造・販売している。
角田陽介社長は「富士見養蜂園の特徴は1991年に製法特許を取得した『超臨界抽出プロポリス』を持っていること。プロポリス、ローヤルゼリー、ハチミツなどの養蜂生産品のサプライヤーとして原料管理に徹し、高い品質と迅速な出荷を提供している」と話す。
富士見養蜂園は2024年12月にナガセヴィータ(岡山県/安場直樹社長、旧社名・林原)からプロポリスの原塊と製造技術情報を譲り受けることで合意。今後は富士見養蜂園がプロポリスの原塊を引き継ぎ、製造と原料供給を行う。
超臨界抽出プロポリスは、プロポリスに含まれるテルぺノイドや芳香成分を効率良く摂取できることが特徴。同社は世界初の超臨界抽出技術で加工したプロポリス原料を提供している。
同社は特許技術をベースに①超臨界抽出プロポリス末、②超臨界抽出プロポリス油、③超臨界抽出プロポリス包接体、④超臨界脱脂プロポリス抽出液など―の原料を供給している。
100社以上からOEMを受託
富士見養蜂園は今、OEM(相手先ブランドによる生産)事業に力を入れており、すでに100社以上の健康サプリメント企業と取引している。最近は異業種からの参入も徐々に増えているという。
原料メーカーとして富士見養蜂園がOEM事業として製造を受託するうえで、相手先企業のポイントをいくつか挙げている。
- 異業種で健康サプリメントの商品開発を立ち上げる会社の場合、まずは安定した健康素材を扱うことが無難だ。扱う健康素材の成長率をどこまで見込めるかがカギになる。
- 健康サプリメントのマーケット事情に詳しい情報を蓄積している会社と組むこと。現場をリサーチし、売れ筋をはじめとした最新情報が重要だ。
- 商品開発を展開する上で重要なのは、小ロット対応ができるかどうか。市場に出してからの様子を見なければ、採算が取れるか否かはわからない。少量多品種の時代だけに小ロットの商品開発が条件になる。
- 商品開発で今いちばん重要なことは本物かつ安全な商品を最優先すること。そのためエビデンス(科学的根拠)を重視し、市場に出回った実績、ブームの変化など、過去の歴史とマーケット事情を徹底研究することが大切だ。
角田陽介社長は、『プロポリスエビデンス』という独自の考え方、独自の定義を定めるために、社内に研究チームを発足させた。
「当社は高品質のプロポリスの原材料の提供と特許の製造技術を持つ会社という特徴をアピールしている。オリジナル商品の開発もしており、原材料メーカーと健康サプリメントのサプライヤーとして実績をさらに上げたい。その中で、『プロポリスエビデンス』を定義づける検討を始めている。消費者を含めプロポリスの利用者のニーズをどこまで把握できるかがこれから重要になる。これが原材料提供の日本一を目指す当社の使命であり、役割だと思う」と角田社長は話す。
プロポリスミュージアムを本社敷地内に設置
富士見養蜂園はオリジナル商品にも力を入れている。数多くの商品を製造販売しているが、25年前から発売しているロングセラー商品の一つ「超臨界抽出プロポリス」(60包、スティック状)は3万2000円(税別、以下同)の高額商品である。
「黄金蜂球」は60粒(24g、400mg、8000円)。原料にはブラジル産のエクストラ・グリーンプロポリスを使用。熱による酸化がしにくい超臨界抽出法でプロポリスエキスを国内製造。超臨界抽出プロポリス食用油脂とゼラチンを使って、プロポリス特有の臭いを抑え、摂取しやすい楕円形のカプセルに仕上げている。
今一押しの商品が「超臨界プロポリス蜜」(120g、2本入り5800円)。丹念に採集した国産の百花蜜に超臨界抽出乳化液を1%配合したプロポリス風味を持つハチミツである。
2025年度は「プロポリスミュージアム」を本社敷地内に設置する。「歴史と科学」をテーマに、国内外におけるプロポリスの歴史や科学的なエビデンス、養蜂技術などを展示する。近隣の小学・中学の子供たちにも見てもらいたいという。