ライフにヤオコーはすでに強化!スーパーの「非食品」強化がドラッグストア対策になる理由

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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非食品の強化が食品売上を拡大する!?

 コロナ禍によって、本当に消費者はワンストップショッピングを志向するようになったのか。SMの来店客は日用雑貨を購入するようになったのだろうか。

 その答えはどうやら否であるようだ。本特集ではソフトブレーン・フィールドが保有するレシートデータをもとに主要SM・総合スーパー(GMS)チェーンにおける非食品の購入実態を調査している。同調査では、「食品以外の生活必需品も買い揃えることができる」という動機で来店しているお客は少数派であり、そのチェーンをメーンで利用するお客の8割以上がドラッグストア(DgS)やホームセンター(HC)といった他業態で非食品を購入していることが判明している。

 一方で、SM各社は自社の非食品部門をどうとらえているのだろうか。本特集では主要SM企業を対象にアンケート調査を実施し、非食品部門の方針について聞いているが、「強化している」と答えた企業は全体の約4割にとどまった。「現状維持」「縮小傾向にある」と答えた約6割の企業に対し「今後、同部門を強化する考えはあるか」と聞いた別の質問では、8割以上が「ない」と回答。非食品を強化している企業とそうでない企業のあいだに“温度差”が見られた。

 これら調査結果からは、SM企業の多くは非食品強化に積極的に取り組んでいるとはいえず、消費者側も「日用品はDgSやHCで買うもの」と思っているのが多数派であるということがわかる。ではSMは今後も食品に特化した業態として、食品だけを強化していけばいいのだろうか。

 SMとDgSの経営コンサルティングを手掛ける有田英明氏は、「ハウスキーピングニーズ(日々の生活を豊かなかたちで維持するという需要概念)こそ、SMが次に獲得すべきターゲットマーケットである」とし、これを早急に強化すべきだと指摘する。人口減少時代、消費者の胃袋は小さくなる一方であり、食品中心の商品構成では需要の先細りに対応できず、赤字に転落するリスクがあるというのだ。

 また、DgSへの対抗策という意味でも、非食品強化の意義は大きい。近年は食品を強化するDgSが増えているが、DgSの来店客は主に日用品を求めて来店し、食品を「ついで買い」しているとされる。したがって、SMは非食品の利便性や安さによってお客を呼び込み、商圏内にあるDgSに行く機会を少しでも奪うことができれば、自店の食品シェアと客単価を高めることができる。つまり、非食品の強化は、食品の売上拡大にもつながるのである。

 当然、スペースが限られるため、SMの日用雑貨売場にすべてのカテゴリーの日用雑貨を総花的に品揃えするのは不可能である。SMが強みとする「食」に関連したカテゴリー、あるいはあまりかさばらない商品群などを戦略的に強化することで、効率的にマーケットシェアを高められるというわけだ。

SMの非食品売場のイメージ
人口減少時代の利益確保そしてDgSへの対抗策という観点からも非食品強化の意義は大きい(写真はイメージで本文とは関係ありません)

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記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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