ウイスキー市場はハイボール缶からボトルへの移行加速、同時陳列など売り場づくりが今後のカギに

石山 真紀
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ハイボール人気を受け近年好調に推移してきたウイスキーだが、新型コロナウイルスの影響により外飲みから家飲みへの移行が加速。手軽なハイボール缶をフックにウイスキーのボトルを手に取るユーザーが増えたことから、さらに需要が拡大している。

間口拡大に貢献するRTDのハイボール缶

 KSP-POSデータによると、2020年7月から21年6月のウイスキーカテゴリーの期間通算金額PIは、対前年同期比9.3%増の5735.03円、数量PIは同6.0%増の4.04となった【図表】。

 月別の動向をみると、前年の消費税増税前の駆け込みの反動が大きかった20年9月を除き、7月から21年2月までは前年に対し2ケタ増と好調に推移。3月も前年を上回ったが、4~6月は昨年が緊急事態宣言中であり、まとめ買いを含め、需要が急拡大した反動減で前年を下回っている。

ウイスキーのイメージ
ウイスキーは外飲みでのハイボール体験により、家でもおいしいハイボールをつくって楽しみたい、という流れで成長してきた i-stock/OlegEvseev

 コロナ禍に入り、生活者のライフスタイルが大きく変化するなか、外飲みユーザーが家飲みへと移行する動きはさらに加速。外出自粛やリモートワークの推進等により、家で過ごす時間が増えたことで「家でもいろいろなお酒を楽しみたい」というニーズが生まれている。

 ウイスキーは外飲みでのハイボール体験により、家でもおいしいハイボールをつくって楽しみたい、という流れで成長してきたカテゴリーだ。間口拡大についてはRTDのハイボール缶が大きく貢献しており、成長の速度は加速している。ハイボール缶は外飲みからの流入に加えて、ビール類やサワー系など他のRTDからの流入者も取り込み、6缶パックや特発品などの動きもよくなっている。

 とくにサントリー「ジムビーム」は、輸入品らしいおしゃれな世界観や気分を盛り上げるブランドイメージ戦略も奏功し、幅広い年代の支持を集める。RTDカテゴリーの「ジムビームハイボール缶」も好調に推移し、「アップルハイボール」や「レモネードハイボール」などの期間限定フレーバーもハイボール非ユーザーに受け入れられいずれもヒット。期間限定品の購入をきっかけに定番のハイボール缶を手に取る動きも見られている。

ウイスキーカテゴリーの金額PI月別推移

割り材とボトルハイボール缶の関連陳列

 ハイボールは食事との合わせやすさが魅力のひとつだ。とくに20年春以降は外出自粛に伴い家飲みの機会が増えたことで、中・大容量品や定番以外の輸入ウイスキーの需要も拡大。また「角ハイボール缶」「ジムビームハイボール缶」など、RTDのハイボール缶がエントリーの取り込みに貢献しており、ハイボール缶をきっかけにおいしさを知り、ボトルを購入して自宅でもハイボールをつくるユーザーが増えている。

 さらにボトル購入者の中には炭酸水だけでなくウーロン茶やコーラなどさまざまな割り材でハイボールを楽しむ動きも見られており、飲み方提案次第で今後も新たなチャンスが生まれるだろう。

 重要なのは飲食店のハイボールの飲用経験やハイボール缶をきっかけにウイスキーに興味を持ったユーザーが、ボトルに移行しやすい売場をつくることだろう。

 定番である炭酸水のクロスMDに加えて、ハイボール缶とその元となるウイスキーを同棚でエンド展開を仕掛けることで気付きを与え、ウイスキー売場全体を盛り上げていきたいところだ。

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